5

「くぅ――…っっ!」
「はぁっ」

章介は何度か自分のペニスを弟の尻の穴にこすり付けると見定めるように突っ込んだ。
途端にキツイ締め付けが彼を襲う。
だがそれに屈する事無く力の限り押し進める。
弟の小さな体にそれが耐えられるか判らなかったが余裕がなかった。
自分の事で手一杯だったせいで強姦まがいな処女貫通をしてしまう。

「ひうぅっ…!かはぁっ――!」

直樹の体は初めての感覚に震えを抑えられずにいた。
指の感触とは桁違いの質量や熱さに頭が真っ白になっていた。
お尻の穴があまりの熱さで焼け爛れてしまったのではないかと思うほど違和感が酷かった。
だが兄はそこで止まらずぐいぐいと中まで挿ってくる。
咄嗟に自己防衛が働いたのか腰を振って逃げようとしたがそれも章介によって阻まれてしまった。
だから目の前の壁にぴったりと寄り添って必死に耐える。
章介もそれに合わせて体を重ねようとするから首筋に彼の荒い吐息がかかった。
その聞いた事のない色っぽい声に下半身がズクッと重くなる。

「に…いさ…はぁっ…っぅ、にいさぁ…」

これが犯されるという事なのだと身を持って知った。
お腹の中に異物が入ったような違和感で気持ち悪いのに体が熱くて燃えそうである。
手足には力が入らずその異物によって支えられながら立っているような錯覚を起こしていた。
(まだ止まらないっ、どこまで…はいるのっ?)
ギチギチな入り口を越え内壁が進入を許していく。
兄の亀頭がなりふり構わず奥へと暴こうとしていた。
擦れるたびに言葉にならない声があがり壁に爪を立てる。

「はぁ…はぁっ…奥だめ…ぇっ…」
「くぅ…っ…もうすぐ…根元まで入る…っ…」
「あぁっ…ふぅ…にぃさあっ――…」

すると彼は最後に荷物を押し込むような乱暴さで挿入した。
ぐいっと奥まで突き上げられて一瞬息が止まる。
それぐらいの衝撃に目の前で火花が散った。
お腹どころの話ではなく心臓まで突き上げられたような気がして眩暈がする。
だけど中で感じる章介は時折脈を打っていた。
奥まで挿入して一旦動きが止まる。
そのまま直樹が落ち着くまで抱き締めていてくれた。
だから余計に脈を打っているのが伝わった。
そしてその鼓動のような感覚が何より直樹を幸せにした。

「大丈夫か?痛くないか?」
「ひっぅ…ふぇ、にいさんっ…にいさんっ…」

押し付けられた体は汗ばんでしっとりとしている。
直樹はお尻の穴を通じて深いところまで繋がっている事を再確認していた。
まるで夢の中にいるような幸福感が染み渡る。
だから背中で感じる兄の気配に身を委ねたくなった。
もっとずっとこうしていたいと思った。

「兄さん、好きっ…」

直樹は力を振り絞って章介の方に振り返った。
すると顎を掴まれて上を向かされる。
無理な姿勢であったが必死に彼を見上げた。

「……俺も……き、だよ」
「え――っ?」

(今なんて……)
だが咄嗟に上げようとした直樹の声は章介によって塞がれた。
思わず目を見開くが廊下は真っ暗で彼がどんな顔をしているのか見えない。
ただ唇に柔らかな感触を当てられている事が判った。
それは兄の唇である。
二人の唇は口淫をし続けたせいで変な味がしていた。
――しかしそれすら気にならないほど優しい口づけであった。
(それって…)
直樹の胸がいっぱいになる。
低く囁かれた声は艶っぽく耳に余韻を残した。

「に、に、兄さん…も、一度……」

今のが空耳じゃなければ彼は好きだと言った筈だ。
だが面と向かって言えない程緊張してどもってしまう。
囁かれた耳から伝染するように顔が熱くて火を噴きそうになっていた。

