2

「馬鹿な犬め」

すると宗司は驚いたように瞬きをした。
そして口許が緩むと怜の体を引き寄せる。

「……だって愛しているから」

卑怯だと思った。
宗司は昔から簡単に愛を口にする。
彼の行動全ての源は愛によって為されるのだ。
愛しているから怜の傍にいる。
愛しているから怜の命令を訊く。
愛しているから怜の体に触れるし。
愛しているから怜に意地悪をする。
その素直さが憎らしかった。
どんな鎖でも繋ぎとめられないと知っていて、宗司は言葉にする。

「さあ、おねだりして下さい」

宗司は出したばかりなのに勃起していた。
それを見せ付けるように晒し、怜の綺麗な顔に擦り付ける。

「ん……」

その卑猥な行為に怜の体は熱くなった。
もう次の刺激を欲している。
本当にマーキングしているようだった。
自分のものだと誇示するように擦る。
そんなことをされてしまったら匂いが体に染み付いてしまいそうだ。
だけど怜は物欲しげに見つめ素直に頷く。

「……早く、しろ」

消えてしまいそうな声だった。
言うべきことは分かっていても言葉になんて出来ない。
今の怜には精一杯の台詞だった。
だけど宗司は納得するはずがない。

「そうじゃないでしょう?」
「……っぅ……」
「いつも教えているのだからちゃんと言いなさい」

宗司は目を細めた。
そして窘めるように怜を見下ろす。
これじゃどちらが主人か分からない。

「……わ、分かっている」

だが怜は従順だった。
そう言われて大人しく従う。
彼は学校だというのに大きく股を開いた。
中心には勃起した性器がピクピク震えている。
その後ろにある穴を両手で開いた。
普段は閉じられている禁忌の穴を晒し羞恥に顔を染める。

「私のアナルに宗司のを挿れてくれ」
「私の何を?」

それでも許されなかった。
宗司は怜の股間に顔を近づけるとアナルに触れる。
皺をなぞるように優しく触れるが挿入だけはしなかった。
それがじれったくて歯痒い。

「…だ、だからっ」
「…………」
「…っぅ…そ、宗司のちんちんを…わ、私の穴に挿れて欲しいのだっ…」

怜の顔は真っ赤だった。
ヤケクソに言い放つ。
だが宗司は満足したようだった。
ほそく笑むと返事をする前に自身の凶器を穴に宛がう。

「あ、っ……あっあぁ――っっ!」

怜の体は挿入と共に仰け反った。
背中から迸るような刺激が駆け上がり脳内が麻痺する。
熱い棒が自分の体に打ちつけられたのだ。
開いていた足が震えて力が入らない。
声を抑えようにも強張って動けなかった。

「は、いるっおしり、はいっちゃ、やぁぅっ…そ…なっ、一気に――っ…!」

宗司は一気に根元まで突き上げた。
乱暴な亀頭が秘部を押し広げて奥へと侵入する。
締め付けの強い肉壁が引き裂かれてねっとりと包み込んだ。
かえるが引っ繰り返ったような格好の怜を見つめ奥まで犯す。
怜の口許には飲み込めなかった涎が垂れていた。
腹の下がズクンと重くなり熱くなる。
腸壁はそそり立った肉棒を咥え込み引き攣った収縮を繰り返していた。

「ちんちん――なんて財閥の御曹司とは思えない下品な言葉ですね」
「ら…って…お、まえが……はぁっ、ぅん…」
「怜は人のせいにするんですか?」
「…ちがっ……」

勝手に零れ落ちる涙が床の上に垂れた。
怜の性器は挿入時に射精している。
下半身は自身が放った精液まみれになっていた。
今、怜は宗司に屈している。
(何が会長の犬だ)
人々の噂が皮肉に聞こえた。
それは宗司も同じことを考えている。
自分の腕の中には怜がいるのだ。
誰にも近づけない高貴な存在をこの手で制している。
どんなことも従い許してくれているのは信頼しているからだ。
今の彼は全て思うがままである。
それに無性の喜びを感じていた。

「お、お前が私に教えてくれたのだろう?」

怜は息も絶え絶えに呟く。
少し不貞腐れたような口調だった。
それが可愛くて宗司は体を倒す。
そして口付けを交わした。

「お前のせいで、私の体は変になってしまった」
「ん、どんな風に?」
「こんな汚らしい行為を気持ちいいと感じてしまうようになってしまった」

怜のアヌスは拡がり宗司の性器を咥え込んでいる。
どこを触られても気持ちよくて戸惑った。
体の奥から沸き起こる快楽には勝てない。

「恥ずかしい。人に屈するなど許されるはずがないのに」

彼は手で顔を隠し唇を噛み締めた。
貫かれた部分から熱が広がり耐えられそうにない。
こうして体を繋げることが心地良いなど信じられないことだった。
甘く蕩けるような幸せが彼の胸元を蝕む。
どう表現していいのか分からない感情の波は自分でも制御できなかった。
放課後の生徒会室はただ静かなだけである。
カーテンの隙間から零れた西日が線を作り揺れている。
外は相変わらず風が強いのか時折ガラスが音を立てていた。

