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「ばかだな。俺はお前を守るって言ったんだ。だったら地の果てだろうと追いかけるに決まってる。どんなところにいようとも見つけるに決まってる」
「先生」
「……でも、すごいな」
「え?」
「俺が加持の年の時は、そんな深く考えてなかった」

いつの時代も「最近の若者は~」と大人は吹き散らすが、それぞれの時代、それぞれの子供は様々なことを考えている。
むしろ物が溢れ、コミュニケーションの仕方も様変わりした今、順応するのは大変なのかもしれない。
表面だけを見てそう判断する大人は、住田を含めて多い。
そんな自分の臆断に恥じらいと反省をした。

「はぁ、先生と話していると緊張感が失せます」
「わ、悪い。茶化したつもりじゃないんだ」
「分かっています」

呆れた顔で見られて狼狽するが、加持はくしゃっと笑った。
首に手を回して引き寄せると唇を重ねる。

「先生のそういうところも好きです」
「か、か、加持っ」
「へへっ。今度こそ本当に先生の恋人になりたいな。ゆくゆくはお嫁さんなんてのもいいかもしれない。だって先生甲斐性なさそうだし、ちゃんとした奥さんがいないと、悪い人に騙されちゃいそう」

加持は住田を押し倒すと上に乗っかった。
悪戯っ子のように楽しげに、彼のネクタイを外すとワイシャツのボタンに手をかける。

「暑くなってから久しぶりのスーツですね」
「ああ、今日はちょっと」
「朝見た時からきゅんきゅんしていたんです。スーツの先生は色っぽくて素敵です。ふふ、ジャージ姿も可愛いんですけど、やっぱりスーツ萌えですよね。ほら僕のも、もう……」

手を握られて誘導されると、加持の勃起した性器に触れた。
さわり心地の良いパジャマの上から扱いてやれば、すぐに甘い声が漏れる。

「加持、俺もう我慢できない」
「してください。僕もずっとお尻が疼いてどうにかなっちゃいそうだったんです」

互いに求め合うまま服を脱がすと、ベッドは軋んだ。
散乱した服を辿れば裸になった二人が交わろうとしている。
普段のしつこいくらいの前戯を吹っ飛ばして、尻の穴を弄くった。
加持の反応を楽しむためじゃなく、自らが犯すためだけに穴を広げる。
その性急さに彼も気付き、興奮して、ねだると喜んで股を開いた。

「ひぁ、あぁっ…あぁっん、んぅふ…はぁっ…」

焦燥感に熟れた内壁が、住田の性器を受け入れるときつく締まる。

「イっ、イくっ……んぅっ、ふぁ…っ…!」

根元まで挿入すると加持の性器は勢い良く射精した。
連動するようにアヌスは収縮を繰り返し、住田の精液を搾ろうとする。
それに奥歯を噛み締め耐えると、出したばかりで朦朧とする加持を見ながら突き上げた。

「あぁっ、うぅっ…やらっ、イって、敏感っ…なんで、すっ…そなっ、あぁっ…あっ…!」

抗う力さえなく、いいように犯されて喘ぎ続ける。
口許を垂れた涎は細い首を辿り、鎖骨へ、平坦な胸へと流れた。
妄りがましい姿態に、たまらず首筋に顔を埋める。

「ひぁ、あっんぅ、せんせっ…すごっ…んぅ」

吸い付いて痕を残すと柔らかな肌をなぞり、いかがわしさすら感じる乳首をつねった。
加持の腰は上下に揺れて誘っている。
淫奔な姿は煽るだけなのに、快楽に魘されて気付けないまま拙い声を放っている。
その声を訊くと背中がゾクゾクして、射精してしまいそうだ。
生徒を送り届けただけなのに、荒淫に耽り、夢中になっている。