「――好き」
「に、にいさっ…」

するとそれを判っていて章介は耳元に唇を寄せる。

「好きだよ」
「ふぁ…っ兄さん、もっと……もっ…とっ」
「直樹が好き」
「にぃさ…ぁっ…」
「ずっと前から好きだったよ」

ひとつ呟く度に直樹の息が荒くなる。
そして彼のアナルは熱く熟れきゅきゅっと締め付けた。
この状況で何も見えない筈なのに直樹の顔が手に取るように判る。
だから腰の律動を開始しながらも囁き続ける。

「兄さんにちんこ突っ込まれて気持ちい?」
「ひぁ…っく、だって…らっ…て、にいさ…ぁっ!」
「やっぱりお前は変態だよ」
「んくぅ…はぁっ、うぅっ」

挿入時はさすがに苦しそうだった直樹もしばらく落ち着いたせいか甘い声を聞かせてくれた。
最初は浅くゆっくりと突き上げる。
密着した体が暑苦しかったが触れて居たかった。
汗をかいて滑る皮膚の上を指が這っていく。
直樹の腸内は不規則な締め付けで中のペニスを圧迫した。
体に力が入らないのか突き上げる度に彼の体がビクリと痙攣する。
夢にまで見た弟のアナルは思った以上に吸い付き良く性器を刺激してくれた。
だから気遣いながらも意識を持っていかれそうになる。
直樹は初めての割に痛そうな素振りを見せずに喘いでいた。
(だいたい四ヶ月ってところか)
それは直樹が堕ちるに掛かった時間である。
否、何も知らない無垢な少年が毒牙に掛かった時間とも言うべきであろうか。
あれから辛抱強くこの時を待っていた。
自らが求めてくるのを必死に耐えながら待っていた。
堕落した弟は今じゃ兄のペニスを穴に咥え込みよがり啼いている。
まるでこれも遊びの一環だと勘違いしてしまいそうな程ずっぽりと咥えていた。
本来なら生殖活動であり、男同士でするものではない。
ましてやまだ幼い弟には無関係の行為であった筈なのだ。
暗闇に白い肌が浮かび上がる。
誰にも汚されていない美しい尻を見下ろし自分の浅ましい性器の出入りを見つめる。
不釣合いなそれが男心を擽った。
いうなれば綺麗な花を無理やり散らしてしまう快感に似ている。
弟にそんな独占欲や征服欲を押し付けるなんて間違っているのだ。
だが始まりのあの日から絶えず自分の中にあるどす黒い感情は抑えられない。

「あぁ…はぁっ、にいさ…はげし…いっ、にいさっ…くぅ…っ」
「はぁ、な…おきっ直樹っ!」

気が付けば激しく突き上げていた。
まるで女の様に甲高い声で喘ぐ直樹は可愛らしく愛しい。
それでも満たされず腰を打ち付けては快感に浸った。
(渇く、乾く、かわく…)
想いを遂げられて幸せなのに体は渇望感で渦巻いていた。
闇夜に溶けた悪意が辺りに満ちて呑み込んでいく。
最初は出来心だったんだ。
それは本当に嘘じゃない。
こんな筈じゃなかったんだ。
直樹は大切な弟で仲が良い兄弟でいたかったんだ。
――なんて、誰に聞かせるわけも無く言い訳がましい事を思う。

「な…おきっお前は一生俺の弟だっ……」
「はぁっにいさ…あぁっ、ぅくっ…」
「だから一生…俺のものだ…っ…ずっと俺の――…っ」

(一生犯され続ければいい)
心の声がそう呟く。
直樹の穴もペニスも乳首も唇も瞳も何もかも自分の物だと誇示していたかった。
溺愛というには酷くドロドロヌメヌメとした感情である。
それはまるで森の奥深くに眠る底なし沼のような毒々しさがあった。
もしかしたら四ヶ月もの“禁欲”期間が章介の闇を作り出したのかもしれない。
持て余した切情が一気に噴出して彼の心を奪い取ったのだ。
それほど目の前で喘ぐ弟は美しく淫乱であった。
柔らかく抱き心地の良い体も甘い吐息も魅了してならない。
他の誰にも指一本触れて欲しくない程愛しさを募らせていた。
純愛と狂愛は紙一重である。
どちらも思い焦がれて行き着いた先に待っているものだ。
言葉の通り狂おしい程に愛しく想う。
むしろ章介は弟を犯しながらよく今まで我慢したと自らを褒めていた。
今の心情じゃ全く考えられないほどあの時の自分は理性的であった。
何せ壁一枚向こうで自慰をする弟を見つめ手を出さずにひとりで抜いていたのだから。