「怜は人に屈しなくて良いのです」

すると宗司が覆っていた手を掴んだ。
そしてゆっくり怜の顔から離していく。
その先に見えた顔は戸惑いと羞恥に泣きそうな表情をしていた。
不安定な心のざわめきが彼の眉間に皺を作っている。
それが無性に愛しかった。
だから宗司は怜の額にキスを落とす。

「私が抗う者達を捌きましょう。怜の邪魔は誰にもさせません」
「宗司……でも私はお前に――」
「私はあなたの犬。だからこうして見下ろしても許される」
「馬鹿な」
「いいえ。人ではない時点で無効ですから」
「またお前の屁理屈か」

それは矛盾した台詞だった。
(なんだよ。都合のいい時ばかり犬なんて)
つい先程犬ではないと否定をしていながらこの調子である。
宗司は従順を誓いながら操るのが上手かった。
主人の機嫌を良くする方法をちゃんと知っている。
犬だって馬鹿ではないのだ。

「ただ尻尾を振る犬なんて要らない」

怜は宗司の首に手を回して起き上がった。
のしかかる体に性器が奥へと入り込む。

「んぅ、ふぁ……あぁっ……」

イイところに擦りついて怜は甘く鳴いた。
それでもしがみ付き離れない。
だから宗司は背中に手を回すと彼を支えた。

「承知」

耳元で囁くと怜の体が身震いする。
低く通った声が脳に響き渡った。
まるで熱病に侵されたみたいに言葉が沁みこむ。
そのまま彼は宗司の腰に足を絡みつけた。
密着して離れないように抱き合う。
素肌の感触が気持ちよかった。
吐息に濡れる二人の顔は熱っぽく潤んでいる。
漂う色気に腹の奥が疼いた。
ズクンと重石を乗せられたみたいに重くなる。

「あ、ぁぁあっ…ん、んんっ…」

それと同時に宗司は怜の体を貪り始めた。
結合部分を擦り合わせるように突き出して抉る。
いきなりの衝撃に怜は喉を鳴らした。
だがその声のいやらしさに気付いて唇を噛み締める。
開いたドアがもどかしい。
これが家なら思う存分喘げるのに。

「ん、んぅ、ん…はぁ…ぁ…あ…」

内壁は熟して宗司の性器を搾り取ろうとしていた。
キツイ入り口に蕩けた奥のアンバランスが気持ちいい。
ヌメる穴は完全に根元まで受け入れ食い尽くしていた。
このまま怜のアヌスで溶けてしまいそうである。
(いっそ溶けてしまえたら幸せなのに)
宗司は彼の内部を味わいながらそう思う。
怜の腰が拙い動きで揺れていた。
まるで壊れた玩具のように必死で不器用な動作である。

「きもちい?」
「ん、んはぁっ…あぁぅ、んぅ、く…」

怜は素直に頷いた。
相変わらずぎゅっと抱きつく彼はどこまでも愛らしい。
それを見て宗司は胸を震わせた。
いやらしい体は肉付き良く肌に馴染む。
未熟な体は小さくて保護欲をそそった。
いつもの凛々しさはどこかに消え、幼い少年に戻る。
その瞬間を見られるのは宗司だけの特権だった。
肉と肉がぶつかりながら必死に互いを求めている。
いつの間にか汗ばんだ肌が蒸れていた。
ひんやりとした空気の室内に熱が灯る。

「そうじっ、宗司っ……ん、んぅっ」

怜は切ない声で宗司を呼んだ。
押し殺した喘ぎ声に重なって響く。
だからその度にキスをした。
――否、キスと呼べるほどロマンチックなものではない。
二人は強引に唇を押し付けると舌を絡めた。
吐息を呑み込んでは再び口付ける。
そして漏れた唇の隙間から甘く名を囁いた。
先程まで冷静だった彼が必死に求めている。
自らの上で淫らに腰を振りながら何度も呼び続ける。
宗司は体を倒すと夢のような光景を見ていた。
突き上げるたび彼の髪の毛が振り乱れる。
恍惚とした瞳に赤く火照った肌は艶かしい。
床はギシギシと卑猥な音を立てた。

