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***

常々思うことは、私は保護者として不適格だと思う。
天涯孤独な甥っ子に手を出しているし、いさかか他と違う好みを持っている。
何事も無頓着で心が広いと言われているが、裏を返せば来るもの拒まず受け入れてしまう性格ということだ。
たとえば屋敷で働かせている使用人。
始めに可愛い青年を雇っていると書いたが、中には当然同じ趣味を持つ人間もいる。
類は友を呼ぶとはこのことかもしれない。

「あの……旦那様、今日もお願いします……」

強要はしてはいなかった。
あくまで雇い主であり、彼らは働きに来ているだけである。
しかし誘われれば拒むこともなかった。
柳小路は独身で現在恋人もいない。
フリーの人間が誰と何をしようと責められる所以はないのだ。
相手も分かっていてのことで、いうなれば大人のお付き合いだった。
肉体だけの関係など、ゲイに限らず男女でもあることで悪い関係ではない。
両者それで納得していたから、淫奔な日常が当たり前だったのだ。

「いい子だね」
「ん、旦那様……っ……」

使用人のひとりに求められて可愛がろうとしていた矢先のことである。
麗らかな休日の午後、てっきり馨は遊びに行ったと思っていた。
前日まで彼とホテルでまったり過ごしていたせいでボケていたのかもしれない。
ベッドに腰掛けた柳小路の上に半裸の使用人がまたがった時、前触れもなくドアが開いた。

「あの、おじさま――っ……」
「ん?」

現れたのは馨だった。
彼は柳小路が使用人とこんな関係であることを知らず、状況に対して見事に固まる。
しかしそれでも柳小路は落ち着いていた。

「馨、何度も言っているだろう。部屋に入る時はまずノックをしなさい」
「え……あ……」
「何か用かい?」

知られてしまったのは仕方がないと、早々に開き直り、半裸の男を膝に乗せたまま顔だけ馨の方を向く。
紳士たるもの、いつどんな時も冷静で余裕がなくてはならない。
本来なら気まずい雰囲気に呑まれるはずが、室内は静かなだけで何ら変わりなかった。
馨とは恋人同士ではなく、一方的に好意を抱いていたが、彼の心が柳小路に向いてないことは分かっていたからだ。
肉体関係だけで満足していたのである。

「……んだよっ、それ……」

だから彼がこんな風に声を荒げるとは思わなかった。
ギリギリと唇を噛み締めると、乱暴にドアを開けて中まで入ってくる。
手にはお菓子の箱を持っていた。
柳小路が好きな駅前のドーナッツ屋の物だった。

「今まで、他の男ともこういうことをしていたんですか!」
「そうだが、問題でも?」
「……っぅ、さ、さっ最低だっ!」
「最低? なぜだね。君は私の恋人ではないだろう。無理やりしているわけではないなら誰にも責められる理由はない」

その言葉に馨の眉間の皺が深くなった。
同時に泣きそうにも見えて少しだけ心が揺れる。
彼は柳小路に向かってドーナッツの箱を投げつけた。
当たった拍子に中に入っていたドーナッツが飛び出して転がる。
そのひとつは足元で止まった。

「気持ち悪いっ、僕はあなたの考えが理解出来ない! 周りにそんな男がいるなら、なぜ僕にもあんなことをしたんですか! 無理やり…っ…あんなっ」
「無理やり? 私は強制した覚えはない」
「拒絶出来るわけがないでしょう! 僕はお世話になっているんです! あなたがいなければ施設に送られるところだった。捨てられるわけにはいかなかった!」
「いつ私が立場を使って強要した?」
「でもっ、でもっ! ……ひどいっ……」

涙声になったが馨は泣かなかった。
彼は両親の通夜でも涙を流さなかった男だ。
握り締めた拳が震えて、憤りを表している。
これ以上ないほど歪んだ顔に、柳小路の胸が痛くなった。
だからといって今さらかけてやる言葉は見つからない。