「はぁく…直樹っ、可愛いよ…ふぅ、はぁ…っ」
「あぁ…にいさっ…っひぁっ、にぃしゃ…あぁっ」

しかし実は直樹も章介の異変に気付いていた。
荒々しく抱く彼にこんなにも求められていた事を知った。

「ぼくはっ…ふぁ、ぅく…一生おにいさんの…っあぁん…おとうと、です…ぅっ」

(一生犯し続ければいい)
心の声がそう呟く。
そうすれば兄は永遠に自分のものでいてくれる。
この体の全てが兄の物であると誇示していたかった。
溺愛というには酷くグチャグチャとした感情である。
それはまるで深海の底に沈む遺跡ような寂しさがあった。
今まで満たされなかった愛情を一身に受けて幸せに感じる。
もう独りぼっちの寂しい夜は必要ないと思うとそれだけで何もかもが無に還った。
自分を包み込む腕の温かさは何より直樹の心を癒してくれた。
いっそ束縛して征服してくれたら成すがままに委ねるのに。
そのためなら自分を捨てる覚悟があった。
兄が猥らになれと言うのなら恥じらいを捨てて乱れよう。
清らかで居てくれと言うのならいつまでも初々しく純真でいよう。
全ては兄の為――章介の為なら何でも出来る気がした。
それほど彼を愛し想いを募らせていた。
敬愛と情愛は紙一重である。
ただ敬い慈しみ続ける恋は切なくも深い絆で結ばれていた。
ひとりじゃ満たされなかった行為も章介に奪われる事によって何かが変わった。
もうあの時のような虚しさに身を切られる必要などどこにもない。
だから直樹は兄に抱かれながら心底思った。
狂おしい程の愛情で自分を縛り続けて欲しい、と――。

ガチャ――。

いつの間にか時計は夜の十時を越えていた。
今まで外界と遮断されていた世界にドアの開く音が聞こえた。
どこまでも広がる暗闇にひとつの光が灯される。

「ただいま」

それは少し早めに帰宅した母親であった。
今朝子供達に断っていたにも関わらずやはり心配で早めに帰らせてもらう事にした。
本来なら二次会のカラオケにも出るべきであったのだが上司に上手く言い訳して帰って来たのだ。
さすがに付き合い上酒を飲まなくてはならなかった為、若干酔っている。

「あれ~?直樹?章介君?」

元々酒が弱いのか足取りもおぼつかない。
いつもなら靴を脱いですぐに揃えるのに脱ぎっぱなしのまま廊下の電気を付けた。
酔いが回って気持ちいいのかいつもより高い声で上機嫌である。
廊下には彼女のドタドタ、ドタドタと何とも頼りなさ気な足音だけが聞こえていた。
そのまま真っ暗なリビングのドアを開けるが母親は首を傾げる。

「直樹?居ないの?」

寒々としたリビングの電気を付けるがどこにも息子の姿が見当たらない。
辺りを見回したが人気がない事に尚更首を傾げた。
もうとっくに晩御飯を食べて二階の自室に篭っているのかもしれない。
彼女はそう判断するとおぼつかない足で廊下に引き返す。
遅くなった事を詫びようとお土産を買ってきていたのだ。
だから一言声を掛けようと思った。

「………ふぅっ…」
「ん?」

すると階段の下まで来たところでふいに変な声が聞こえてきた。
さすがに酔っているとはいえそれ位気付いたのかもう一度辺りを見回す。
テレビがついてないせいもあり家全体が息を潜めるように静まり返っていた。

