3

よろめくたびに尻を叩かれ、だらしない性器が射精する。
なんて下品な行為だ。
だが時折背中に口付ける感触は何より優しいものだった。
だから不当な扱いを受けようとも怜は嫌がらない。
それをセックスとしての戯れとして受け入れられる。

「さぁワンと鳴いてごらんなさい」
「ひぁあ、宗司っそうじぃ…っ、んぅ…」
「ほら早く」

彼はそう言ってひと際強く突き上げた。
その瞬間頭の中が真っ白になる。

「わ、わんっ」

だからつい言うとおりにしてしまった。
喉を鳴らしながら犬のような鳴き声を放つ。

「わんっ…わ…んっ、…わんっ…」

か細い声だった。
それが余計に加虐心を煽っているとも知らず鳴き続ける。
淫猥な犬は尻を叩かれてお漏らししながら鳴くことしか出来なかった。
赤く腫れて痛いのに気持ちよくて喘いでしまう。
体は限界だったが逃れられなかった。
中毒性のあるお遊びがやめられない。

「くぅん」

ようやくドアの前まで辿り着くと怜は振り返った。
甘えるような鳴き声で宗司を見上げる。
すると宗司は四つんばいになっている怜の変わりにドアを閉めた。
やはり開きっぱなしのドアでは気になる。
それを閉じた時の開放感は言葉に出来ないものがあった。

「よく出来ましたね」
「宗司」

するとまるで犬みたいに頭を撫でる。
だけど嬉しかったからじっとしていた。
――いや、じっとしていたのは撫でられていた間だけで、手が離れると飛びつくように宗司に抱きついた。

「宗司っそうじ~……っ」
「辛かったでしょう?よしよし」

彼はそう言って怜の体をぎゅっと抱き締めた。
それに胸をときめかせながら彼は擦りつく。
その後すぐに体勢を戻すと挿入してくれた。
こうなれば我慢なんて出来ない。
少しでも長く繋がっていたくなる。
怜の捲れたアナルはもういいなりだった。
太い宗司の性器を簡単に呑み込むと肉の輪を作る。
ピンク色の内壁は熟れた果実のように包み込んだ。
内側からペニスを刺激されたみたいにコツリと当たる。
それを手で撫でると幸せな気持ちになった。

「お前のがっ…はぁっ、こんな奥にぃ…っんんぅ、ふぁっ…」

涙を溜めてよがり啼く。
体中に刺激が響いて、どこに触れても気持ちよくなっていた。
宗司は覆い被さるとグイグイ円を描くように腸管をえぐる。
肛姦すればするほど怜のアヌスは味わいを増し、ますます魅了されていくようだった。

「ああ、なんていやらしい」

恥も外聞もなく喘ぐ怜に、宗司の胸はふくれあがる愛しさを抑えられずにいた。
それをぶつけるように肉体を虐め容赦なく責め立てる。
(このままずっとこうしていられたら幸せなのに)
二人はまったく同じことを思いながら体を重ねていた。
それほど肛交の肉欲は耐え難い誘惑を秘めていたのだ。
怜に対する愛情が、嗜虐の快感と欲情と共にふくれあがるのを感じる。
宗司は怜の平らな胸を執拗に愛撫した。
乳首を涎まみれにすると赤ん坊のようにしゃぶり吸い付く。
その刺激に彼の乳首はみるみるうちに硬くなった。
まるで彼の愛撫に呼応するかのように勃ってしまう。
それが恥ずかしくて怜は首を振った。
ふくらみのない胸が乳首だけは勃たせて快楽に酔っている。
その様子がたまらなく淫猥に映ったのだ。
内心、女でもあるまいし――と、卑下する。

「も、やめろっ…あぁっ、私は男だぞ……んく、っはぁ…乳首なんてっ、きもちよくっ」
「ないわけないでしょう?こんなに勃起させて」
「ひぁぁっ、うぅっ…噛むなぁっ、んぅん…っ、ちくび、とれちゃぁ…ああっ、あっ……っ」

怜は突然の痛みに体を強張らせた。
下を向けば悪戯っぽい笑みで乳首を甘噛みする宗司が見える。
彼は煽るような瞳で見つめると舌先で乳首を舐めた。
赤い舌がいやらしくて体が疼く。
生温かい涎の感触が何ともいえぬ快感に繋がった。

「……はぁっん、みっともない…っ、あぁっ私が…こんな風に屈するなんて…っ…はぁぁ…」

それでも溢れ出る喘ぎ声は止められない。
アヌスを犯す肉棒にとっくに平伏しているだから仕方がない。
堕ちてしまった体は制御不能で、ただ従順であることを願っていた。
体中に出来た内出血の痕は愛された証であり、蹂躙された証拠である。
その痕を家の鏡で見る度に怜は卑猥な気持ちに浸って自らを慰めていた。
年頃の少年に性欲を抑えられるはずがない。
何より愛しく想う気持ちを止められなかった。