「……っぅ……信じて……いたのにっ……」

馨は吐き捨てるように呟くと部屋を出て行った。
(私を信じていた?)
今までの生活を鑑みた時、到底信頼されていたようには思えなかった。
信頼や尊敬なんて無に等しく、尖った物言いばかりされていた。
そうさせたのは自分だと分かっていたから、特に何も思わず好きにさせていた。
(弱みを握っているつもりではなかったのだが)
由緒正しい柳小路家では、身分や金を使って人を強請ることは恥だと教えられてきた。
そんなものは三流の金持ちか成り金のやることだと、常々言われていたのだ。
いつでも寛大に大らかに。
それはポリシーでもあった。
だから最初の夜、馨に「君を抱きたい」と言った時も、真っ向勝負だった。
彼は口では文句を言いながら明確な拒絶を表したことはない。

「あ、あの旦那様……」

しかし考えが浅かったのかもしれない。
彼が文句を言うことに安堵し、遠慮はしていないと思い込んでいた。
その奥底で何を思っていたのか察することもせず表面だけを見ていた。
彼の境涯を考えれば分かりそうなものを見落としていたとするならば、明らかに柳小路の失態だ。
(それほど浮かれていた? まさか?)

「申し訳ありません。その……」
「いや、君は悪くない」

乗っかっていた使用人は、馨の態度に狼狽して退いた。
再び静まり返る室内には、時折鳥の鳴き声が響く程度である。
構わず行為を続ければいいものの、気分は優れず足元に落ちたドーナッツを拾った。
馨が好物と分かっていて買ってきた物。
もしかしたら一緒に食べようと誘おうとしていたのかもしれない。
しばらく考え込んだ柳小路は深く息を吐いた。

「……すまない。君にとって申し訳ない話だが――」

彼の人生が静かに動き出す。
生まれてから死ぬまで飄然とした暮らしをしてくのだろうと予見していた未来が僅かに揺らいだ。
心で感じたままに進む時、必ず世界は矛盾を孕む。
それを蹴散らすものを人は直感と呼んだ。
弟が家を出たように、柳小路がその息子に手を差し伸べたように。
損や得、頭で考えた正しい道は霧のように消えて、己しか見えない道が書き足されようとする。
他人には馬鹿馬鹿しいと失笑を買うが関係ない。
なにせ道は自分にしか見えていないのだから。

***

一方、家を飛び出した馨は行くあてもなく、家の前の坂を下った先にある河原にいた。
向こう岸にはたくさんのバーベキュー客で賑わい、楽しそうな笑い声が対岸にまで聞こえてくる。
芝生の上に寝転ぶと、遮るもののない空が見えた。
一片の雲が連なりゆっくりと形を変えながら流れていく。
こうして何も考えずぼうっとしていると全てが夢のように思えた。
目を閉じれば人々の声と水の音しか聞こえない。
過ごしやすい陽気のためか、いつしかうとうとし始めると意識は薄らいだ。
独りぼっちの少年を気に留める者はいない。
それに対して寂しさが貫いた。
感じたことのない痛みが襲う。
思えば両親が亡くなってから慌ただしい毎日だったし、変な伯父の相手もせねばならない。
生まれてこのかた、ずっと小さなアパートで暮らしていたのに、いきなり高級住宅街の大屋敷に住むことになったのだ。
突然の環境の変化についていけるわけもなく、寂しさを感じる間すらなかった。
それは今になってみれば良かったことで、しかし、伯父のお蔭だと思うのは悔しいから複雑な話である。
(まさか分かっていて、それを?)
柳小路はいつも馨を一人前のように扱った。
両親を亡くした可哀想な子というフィルターを通すことはなかった。
いつも自由でやりたい放題な彼に、いつの間にか気を遣うことも忘れて悪態をついた。
全てが自分を思ってのことだとしたら、先ほどは言い過ぎてしまった気がする。
しかし胸のモヤモヤは消えてなくならなかった。
自分を抱いた手が、他の誰かに触れていると考えた時、頭が真っ白になる。
なぜか淀んだどす黒い気持ちを抑えられなくなる。
ワケが分からなかった。
柳小路相手だといつもそうだった。