「――直樹?」

今のは息子の声でなかっただろうか?
ふとそんな事を思い廊下の真ん中で立ち止まる。

「か…っ…か、母さ…ん…?」

すると今度はハッキリと直樹の声で名前を呼ばれた。
未だ酔いが冷めない彼女は声のした方に振り返ってみる。
だがそこは家のトイレであった。

「どうしたの?」

何かあったのだろうかと心配してノックしてみる。
先ほどはトイレにいるなど全く気付かなかった。

「ち、ちょ…とお腹、いたく…て…」
「あら何かに当たったのかしら?」
「ひぅっ…ん、あ…はぁ…」

何やら苦しそうな声が聞こえてくる。
食中毒かと思うが今朝同じご飯を食べた自分は何ともない。
なら給食か晩飯に変なものを食べてしまったのか。

「ち…が、ん…ただのっ…便秘で…」
「便秘?――あ、まさか直樹また母さんの下剤飲んだんじゃないでしょうね?」
「ご…めなさ…うぅっ…」
「はぁ……」

直樹は食が細いだけでなく偏食気味であった。
いわゆるよくありがちな野菜嫌いの子供である。
そのせいで便秘になる事が多々あった。
一度、救急箱に入れていた大人用の下剤を勝手に飲んで酷い目にあったことがある。
いわゆる猛烈にお腹が痛くなってトイレで数時間格闘していたのだ。
それを思い出した彼女はやれやれとため息を吐く。

――だが、実際にはトイレで全く違う事が行われていた。
あれから延々と体を重ね続けた二人はトイレでも行為に及んでいたのだ。
直樹がどうしてもおしっこがしたいというからである。

「はぁ…おにいさっ、んく…音立てたらバレちゃ…あぁ」

便器に座った兄の上に跨ぎ卑猥にも股を開いている。
何度も腸内射精されたせいで彼のアナルからは兄の精液が溢れていた。
突く度にぐちゅぐちゅといやらしい音が響くのである。

「章介君は?」

すると未だにトイレ前にいる母親はノックしながら声を掛けてきた。
本当は声を出すのも辛い状況だったが怪しまれない為にはなんとか応え続けなければならない。

「ん、まだ…帰って来て、ない……よ」

本当は自分の真後ろでキツク弟を抱き締めたまま貪りついていた。
衣服では見えない至るところにキスマークを残し自らの所有物にしている。
体中が虫刺されのように赤く卑猥な痕が残っていた。
それほどの強欲さに直樹の心はたまらなくなり声が枯れるまで喘いでは「もっと」とねだる。
おかげで二人とも気が変になりそうであった。
そんな章介に直樹はめろめろで腰が砕けたままいいように抱かれていた。
とっくに精液が空っぽになったタマはイク度引きつけを起こしている。
兄にはそれがドライオーガズムだと言われた。
射精せずに果てる事をそう呼ぶのだという。
普通に射精するより長く絶頂に浸っていられるため気持ちよさに恍惚とした。
とろとろに蕩けたアナルは生き物のように口を開け章介のペニスを喰っている。
繋がっているソコが丸見えで何とも卑猥な気分に浸った。
(あんなに大きなちんこが入っているんだ)
彼が入り口まで腰を引くと精液が漏れる。
便器の中に漏れた精液が落ちる度に雫のような清らかな音がトイレに木霊した。

「あらそうだったの。ひとりでよく頑張ったわね」
「ん、ふぅ…はぁ…」
「――で、あなたは大丈夫なの?あまりに辛いなら今から病院に行く?」

酔っているのか声が上擦っているがそれでも息子を心配している声が聞こえる。
まさかトイレで近親相姦しているとは思わない彼女の声に心が苛まれた。
だがそれが罪悪感になり背徳感という甘い蜜に変わる。
まるで無限回廊の様に続く卑しさに体は疼いた。
章介も同じ気持ちなのかペニスを硬くしている。
奥の奥まで届き直樹の前立腺を刺激したまま止まっているソレは凶悪な代物であった。
まさに凶器の名に相応しい。
弟の弱いところだけを的確に突いて何時間も穴に入りっぱなしなのである。
あまりの快楽に暴れだしたくなったがその度に体を押さえ付けられ、与えられるがままに悦楽を叩き込まれた。
まるで便器のように何度も中出しされて腹はタプタプである。
お蔭で窄まったお尻の穴は見る影も無く拡がりだらしない形に崩れていた。

