5

「なんだよっ」
「いや、別に」

顔を離すと笑っている先生を睨んだ。
彼は気にせず微笑んでいる。
むしろ機嫌良さそうにオレの顔にキスをした。
そのこそばゆい感触に思わず口元がにやけてしまう。
先生は飽きずに何度もキスをしてきた。
その数だけ「好きだよ」と言われている様な気がして嬉しくなる。
だからオレは怒っていたのも忘れて先生を求めていた。

「じゃあそろそろ」
「あ…っ」

暫くして先生が体を離した。
それが合図の様にオレは小さく頷く。

カチャカチャ―…。

室内にはベルトの金属音が響いた。
先生は焦る事無くゆっくりと自分のベルトを外す。
オレの方が緊張していてゴクリと息を呑んだ。
その度に先生は額にキスを落として安心させようとしてくれる。

「…小金井」
「ん…」

ベルトを外した先生はオレを机に押し倒すと覆い被さってきた。
半分くらい引き抜かれていたマッキーを一気に抜き取る。

「はぅ…んっ…」

それに僅かな喘ぎ声を放つと深呼吸をした。
腸内は異物が完全に抜き取られてヒクヒクしている。
お尻の穴がヒクついているのが見なくても分かって恥ずかしい。
先生はお尻に入っていたマッキーを見せつけるように舐め上げた。
それに恥じらいを覚えたオレは返す言葉もなく顔を赤く染める。

「お前、こんなもん挿れていたんだな」
「っぅ」

だが先生の顔はあくまでも優しいからドギマギするのだ。
否定できずに困っているとそんなオレの手に触れる。

「でも、ま…安心しなさい」
「え?」
「これからはセンセーが欲求不満を解消してあげるから」
「ば、ばばっ…!バカか!!」

思わぬところで殺し文句を言われたオレは、怒る事でしか反応できなかった。
だが先生には全てお見通しのようで、気にせずにうんうんと頷いている。

「可愛い可愛い」
「あ…もっ…!ひゃあっ」

先生はそんなオレの反応に乗じて自分のペニスを押し当ててきた。
それはもうオレと同じくらいに熱くなっていて、触れただけでこちらの体温が上がる。

「ん―っ!んんっ……!!」

先生はゆっくりとオレの中に埋めてきた。
ヒクついていたお尻は一気に広がり新たな異物の進入に戸惑っている。
先生の顔は先程よりずっと真剣で厳しい顔をしていた。
彼もまたオレの中がキツくて大変なのだろう。
それでも止まる事をしないソレはぐぐぐっと挿っていく。

「あっ…こんな奥っ…知らな…!」
「はぁっ、当たり前だろう?さすがにマッキーと同じぐらいだったら男として泣くぞ」
「やぁっ…ふぅ、だって…」

先ほどまで入れていたマッキーより奥にまでやってきた。
それは未知の領域だ。
普段入れると言っても指やマッキーなどのペン類ぐらいなわけで…。
こんなにも太くて長いものを挿れた事がなかった。
だから新たな感覚に身震いが止まらない。

「ひぅぅっ…ゆっくりっ、はぁ…」

体の奥が無理やり押し広げられていく。
その衝撃は小さな体には酷だった。
そのまま体が裂けてしまいそうな錯覚を覚える。
だけど体は痛みと共に快楽を知っていた。
背中がゾクゾクして肌の表面が敏感になっている。
だから先生の吐息が当たるだけであられもない声を上げてしまった。

「くぅ、結構奥まで挿いるんだな」
「あぁっ…せんせっ…」
「小金井のナカ、熱くてキツい」

耳元で囁かれたオレはきゅっとお尻を締め付けてしまった。
その度に先生の性器がビクビクと脈を打つのが分かる。
それは幸せな感触だった。
今まさにオレは先生と繋がっている。
違和感と痛みに阻まれても嬉しくてたまらなかった。
だから自分の下っ腹を撫でてその感触にじっくりと浸る。

「はい…った?…」
「ああ」

先生の動きが止まった。
オレが問いかけると彼は嬉しそうに頷く。
先生の性器を根元までしっかりと咥え込んだオレのお尻は満足げだった。
ずいぶん奥まで犯されてお腹がいっぱい。

「ふぁ…お腹いっぱい…」
「いっぱい?」
「ん、いっぱい」

先生が聞き返してきたからオレは素直に頷いた。
二人で微笑みあう。

「じゃあ美味しい?」
「なっ――…ばばば、ばかっ…!」
「俺は美味しいよ。小金井の体」
「だっ…だからっ…その問題発言どうにかしろって」

先生の言葉がいちいち恥ずかしくて身を縮めた。
からかわれているのか本気なのかイマイチ分からない。

「先生変だっ」
「変?」
「だって先生の言葉、いつもの先生っぽくない」

可愛いとか、好きだよとか。
他にも沢山の甘ったるい言葉に動揺を隠せなかった。
先生の口から放たれるセリフはどれも彼らしくない。
だから思い切って言ってしまった。
「変」だって。