「どうして……僕なんか……」

一緒に暮らしていても彼の考えていることが分からない。
この世で最も理解不能なのが彼だった。
だからといって正面きって問いつめる勇気は持てず、逃げてしまう。
繰り返される悪循環はタチが悪くて困った。
(家を飛び出したって帰る場所なんてないのに)
両親のことを思う時、いつも差し出された柳小路の手を思い出す。
途方に暮れて悲しみより先に戸惑いしかなかったあの夜、渡されたハンカチは馨の人生を大きく変えてくれた。
あの時笑いかけられて胸の奥がすぅっと救われた気がした。
哀れみの声の中で、彼の声だけが深く心に残った。
瞳に嘘はなかった。
だからどんなことをしてもあの手を失いたくないと思った。
(割り切った関係なのに割り切れない)
考え出すと必ず行き詰まって煩悶とさせた。
どうしていいか分からず懊悩とすれば目蓋の奥が一段と重くなる。
それ以上思考は働かなくなった。
柔らかな日差しのもと、戻れないまで意識は遠き、ついに落ちる。
寂しさを埋めるように丸めた体は、誰にも気付かれず喧騒の中に消えた。

次に目が覚めたとき、目蓋の奥に太陽の光はなくなっていた。

「ん、んぅ……」

うっすら眼を開けると、人工的な明かりが入ってくる。
混濁したままの意識で左右を見ると、見慣れない部屋にいた。
狭く古い匂いの染み付いた和室だった。
何事かと慌てて起き上がれば、ふかふかの布団に寝かされている。
柳小路の家ではベッドなせいか、懐かしい感触だ。
両親とは二枚の敷き布団の上に、三人川の字で寝ていたのである。
枕元にはお盆と水の入ったグラスが置かれていた。
眠っている間に知らない家に連れて行かれたと狼狽する。
その時ふいに襖が開いた。
現れたのは最も部屋に似つかわしくない男である。

「起きたか。大丈夫か」
「お、おじさまっ!」

意外な人物の登場に素っ頓狂な声をあげた。
彼は手に駅前のドーナッツの箱を持っている。
入ってくると馨の布団の傍に座って優しく微笑んだ。

「帰ってこないから心配したぞ」
「え、あ……っ」

その様子に探し回ってくれたことを悟る。
とはいえ言い合ったことや、現在の不可解な状況に困惑して謝ることが出来ず、そっぽを向いた。
可愛くない態度を取るのはいつものことだった。

「それで、ここはどこなんですか」

頬を膨らませ、口を尖らせると不機嫌さを表す。

「家だ」
「は?」
「私たちの家だ」
「な、何言って……」

彼はとんでもないことを言い出した。
さすがの馨もたまげて視線を戻すと睨みつける。

「どういうことですか?」

寝ている間に何があったのか分からず戸惑う。

「雇っていた使用人は全員解雇した。運転手も庭師も多めに給料をやって辞めてもらった」
「は……っ……」
「あの屋敷は二人っきりでは広すぎるだろう」
「まさか」
「そのまさかだ。家も手放したよ。すぐに入れるところを探したらここを見つけた。安心しなさい。荷物はレンタルスペースに預けてある。ついでに学校も前より近いぞ」
「どうしてっ……いきなり!」

(僕があんなことを言ったからみんなを解雇した?)
だが急すぎる上に、やりすぎである。
不安げに見上げると、柳小路の手のひらが頬を包み込んだ。
こんな時でもこの男は落ち着いていて悔しい。

「君の信頼を裏切りたくなかった」
「あ……」
「誘いに乗っていたのは事実だ。そうすることが悪いと思っていなかったから平気だった。……でも君に嫌われるくらいなら必要ない」
「そんな…っ、僕は……! っ…あなたの言ったとおり恋人ではなんです。あの時は感情的になってしまったけど、よくよく考えたら口出しするべきではないと――」