「…っ…ら…らいじょう…ぶっ…」

直樹が舌ったらずなのは章介と舌を絡めてキスをしていたからである。
首だけ振り返り必死に舌を突き出した。
赤い舌同士が絡まり銀色の糸が引く。
兄の唾液を飲み干せず口元が汚れていた。
それが首筋にまで垂れて平らな胸元にまで落ちていく。
唇は不自然な光沢を放ち章介のキスを誘っていた。
何度も激しいキスを続けた結果互いの唇はもちろん口の周りまで赤く腫れてしまっている。
その赤みが淫乱の証のように映った。
母親がドア一枚隔てた場所に立っているのに二人は熱っぽい眼差しで見つめあい隙あらばキスしようとしている。

「……そう?じゃあお母さんはお酒を抜くためにお風呂入ってくるから。何かあったら言うのよ?」
「ん、ふ…ぁい…っ…」

まるでもう眼中にないかのように気の抜けた返事をした。
いや、とっくに母親の存在は意識の隅に追いやられていた。
(キスがしたい…もっとキスしたい…いっぱい…いっぱいキスがしたい)
二人は荒ぶる興奮を鎮めるように触れるだけのキスをしては見つめ合っていた。
目線はお互い唇に集中している。
だがもちろん我慢なんて出来なかった。
一時の間を置いて吸い寄せられるように深く交わるようなキスが始まる。
未だに彼女の気配を感じていたせいで音を立てないように静かな口づけだ。
ねっとりと唾液を交換しながら角度を変えていく。
するとしばらくしてから遠のいていく母親の足音が聞こえてきた。
それと同時にリビングへ続くであろうドアが閉まる音がした。
この家のお風呂はキッチンの奥にある為、リビングから直接行ける。
お蔭で閉じられたドアは当分開かれる事がないだろう。

「はぁ…っく…嘘を吐くなんて悪い子だね」
「んぅ、ごめ…なさっ…ひぁっ…ぅっ」

章介は乳首を抓りながら耳元に噛み付くと甘く囁いた。
それだけで直樹の体はビクビクと震える。
うっとりと見つめる瞳から目が離せず吐息が交わる距離で互いを見つめ合っていた。
直樹の体は汗と精液の匂いで凄まじい体臭がする。
だがその卑猥な匂いの虜になった章介は硬い肉棒を何度も彼の体に突き立てた。
体中精液まみれなのは章介が色んなところに射精したからだ。
まるで底がないかのように情交を続けて酷い有様である。

「にいさ…あぁ…すきっ、すき…ぃっ…」

直樹の体は愛を呟きながら股をM字に開きグラインドしていた。
それに合わせて下から突けばガクガクと便器が軋む。
上気した肌が擦れて愛しそうに抱き合う。
狭いトイレ内に篭った匂いは章介の部屋より酷かったかもしれない。
体液のむせかえる匂いに包まれて激しく体を上下する。
腸内に残った精液が周囲を汚すのも構わず求め合っていた。
理性などとうに朽ち果てた体は欲望に忠実で無我夢中になる。

「はぁっ…またたっぷりと出してやるよ…」
「ん、んぅ…出してっ…お腹いっぱい…っぅ…して…っ」

膨らんだ腹に募る愛。
何も生み出さない浅はかな行為の先に待つのはインモラルな世界だけだ。

「ぎゅ…ってして…っ」

永遠に満たされる事がないと知りながら二人はどこまでも堕ちていく。
これほど愉快な話はあるまい。

「おにい…さ…――――!!」

二人はきつく抱き締めあったまま果てた。
直樹は新たに注がれた精子汁を恍惚とお尻の穴で味わっていた。
また章介も弟の腸内に植え付けるように最後の一滴まで押し付けた。
お陰で身悶える直樹は呼吸もままならず強引に精液の吐き口にされてしまう。
奥に出された彼はだらしないイキ顔を晒し続けた。