「はぁっく、奥ばっか…っ突かないでっ、あぁっ、ずんずんしないでっ、ひぁっ…ちんこのことしかっ…考えられなく、なるぅっ…はぁっあぁっ…んっ」

足を開かせると執拗なまでに奥を突きあげた。
亀頭が見えるくらいギリギリまで引き抜くと、一気に根元まで押し付ける。
閉じていた内壁は住田の性器に無理やり広げられて敏感な腸管を晒した。
カリで擦ると蕩けて熱くなり、ほぐれたまま奥までいざなう。
奥をツンツンすると合わせて彼の性器から精液が漏れた。
尻だけで感じ、早くもトコロテンになっているのだ。
泡だった白濁液がポンプのように溢れ、住田の腹にあたる。
まだ未熟なのに、とっくに皮は剥けて卑猥なちんこだった。
今まで何人の男にしゃぶられたのか、考えただけで気が狂いそうになる。
腰を動かすたびにプルンプルンと揺れて住田の視線を独り占めした。
ついこの間までノーマルだった男とは思えないほどの変わりようである。

「くぅ、っんぅ、またイっちゃぁ…ぁあっ、あぁっ」
「あぁっ、うっ俺も出るっ。加持の奥で射精するぞ」
「んふ、ぅっひ…はぁっあっ…おくにぶっかけて…っ、ぼくのおしりっ…せんせの、せいえきまみれにっ…してっ…ぇっ……!」

これ以上ないほどきつく抱き締めあって果てた。
望みどおり奥の奥で射精すると、感じ取って加持の体が身悶える。
住田の下で快楽に踊らされる彼は淫靡で美しかった。
それぞれ汗の匂いを感じ、湿った肌を重ね合わせる。

「ひぅ……」

出し切って抜くと、加持は四つんばいになって尻を晒した。
部屋の電気に照らされて白いお尻が揺れている。

「ん、んぅ…んぅっふ……」

しばらくすると住田の精液が逆流して溢れてきた。
粘っこい汁が尻の穴から垂れて布団の上に落ちる。

「ひ…はぁぁ…ぁっ……」

悩ましげな吐息で震える彼は、快楽が引かないのか潤んだ瞳で住田を見つめた。
その眼差しに息を呑むと、尻にキスをする。

「あぁっんっ」
「すご……前々から思っていたけど、加持って感度いいよな」
「わかんなっ…んっ…んぅ…」

キスをするたびに加持の尻から精液が垂れた。
彼は自ら手で尻を広げ、緩んだ穴を見せつける。

「こ…んなっ、きもちいの…せんせが…はじめてなんですっ…」
「そんな、俺、童貞だったし」
「ほんとっです…せんせ、いっぱい僕のこと、…っんぅ、いじめて…っくれるし、ふぁ、あっ…好きな人とえっちするのっ、はじめてだから…っ」
「加持」
「好きな人に抱かれるのって…んっ、はぁっ…こんな、きもちい、んですねっ。きもちよすぎて……はぁっ、ん…ぼくっ、も、せんせからっ…はなれられない…っ」
「か、加持っ――!!」

彼の言葉に我慢できず襲い掛かると、出したばかりだというのに痛いくらい勃起した性器を挿入した。
勢い任せに奥まで犯すと、加持の性器は潮を噴いた。
自ら放った精液でドロドロにぬめり、ほぐれた穴はこれ以上にない気持ち良さで快感が迸る。

「ひぁあ、ああぁっ…またっ、おくっ…んっんぅ、あばいちゃ、ダメ…ぇっ…あぁっ」
「はぁっく、そんなの知るかっ!加持が可愛いことばっかり言うからいけないんだっ」
「だってっだって…ほんとうなんですっ、先生に、触られるだけでっ…ぼくのちんこっ…あつくなっちゃぁぁっ…ぁっ」

興奮で我を忘れ、二人は獣じみたセックスをした。
あまりの激しさにベッドは軋み、床が抜けそうなくらい揺れる。
そのうち何も分からなくなって、気がついたら二人ともベッドの上から落ちていた。
それでも加持のアヌスには住田の性器で蓋をされて、何をするのにも繋がっていた。

「おぼれ…ちゃいますっ、ぼくっ…うぅんっ、せんせの、せいえきでっ…どろどろにっ…」
「体中、染込むまでっ……ずっと、ずっと…!」
「はぁんっ…せんせのえっち……」

淫欲が満たされた時には空が白みかかっていて、何も出なくなったころ寄り添いながら眠りについた。
布団はもちろん部屋中精液くさい。
いたるところにティッシュが落ちていて、せっかく脱いだ服も飛び散った精液で汚れてしまった。
なぜか本棚の本や机の上のファイルが散乱していて、行為の激しさを物語っている。
全身鏡の前でもセックスしたのか、半透明の薄い精液が垂れて線がついていた。
それでも温かな胸で眠る加持は幸せそうだったし、小さな体を抱き締める住田も満足げだった。