そこまで言ったところで急に腰を抱き寄せられた。
相変わらず上品な香りを漂わせる胸元は居心地悪い。
いや、悪いはずだった。

「そんな寂しいことを言わないでくれ」
「おっ、おじさま」
「誤解しないで欲しい。確かに君以外にもセックスをしたが、自ら欲しいと思ったのは君だけだ。私は聖人ではなくただの男だ。紳士でありたいと思いながら卑しい夢は見るし、人肌が恋しくなる時もある」
「……っ……」
「嫌われているのは分かっているが、失望だけはされたくない」
「……それで全部捨てたんですか」
「そうだ。馨にあんな顔をされるなら、もう他の誰もいらない」

柳小路の声は毅然としていて大きな決意を窺わせた。
急遽借りた家は和室と洋室が一部屋ずつあり、おまけのように小さなキッチンダイニングが付いている。
昔住んでいたアパートによく似ていた。
洋室には柳小路と馨が使う必要最低限の荷物が山のように置かれていて、物置と化している。
トイレと風呂は別だが、狭くカビだらけな上に、お湯の温度が安定せず使いづらかった。
柳小路家の人間が住むような家ではないことは確かである。

「少しだけ大切なものが見えた気がする」

でも呟くように囁いた柳小路の言葉がいつまでも耳に響いた。
古く狭いアパートなんて入ったことすらないだろうに彼は気にしなかった。
ただ戸惑いの連続だったことは否めない。
こうしていきなり新たな生活が始まったが、お互いに手探り状態だった。

「おじさまっ、魚が焦げてます」
「うむむ。ちょっと待て」
「あっ、味噌汁が吹きこぼれてます!」

柳小路は料理がてんで駄目だった。
今まで使用人がいたから、自らキッチンに立ったことはないらしい。

「貸してください。僕が作ります」
「何を言っているんだ。君にガスを使わせたら危ないだろう。第一に料理なんて――」
「うちはずっと共働きでしたから、簡単なものであれば作れます。おじさまは座って待っていて下さい」
「そ、そうか……」

明らかに足手まといの柳小路はしょんぼり肩を落とし、大人しく座って待っている。
何でもそつなくこなす男の弱点を見た気がした。
炊飯器さえまともに使うことが出来なくて思わず笑ってしまう。
今まで教えられることばかりだったのに、この生活で主導権を握っているのは馨だった。
家事は慣れた仕事だ。
料理だけではない、掃除、洗濯――何も出来ない柳小路に代わって馨が全てをこなした。
眠るのは和室で、洋室が使えないから同じ部屋に布団を敷いて寝る。
硬い畳に布団を敷いて眠るのは心地悪いだろうに、文句のひとつも出なかった。

「おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」

当初は一週間で音をあげると思っていたのに、慣れたころには一ヶ月経っていた。
屋敷暮らしの時は広すぎて気付かなかった柳小路の人となりが見える。
今はどんな時も存在を感じる距離にいるのだ。
一緒にご飯を食べて、テレビを見て、本を読んで、寝る。
今まで生活感のない男としか見ていなかったのに、初めて人間味のある彼を知った。
その彼は非常に優しくて紳士だった。
本人は紳士でありたいと言っていたが、本当に紳士だ。
どんな場所にいようが、何をしてようが品の良さだけは失わない。
不思議な男だ。
知り合ってから結構経つのに、底知れぬ魅力と謎を秘めている。
掴みどころがないくせに峻別されていて、自らの哲学を持っている。
これだけ物腰が柔らかくて頭の回転が速いならモテるだろうに。
自分を選んだ彼の真意が分からずにいた。