どっと疲れが押し寄せて室内に荒い呼吸の音だけが響き渡る。
だがそれだけやっても二人には足りなかった。
もっと体が悲鳴を上げるまでこの遊戯は続くべきだと思っていた。
(離れたくない)
ひとつに溶け合えるまで交わっていたい。
だが先に動いたのは章介であった。
彼は後ろ髪が引かれる思いで体を離すと直樹の穴からペニスを抜いた。

「ちょっと指で蓋していて」
「ん、ふぇ…?」

それだけいうと躊躇いも無くドアを開けて出て行く。
さすがに足音を気にしたのか階段をあがる時は静かであった。
トイレの中では彼に言われた通り指を突っ込んだ直樹が後姿を見届ける。
ゆっくりと階段を上っていく章介の姿は昨日見た時より――否、今朝見た時より格好良く見えた。
まさに恋は盲目状態なのである。

しばらくしてから荷物を抱えて章介はトイレに戻ってきた。
彼は直樹の体を拭くティッシュやパンツ、ズボンまでも持って来てくれたのだ。
――そしてもうひとつ。

「なんですか?これ……」

章介の手にはプラスチック製の変な形の物があった。
二本に枝分かれした蔓のようにうねった形をしている。
一本目が太くデコボコしていて二本目は細く小さかった。
オブジェの様に表現しにくい形に首をかしげた。
だから彼に体を拭いてもらいながらたずねてしまう。

「これはエネマグラっていって」
「え、エネ……?」
「まぁいいから」

すると章介は強引に直樹の腰を掴んで四つんばいにした。
そして彼の指を穴から抜くと精液が垂れ落ちる前にその変な形の物を穴に入れてしまう。

「ひあぁ…ぁっ…」

すると突然の刺激に直樹の上体は仰け反った。
さっきまで突かれていた弱い部分に突起が擦れて声を上げてしまったのだ。
だが彼は笑ったまま根元まで入れてしまう。
そしてそのままパンツやズボンを履かせてしまった。

「な、なに…ぃ…はぁっ」
「親父と母さんが眠るまでこれを付けていて?じゃないと精液が漏れちゃうだろ」
「そ…な…ぁっ…」

姿勢を変えると内壁に擦れて気持ち良くなってしまう。
おかげでちゃんと立てずに前かがみになってしまった。
気持ちいい場所で止まったまま動かないのは辛い。
むしろ早く章介のペニスで犯して欲しかった。
彼の部屋でもいいし自分の部屋でもいい。
むしろ母親に見つかるのなら外でしてもいいと思っていた。
だが彼はトイレの後処理をしていて聞く耳を持ってくれない。

「俺はちょっとコンビニ行って帰って来るから先にリビングに戻っていろよ」
「やだ…こんな状態で我慢できな…」
「いいから」
「ふぅ…っ…」

自然と内股になってよたよたと歩いてしまう。
だが不服の声を上げようとしたら腕を強引に引っ張られて抱き締められてしまった。
そして肩口に顔を埋めたまま優しく背中を擦られる。

「おにいさ…」
「もう少しだから」

こんな風に優しくされたらもう抵抗できなかった。
だから直樹は離れることを惜しむように章介の体に頬ずりする。

「その代わり」
「ん……」

すると章介の声が情事の時と同じ低い声であることに気付いた。
お蔭で勝手に体が火照ってしまう。
そんな自分の体を抑えるように兄の体にしがみ付いた。
それはどんなお菓子より甘い誘惑である。

「二人が寝静まったら俺の部屋においで」
「おにい…さ…ん…」

「そしたらまた朝まで可愛がってあげる」
「ん…」

渇きを満たすために愛欲は続く。
悪意の闇はいつの間にか拡がり続けて家をも呑み込もうとしていた。
章介の顔に影が重なる。

「――存分に犯してあげるから」

章介は直樹の肩に顔を埋めながらにちゃあと笑った――。

END