ガラガラ――。

するとその時だった。
どこかの教室でドアが開いた音がした。
いち早くそれに気付いた怜は固まる。
もし生徒会室の前を通れば最悪気付かれてしまうかもしれない。
彼は脱ぎ捨てたシャツへ手を伸ばそうとする。

「やぁ…んっ、んぅ……っ!」

すると宗司は怜の腰を抱き寄せた。
手を伸ばす怜を無視して机に身を隠す。

「だめっ、そうじ…っ、宗司っ……」

あと少しの距離が届かない。
震える指先が必死にシャツを掴もうとしていた。
(どうしてっ)
教室に制服が脱ぎ捨てられていたら不審に思うかもしれない。
何より二人は全裸だった。
それが心もとない不安を煽る。

「ん、ふ……っ、ん、んっ」

徐々に足音が近付いてきた。
宗司は意地悪に腰を捏ねくり回す。
その度に声が出てしまいそうになって焦った。
いつもは滅多に触ってくれないペニスを扱き面白そうに見ている。

「ばれっ……ちゃ――、んんっ」

自分の指を噛んだ。
それでも声が漏れてしまう。
その緊張感に体中が粟立った。
きつく締められた腸内が悲鳴を上げている。
(きもちいい)
お蔭で最大のピンチだというのに蕩けきっていた。
味わったことのない背徳感に思考が犯される。
もしこんなところを見られたら今まで築き上げていたものを全て失ってしまうのだ。
嗤い者になると分かっていて背中がゾクゾクする。
そんな代償でこの快楽を得られるのなら安いものだった。

「み…るなぁっ…はぁあ…はあ…っ」

宗司は見透かした瞳で怜を見上げる。
それが何より恥ずかしかった。
(なんて淫欲な人間なんだ)
自らの性欲に絶望する。
だがこんな気持ちよさをどうして我慢できよう。
電気が走るような衝撃に体が止められない。
もうあと少しまで来ているのに行為を拒絶できなかった。
唯一彼は宗司に哀願する。

「ね、キスして…おねがっ、口を塞いで……っ」

吐息混じりに囁いた。
上体を倒し怜の体は机に隠される。
合間から覗くいやらしい肢体はこの際気にしないことにした。

「宗司っ、んぅ、はぁ…ぁっ」

うっとりと彼を見つめ唇を寄せる。
お互いメロメロになっていた。
目先の欲しか考えられず互いの唇を見つめる。
宗司は愛しそうに怜の唇を指でなぞった。
涎まみれなソレは誘うように妖しく光沢している。

「はやくっ、声が出ないほど、唇を奪って…っ、宗司のモノにしてっ」

彼はその誘惑に勝てなかった。
完全に別人と化した怜は威厳をなくして素直に甘えると恥もなくねだる。
その可愛らしさに限界を迎えながら後頭部に手を回した。
乱暴に口付けると彼の唇を奪う。
歯が当たって僅かに痛みが走ったが構わなかった。
溺れるように咥内を蹂躙し続ける。
無我夢中だった。
跨った怜が自分に覆い被さると貪欲にキスを求めてくる。
角度を変えてはしゃぶりつき唾液を飲み干した。
いつもより積極的な彼は宗司の体にしがみ付き撫でまわすように触れてくる。
そのくせ腰を押し付けることだけは忘れず快楽を欲した。
おかげで人が通り過ぎたことにも気付かなかった。
あれだけ冷や冷やしていたのに、もう外の世界に興味がなかった。
幸い廊下を通った生徒は不審に思うことなく慌てた様子で通り過ぎただけである。
ようやくそのことに気づいた時には二人とも口の周りが赤く腫れていた。
唾液まみれの顔を舐め合い息も絶え絶えに唇を離す。
だけど体勢はそのままでいつまた口付けてもおかしくない距離にいた。

「はぁ…はぁ、どうです?お気に召しました?」

宗司は甘ったるい声で囁くと頬に手を寄せる。
大きくて優しい手のひらだった。
だから怜は安堵したようにその手に頬ずりする。
こすり付けては感触に浸り微笑んだ。
その素直さに宗司の胸は疼く。
本来の怜は透き通るような純真さを持っていた。
快楽により本能が解き放たれた時だけ、こうして甘えることを許すのである。
だから宗司はセックスをやめられなかった。
肉体的な快楽はもちろん素の怜を見つけることが嬉しかったのだ。