「お前はっ私のものだ…っ、はぁ…ぁっ、私にも痕を付けさせろ…っ」
「はぁっ、怜…っ怜っ…どうぞ、私にも痕をつけて下さいっ」
「ん、んぅ…ちゅっ…んん」

怜は被さる宗司の体を引き寄せ、鎖骨や胸元に吸い付いた。
そして自分の体と同じ痕を刻みつける。
その度に宗司は嬉しそうに微笑み甘い声を放った。
怜を押しつぶさないように気を配りながら感触に浸る。
必死に吸い付く怜は愛らしくて胸を擽った。
垣間見える独占欲が心地良い。
だから我慢が出来なかった。

「ひぅっ、やだっ…そな強く突いたら…っ、痕が残せな…ぁっ…はぁっ」
「すみませんっ、でもあなたのそんな姿を見せられて我慢できる男はいません」
「や、やぁっ…はげし…っあぁっ…んっ、そうじっ…いっ……」

尻が捲れるほどに嬲られて怜は唇を離さざるを得なかった。
もっと痕を残したかったのに声を抑えられない。
それでも宗司の体についたキスマークは彼の心を満たしてくれた。
誰に見せることもないであろう痕を眺め満足げに目を細める。
しなやかな筋肉に赤く色付いた花は色っぽく刻まれていた。

「も、だめっ…だめっ…ああぁっ……はぁっ、くっ…んんっ」

零れ落ちる喘ぎ声を我慢できない。
校内には残っている生徒がいることを知っている。
それでも抑えきれない快楽の波を制御することは出来なかった。
宗司の腕の中で甘く蕩けるような声で啼き続ける。
ペニスはとっくにドライオーガズムをむかえ力なく精液を吐き出していた。
下っ腹を汚す白濁液は床に垂れる。
同時に纏わりつくような匂いが鼻につく。
もう美幸の香水の匂いはしなかった。
代わりに卑猥な生臭さでいっぱいになる。
それが余計に雄としての本能を呼び覚ました。
ぐちゅぅ、ぐちゅぅっといやらしい音が響く。
ガマン汁で滑りをよくしたアヌスは女の性器みたいだった。
初めての時は指一本でも痛かったのにこのザマである。
今じゃ亀頭が奥をえぐる度に歓喜の声をあげた。
締め付ける内壁はヒクつきもっとと欲している。
蕩ける腸管が宗司の性器を奥へと誘っているようだ。
搾り取られるような快楽に宗司は奥歯を噛み締める。
彼だって必死だった。
少しでも長く怜の中にいたい。
彼を犯していたい。
それなのに無防備に晒された体は挑発的で我慢が出来なかった。
いつの間にか労わることも忘れて激しく蹂躙する。
馬鹿みたいに腰を押し付けると彼を嬲った。

「はぁ…あぁっ…あぁあ…っんっ、んんっ…」

(このままでは体が壊れてしまいそうだ)
宗司の激しい愛撫を受けながら虚ろにそんなことを考える。
喘ぐ声が少しだけしゃがれていた。
軋んだ体は痛いのか気持ちいいのか分からない。
見上げれば真剣に自分を見つめる瞳とぶつかる。
その瞬間さらに宗司のペニスが大きくなった。

「ひぁ…あぁっ、またっ大きく……なったっ…」
「くぅ、はぁ…ぁっ、怜っ……」
「んくっ…ん、はぁっお前は……どこまで私をっ…辱める、つもりだっ…」

ぐいぐいと自己主張の激しいペニスに顔を赤らめる。
これ以上奥まで許せば気が変になってしまいそうだった。
残された理性が抗い、僅かばかりの正気を保とうとする。
しかし宗司は反抗的な眼差しで怜を見た。
荒く吐息を乱しながら怜の足を持ち上げる。

「ふやぁっ…っ、んぁあっああ…はっ…んんっ……」

そうしてちんぐり返すと上から押し付けるように挿入した。
怜は嫌だと足を振るが掴まれて抵抗できない。
むしろそのまま開かれて秘部が晒されてしまった。

「みえちゃぁ…あぁっ、んぅ、はぁ…あああっ、お前に犯されているところが、ぜんぶ見えてっ…」
「絶景ですね、怜っ」
「ばか…っもの…っ…ひゃぁあっ…んんっ、言っているそばからっ…あぁぁっ」

それだけではなかった。
えぐい角度から腸内を犯されて奥の奥まで届いてしまった。
目を見開いた怜はその衝撃に仰け反る。
唐突に弱い部分を責められて意識が飛びそうになった。