「うーん、五十点」
「相変わらず厳しいな」
「舌はごまかせません」

ある日、いつものように夕飯を作っていると、柳小路から味見を頼まれた。
馨は小皿を受け取り味噌汁を飲むと険しい顔をする。

「だが昨日より五点上がった。まずまずの進歩だ」
「ここに来て熱心に料理を始めたみたいですけど、面白いですか?」
「ああ面白い。美味しい物を作るというのは中々創作心を擽る」
「なるほど」
「何より君に食べてもらいたい。美味しいと言ってもらいたい」
「……っ……」

柳小路は時折ドキッとするようなことを言った。
本人にその自覚があるのか危うく、いつも馨ばかりドギマギさせられている。
今までだってクサイ台詞は言われてきたが、近い距離で居続けるのは初めてで、慣れなかった。
少し前なら「惑わされませんから!」と、あっかんべーをしていたが、今はそんな気にならない。
彼を知ることによって、その言葉が表面的な飾りではないと分かったからだ。
柳小路は本当のことしか言わない。
本当に思っていることしか口にしない。

「そ……そういえば、今日は銭湯に行きませんか?」
「銭湯?」

馨は恥ずかしさを隠すように話題を変えた。

「久しぶりに広いお風呂に入りたいでしょう。それにおじさまのことだから銭湯に行ったこともないんじゃないですか」
「おお、いいな」

公衆浴場なんて――と言わず、むしろ面白そうだと乗っかってきた。
早々に夕飯を済ませると、一式持って家をあとにする。
以前の屋敷周辺と違い、普通の住宅街で近所にスーパーや駄菓子屋があった。
狭い道を少し歩くと昔ながらの銭湯に辿り着く。
初めての銭湯は新鮮だったのか、柳小路はたっぷり満喫していた。

「ほほう。これが噂の銭湯に描かれた富士だな」

浴室に入ると、裸のまま仁王立ちをして絵に見入る。
他の客は変なやつが入ってきたと怪訝そうに顔をしかめた。
馨は恥ずかしさに勘弁してくれと顔を赤くする。

「見ない顔だが面白いやつだな」

すると近所の親父が声をかけてきた。
キラリと光る頭にたるんだ腹を揺すり哄笑する。
なぜか洗い場で立ち尽くしたまま銭湯の絵談議となった。
馨はあくまで他人のフリをしながら体を洗う。
全て洗い終わって湯船に浸かるころには、二人は仲良くなって背中を洗い合っていた。

「馨、物知りなご老人と仲良くなったぞ」

ようやく柳小路も湯船へとやってきた。
彼の全裸をこうして明るいところで見るのは初めてで、無性に照れくさい。
(男同士なんだぞ)
そう言い聞かせるのに、自然と視線は逸れて「早く入ってください」と口を尖らせた。
年齢のわりに体つきが良くて内心驚きを隠せない。
スポーツの趣味なんてなかったはずだ。

「ふぅ……良い湯だ」

浴槽に入ってくると深く息を吐きながらゆっくり腰を沈める。
比例するように湯は溢れて流れ落ちた。
僅かに赤く染まった頬はいつもより艶やかに見せ、大人の男性独特の色気と相まって見惚れてしまいそうになる。
それに気付くとまともに目を合わせるのも恥ずかしくて隅に寄った。
頭がクラクラするのは、久しぶりの広い風呂でのぼせてしまったのか、それとも――。
背を向け身を沈めると呼吸を整えようとした。
バシャバシャバシャ――。
すると途端に激しい水音が聞こえてくる。
なんだ――と思って、振り返ると柳小路の姿がなかった。
が、湯の中にそれらしき影を見つける。
「あっ」と思った時には遅く、湯の中から彼が現れた。
いきなりのことに驚きすぎてうまく反応できない。
銭湯で泳ぐなんて今どき子供でもやらない遊びだ。
しかし顔を出した柳小路は満足げで楽しそうである。

「にいちゃん、銭湯で泳ぐのはマナー違反なんだぜ?」

すると洗い場から先ほどの親父がゲラゲラ笑って近寄って来た。

 

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