「宗司、ん…っ…」

すると怜はその手を掴み唇に寄せた。
何度もキスをする。
それが満足すると人差し指を舐めた。
潤んだ目を細めてねっとり舐めあげる。
彼の赤い舌が酷く卑猥に見えた。
それに生唾を飲み込みながら宗司も指を動かす。
そして怜の咥内に挿入した。

「ん、んぅ、ふっ…ぅうっ…」

まるでフェラチオをするみたいに丹念に咥える。
丁寧な舌の動きは奉仕そのもので体の奥が熱くなった。
顔を上下させて根元まで咥えては先っぽを舌先で刺激する。
口許から怜の涎が垂れたが宗司の鎖骨に落ちた。
咥内を弄繰り回してやると怜の体はヒクつく。
口の中にも性感帯があるのか気持ち良さそうに喉を鳴らした。

「なに?また私のちんこを舐めたくなりました?」
「ふぁあ…んん、んんっ」
「おやおや。それは嬉しいですね」

宗司は涎まみれでふやけた指を離した。
唾液が糸を引いて怜の唇に繋がっている。
彼は物欲しげに宗司を見ていた。
腰を揺すり舐めたいと懇願している。

「でもだめ」
「な、なぜだ」

口が寂しいのか怜はしがみ付いてねだった。
だけど宗司は腰を突き上げては内壁を弄くっている。
抜こうとする気配はなかった。

「こんないやらしい唇で咥えられたらきっともたないですからね。二度も口に出すのは惜しいです」
「そんなっ」
「なんです。そんなに舐めたいのですか?」

怜は唇を噛み締めてモジモジしていた。
上目遣いで宗司を見ると欲しそうに頷く。

「な、舐めたいんだ」
「怜」
「胸がドキドキして急に宗司のちんちんを舐めたくなる。いつもみたいに乱暴に使ってほしくなる」

怜は顔を真っ赤にしていた。
元々Mっ気があるにせよ、彼は自らを貶めることで昂ぶっていたのだ。

「オナホールみたいに?」
「ん、ふぁ…っ」
「こんな可愛い口でなんていやらしいことを言うんです」
「らって、宗司が私の咥内をぐちゃぐちゃに掻き回すからっ……モノみたいにっ、扱うから……」
「たまらなくなっちゃった?」
「ん」

素直に頷くと宗司は触れるだけのキスをした。
ちゅっと甘い音が響く。
すると益々怜の顔は赤くなった。
火がついたように熱くなる。

「……でもやっぱりダメ」
「なっ…ぁっんっ」

宗司は怜の腰を掴んだまま起き上がった。
未だ西日の強い室内は赤い光に包まれている。
文句を言おうとした怜は喘ぎ声で塞がれてしまった。
その間に宗司は体位を変えると後ろから挿入する。

「や、んん――!」

後ろから抱えられたまま挿入されて仰け反った。
小さな体は宗司の思うがままに弄ばれる。

「中で出したいから今はだめ」
「あぁ、んんっ、ふぁ…ぁっ…」
「その代わり家に帰ったらまたしゃぶらせてあげる」

そういうと怜のお尻に打ち付けた。
小ぶりな尻がぷりんと揺れる。
その刺激に怜は一歩前に足を踏み出した。

「さあ、次にまた人が通る前にドアを閉めなくては」
「ちょっ――まっまさか、このまま…っあぁっ…」
「早くしないと今度はこの格好を見られてしまいますよ」
「ひぁあ…んんっふぅ…」

怜は突き上げられるたび逃げるように足を前に出した。
震える内股でどうにか進む。
少しでも遅くなると宗司の突き上げが待っていた。
カリ高の宗司はえぐるように突く。
その衝撃は直接脳に響くほどだ。
激しい快楽に反論も出来ず、奴隷みたいにヨロヨロ前に進む。

「やぁ…あぁっゆるして…っ」

ドアまでの二メートルが眩むほど遠い。
だが腰を掴んだ宗司は許すはずなく怜の腹を犯す。
先程まで満足に動けなかったフラストレーションを発散しているみたいだった。
容赦なく肉棒は内壁をえぐる。
おかげで怜の性器は精液を垂れ流していた。
前立腺を激しく攻め立てられて勝手にイキ続ける。

「はぁ…あぁっ、こんな格好っ…やだぁっ……!」
「いや?丁度いいじゃありませんか。犬なんですから」
「んぅ、意地悪するな…ぁっああっ…」
「交尾みたいでしょう?」

そう言って尻を叩くと怜は仰け反った。
また精液を溢れさせる。
(これじゃ本当に犬の交尾じゃないか)
叩かれた尻がジンジンする。
こんな酷い扱い受けたことがない。
そのくせ肉体は悦び欲している。
だから喘ぎながら一歩ずつ歩くのだ。

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