「そこはっ……そこはぁっ…あぁっひ…っ…」
「はぁ、怜っ…怜っ……」
「やっんんぅ…おくに来すぎっ…だっ!」

とろとろに蕩けきっている。
腐る前の果実みたいに熟れて柔らかくなっている。
剥き出しのまま無防備な媚肉がいきなり硬いモノで押し広げられた。
容赦なく突き上げるペニスは怜の体を引き裂こうとしている。

「あぁうぅ…っ、だめに……なるっ…はぁっく、私の体はもうだめになってしまうっ」
「なら、だめになればいい」
「ひぅっ……っでもっ…だってっ…」
「堕ちた怜が見たい」
「そなっ…お、まえっ…!」

怜は息も絶え絶えに宗司を見上げた。

「こんな行為で私をっ…縛ろうと、いうのかっ…」
「ん、はぁっ…縛るなんて人聞き悪い。教え込むんですよ」
「なにを…はぁっ、んぅあぁっ…も、やめっ…」
「他の誰にも奪われないように躾けるんです」

冷たい声が自身を昂ぶらせる。
怜は魘されるように喘いだ。
これ以上ないほど奥を犯され朦朧とする。

「私以外、目に入らないように」

下半身が痺れていた。
そのせいで暴れることも許されない。
突き上げる度に揺れるペニスが精液を零す。
それが自分の顔に垂れた。
ずいぶん間抜けな格好である。
(躾だと?馬鹿馬鹿しい)
だが怜は心地好い倒錯感に埋れながら自嘲気味に笑った。

「そ…うじっ…キス、しろっ…」

そう言って震える腕を伸ばす。
怜は片手を宗司に差し出した。
(そんなもので縛られたら容易いのに)
しかし現実はそれほど甘くない。

「怜…っ…」

すると宗司は息荒く怜の手の甲にキスをした。
幼い頃から怜が手を差し出せば、宗司は必ず口付ける。
それが二人の小さな誓いだった。

「ん、れいっ…怜っ……」

何度も名を呼びながら愛しそうに口付ける。
それは同時に怜への敬愛を表していた。
(どんなに優位に立とうとしても怜には敵わない)
宗司にとって怜が世界の全てだった。
どんな駆け引きをしても最後には負ける。
彼が折れる他なかった。
振り向かせたいのに、怜は決して靡いてくれない。
甘い誘惑の果実は毒を含んでいた。
それに僅かな焦燥感を抱き胸が苦しくなる。
だから宗司はキスをやめなかった。
心の拠り所を求めて無我夢中に唇を寄せ、細い腕を掴む。
そのせいで下半身は自由になった。
無理のある体勢から解放されて安堵の息を吐く。
強引に折れ曲がった体はやはり苦しかったのだ。

「好きです、怜っ」
「ん、宗司…っ」
「どんなにあなたを縛りたいと願っても叶わないっ。私はこんなに縛られているのに!」

宗司は必死だった。
切なげに歪む彼は怜の手を離そうとしない。
性器がアヌスから抜けても構わなかった。
ただ一心に怜を見つめ、指先に丁寧なキスを繰り返す。
まるで駄々をこねる幼児のようだ。

「おいで。宗司」
「怜…っ」
「一緒に気持ちよくなろう」

怜は宥めるように性器を誘導する。
そうして自らアヌスを曝け出した。
今日だけでずいぶん使い込まれた穴は開ききっている。
ヒクつき蠢くソコは宗司の理性を容易く奪い取った。
熱くそそり立った性器は疼く。
赤く爛れたように腫れてずいぶん卑猥に見えた。

「くぅ…っはぁっ…」

だから容赦なく根元まで挿入する。
怜はそれをすべて受け入れ、今度は抜けないように腰に足を巻きつけた。
ぎゅっと力めば宗司の精液を搾り取ろうと締め付ける。
全身に電気が走るような快楽が迸った。
淫欲な体は宗司の精子を待っている。
体液まみれの体を重ねてその時を待っていた。
一突きするごとに背中を反って喉を鳴らす。

「ひぁあっ、あぁっ…んんっ、ふぅっ」
「怜っ…ちゅっ、はぁっ…」

宗司は怜の無防備な喉に噛み付くようなキスを落とした。
執拗な愛撫を続けて少しでも怜の体に刻みつけようとする。
甘い情事のわりにどこか獣じみていた。
それはきっと宗司が怜の最奥で射精しようと躍起になっているからだ。

「はぁっ、はぅっんっ…も、でるっ?でるんだろうっ?」

怜にもそれは伝わった。
性急な行為に火がついて愛しそうに見上げる。
もう出すことしか考えていない宗司は可愛かった。
一生懸命腰を振り怜に種付けしようとしている。
だから彼の首に手を回し、少しでも密着しようと抱きついた。
覆い被さった宗司は忙しなく愛撫を続ける。
ねっとりとした舌が怜の耳を犯した。
ぴちゃぴちゃと恥ずかしい音だけが木霊する。
腸内では粘膜が絡みつき同じような音を出していた。