***

翌日、加持の家に泊まっただけでなく、服まで汚した住田は父親の服を借りて登校した。
周囲にバレないよう先に出る。
一緒に朝ごはんを食べたとか、いってらっしゃいのキスをしてくれたとか、思い出すだけで照れくさくて寝不足なのに表情が締まらなかった。
一日中、どのクラスの生徒からも「間抜け面」と笑われてしまったのは大問題である。
いかんいかんと頬を叩き、引き締めようとするが、五秒後には元の顔に戻っていた。
加持はそんな恋人を微笑ましそうに見守る。

「今日こそは付き合ってもらいますからね」

昨日大活躍した穂高は、昼休みに住田が戻ってくるのを職員室で待っていた。
加持を強姦しようとした生徒は、未遂に終わったこともあり厳重注意で済んだが、以後近付くことはなかった。
売りをしていた事実も露呈されることなく、無事に平穏な日常を取り戻す。

「あぁ、飲みですか。いいですね」

昨日と打って変わって、ヤケ酒ならぬ祝い酒である。
相変わらずお花の飛んだ彼は、書類をデスクに置くと腰掛けた。
すんなり了承を得た穂高はガッツポーズをする。

「絶対ですよ。今日こそは絶対に何があっても行きますからね」
「穂高先生どうしたんですか。ずいぶん怖い顔をしていますけど」
「当たり前です。住田先生には色々訊かなくてはならないことがありますからね」

迫力すら感じる笑みに、何かしたかと思ったが分からない。
(ま、今はなんでもいっか)
幸せ満載のオーラを放ちながら暢気に受け流すと、突如後ろから頭を叩かれた。
何事かと振り向けば加持が険悪な顔で二人を見ている。

「先生、ちょっときてください」

起伏のない声で呼ぶと、構わずに手を引っ張った。
が、その力は顔に似合わず強いもので、油断していた住田は体勢を崩す。

「おわっ――!」

あまりの勢いにイスから落ちた。

「おいおい加持。今、住田先生と話しているのは俺だぞ」
「飲みに行くなんてダメに決まっているじゃないですか」
「なんでだよ。俺たちは前々から約束をしてだな」
「嘘です。話は全部訊いていました」
「ど、どっちだっていいんだよ。今日こそは飲みに行くんだ!だいたい何で生徒のお前に止められなきゃならないんだ」

すると今度は逆側の手を穂高に掴まれた。
引っ張られて体勢が変わると、加持から遠のく。
それを見た彼は眉を顰めて再び引っ張りなおした。
昼休みの賑やかな職員室の隅で無意味な綱引きが始まる。
真ん中にいるのは住田だ。

「離してください。穂高先生!」
「加持が離したらな」
「な、なんて人だ!」

挑発的に穂高が笑うと、のせられて加持は怒りを露にした。
こんな状況なのに、素直に感情を表す姿が愛しくて顔がにやけてしまう。
ヤキモチを妬く加持は子供らしい子供で可愛かった。

「絶対に負けません」

両親から求められず、欲しいものを見つけられないまま放埓に生きてきた彼には目覚しい変化だった。
好きな人に懇望されるのは幸せである。
とはいえ現状の疎略な扱いは勘弁願いたい。

「と、とりあえず三人で仲良く話をしようか」

引っ張られながら顔色を窺い、恐る恐る提案するがあっさりと切り捨てられた。

「間抜け面は黙っていてください」
「そうだそうだ」
「僕は先生を魔の手から救うんです」
「なんだと!魔の手って俺のことか」
「穂高先生以外に誰がいるっていうんですか」

どうやら騒がしい日々はこれからも続きそうである。
しかし加持が笑っているならそれもいいと思える住田は、恋人に甘いダメ教師なのかもしれない。
(お金にうるさかった面影はもうないな)
綺麗事だけでは生きていけず、生活する上で金があるに越したことはない。
だがそれ以上の価値を見出せた今、加持の前には燦然とした輝かしい未来が広がっているのだった。

END