「ひあっうぅっ…いいから出せっ、はぁっ…わたしのっおくに…っ」

内壁を突き破るような激しい責めに自然と涙が溢れる。
互いの体に擦り合わさった自身のペニスは泣いてよがっていた。
それがローションのように絡み卑猥な糸を引く。

「イっ――――っ!」

すると突き刺さっていたペニスが脈打った。
その瞬間二人の体がピタッと止まる。
宗司は怜の体を強く抱き締めたまま固まった。
と、同時に肉棒から白濁液を放つ。

「くぅっ…んぅっ――!!」

背中をゾクリと快楽が駆け上がって肌が粟立った。
宗司は根元まで突きたてたところで射精する。
内壁に浴びせるように汁を叩きつけて内部を溶かそうとしていた。
その感触に身震いして暴れたくなる。
しかし強く抱かれていた怜は甘んじて受け止めることしか出来なかった。
脳が麻痺して頭が真っ白になる。

「ひぅぅっ…んんぅっ――!」

歓喜の悲鳴は宗司の唇によって塞がれた。
朱唇を舐めまわし、彼の口許を唾液まみれにするとヌルリとした舌を差し込む。
口の中を生ぬるい舌で蹂躙された。
捕らわれた舌を千切れそうなほど吸われて意識がまどろむ。
穴という穴を犯されて怜の体は痙攣した。
手足が動かない。
おかげで怜の顔は涙と涎でぐちょぐちょだった。
気品の欠片も無い顔を晒し宗司と卑猥な口付けを交わす。
その間も宗司の射精は続いていた。
腸内が白く汚されていく。
それどころか染込ませるように奥へと性器を擦り付けていた。
強欲な本能が奥へと誘う。

「ふはぁっ…ぁっ、射精しながらっ…突き上げるなぁっ…」

腰が砕けてどうにもならない。
怜は為すがまま宗司の精を取り込む。
(女ならとっくに孕まされているぞ)
それほど熱情的な抱き方だった。
濃厚な子種汁をこれでもかと吐き出されて腸内がいっぱいになる。

「まだっ出て…っ」
「だって怜の穴が搾り取るから」
「んっふぁ……っ」

甘ったるく囁く彼は射精の満足感に浸っていた。
満たされた征服欲にようやく微笑む。
そしてまた一突きした。

「馬鹿め」

そんなに多く出されたら内壁がふやけてしまう。
だけど怜はまんざらではなかった。
呟いた言葉に恥じらいと悦びを滲ませる。
それに気付いた宗司はそっと額にキスを落とした。
汗で濡れた前髪を掻き分ける。

「やっぱり怜になら縛られてもいい」

ぎゅっと抱き締められて怜の胸は震えた。
(違う――)
本来なら口に出すべきではない想いが蘇る。
今まで一度も宗司に伝えたことはなかった。
それが無用な感情だと知っていたからだ。
(――ならこの行為は?)
何も生み出さない行為を続けて何になる?
孕むことのない体で抱かれ続ける意味はどこにある?
矛盾はいつも心の中にあった。
常に葛藤の日々だった。
自問自答の果てに待つのはどんな答えだというのか。

「――お前は鈍いから知らないだけだ」

怜は宗司の背中に手を回した。
行為を終えたばかりで二人とも息が荒い。
そのまま余韻に浸っていた。
火照った体が徐々に冷やされ鈍った感覚が蘇ってくる。
それでも彼の体を離さなかった。
驚いた宗司はまじまじと怜の顔を見る。
何を言い出すのか分からないといった表情だった。

「なぜ私がこんな辱めを受けなければならない」
「怜なに言って…?」
「それはお前を愛している他に理由なんてないだろう?」
「!」

本当は怜の方が鎖で繋がられている。
いつも手綱を持っているのは宗司だった。
普段は気にも留めない陰口に口を出し、宗司の言動に心を乱される。
どんなことにも動じない怜が揺れるのは全て宗司のせいだ。
しかしそれが心地良かった。
胸の奥に燻る感情は愛しさだけである。
だからこの関係を続けてきた。
結果だけはいつも明白に示されている。

「宗司、ずっと私の傍に居てくれ」

怜は宗司の胸元にしがみ付くと目を閉じた。
夕暮れの優しい西日が室内を赤く照らす。
それもまた彼方へと沈もうとしていた。
代わりに白い月が滲むように姿を現している。
宗司は自分の胸元に納まった彼に、これ以上ない愛を感じた。
だから恐る恐る触れると強く抱き締める。
もう他の誰にも触られないように。

「――仰せのままに」

END