「お前なー」
「なっ…なんだよ」

すると先生はオレを見下しながら呆れたようにため息を吐いた。
オレの手を引くとその指先ひとつひとつにキスをする。

「ん、んっ…だからっ…こんな…」

敏感な指先は彼の唇の感触に過剰な反応を示した。
その感覚がこそばゆくてドキドキが止まらない。

「こんな?」
「はぅ…も、許しっ…」

先生は上体を起こして自分のネクタイを強引に緩めた。
胸元までキッチリ止められていたボタンを上から三つほど外す。
その仕草は荒々しくて男らしかった。
いつもは先生という肩書きの元に守られているが、彼だって大人の男なのだ。
オレは先生の方をチラ見しては恥ずかしくて目を反らす。
教壇に立つ先生とは似ても似つかない姿だった。

「小金井」
「はぁ…はぁ…」
「俺だって男だ」
「ん…」
「仕事とプライベートぐらい分けているに決まってるだろ?教師なんだから」

先生はそういって腰を動かし始めた。
その度に机が鈍い音で軋む。

「あっ…んぅ、じゃあ…いつもはずっとこうなの?」

オレは喘ぎ声を我慢しながら必死に問いかけた。
先生はそれも違うと首を振る。

「小金井の前だけ」
「え?」
「小金井の前だけって言ったら、変か?」
「っぅ!」

オレは一瞬にして顔が真っ赤になった。
その言葉の意味に気付いてしまったら何も言い返せなくなった。
それは特別だという証。
オレの前だけ先生はこんな風になってしまうのだ。
それが凄く嬉しくて、恥ずかしい。
変、なんて言えるわけない。
すると先生はオレが「変だ」と言い返さないのを分かっていて意地悪そうに笑った。
そういうところが違うって言っているのに。
これじゃいつまで経ってもキリがなかった。
だからオレは大人しく納得する事にする。

「…ん、変じゃ…ない」

そういう些細な部分でオレを喜ばせようとするから困ったものだ。
これが大人の恋ってヤツなのか。
免疫がないぶん、いちいち戸惑って赤面してしまう。恋愛って大変だ。

「よしよし。いい子だ」
「んくっ…」

先生は満足そうに笑って頭を撫でてくれた。
その手のひらの感触に酔いながらオレは突き上げられる。
最初は浅くゆっくりと抜き差しをしてくれたから体に負担は感じなかった。

「んっ、んぅ、ぁ…っ」

その仕草に彼の気持ちが伝わってきてオレも素直に感じてしまう。
大切にされているって嬉しい。
強引ながらも見え隠れする先生の気遣いはオレの心に熱く響いていた。
だからもっと欲する。

「せんせっ…いいよ?…オレで、気持ちよくなって?」
「小金井…っ」
「あ…っんぅ、ふぁっ…!」

先生は先程より激しく腰を使い始めた。
ガタガタと揺れる机は一層音が大きくなる。
突かれる事に慣れていないオレのお尻は先生の性器に夢中になった。
必死になって彼の形を覚えようとする。

「はぅ、奥きもちい…っ」

太い熱棒は容赦なくオレの内壁を擦り上げた。
その表面が焼け爛れてしまうかと思うほど熱い。
腸のどこまで入ったか定かではないが、体の中心を突き上げられている気分だった。

「くぅ…せんっ…せっ!あぁっ…」

先生は時に激しく、時にねっとりと嬲る様に責めてはオレの体を味わっている。
真剣な顔に流れる汗が眩しかった。
行為が激しさを増すほどに彼の呼吸も乱れてくる。
うっすらと滲み出た汗は頬を伝い首筋まで流れていく。
その色っぽさを視界の端に捉えながら胸を高鳴らせた。
襟を乱して晒した首元がやけに美しい。
どんな時も服装の乱れを許さない彼がオレだけに見せてくれているのだ。
それがさっき言ったオレの前だけという意味に繋がると思うと心は止められない。
それこそが恋人の証なのだ。

「あ、はぁ…せんせ…ぃっ…」

……誰にも秘密の恋。
甘酸っぱくて背徳感の漂う淫靡な響き。
こんな彼を知っているのはオレだけなのだと思うと嬉しくてたまらなかった。
それは優越感と独占欲で占められている。
クラスのみんなは知らないし、これからも知ることはない。
こんなにも甘い言葉を囁き、いやらしく触れる彼の手を。
それはオレだけの特権だからだ。

「はぁっ…んんぅ、ふぁっ…」

愛しくて胸が詰まる。
だから先生のネクタイをぐいっと引っ張った。
それにつられて降りてくる彼の顔に唇を寄せる。

「ん、すき…すきっ…」
「小金井、小金井っ!」
「はぁっ…すき…ぃっ…」

キスをしては何度も好きだと呟いた。
普段なら素直に言えないことも今なら何度でも言える。
舌を絡めて先生の唾液を飲んで、好きだと言って、じゃれあって。
段々それが曖昧になってくるとキスをしながら言葉にならない声で囁いた。

「んぅ、すきぃっ…ちゅ…ぅん…」

涎がベトベトでお互いに糸を引いている。
それでもしゃぶりついては腰を揺らした。
先生はオレと机の間に手を差し込むと後頭部を包み込むようにして引き寄せる。
乱れた髪の毛と指の感触に体が痺れた。
だが角度を変えては貪りつく先生の唇から逃れられない。
気持ちよくてふわふわと夢心地に浸りながらその甘いキスに酔う。
先生も激しいキスのせいで僅かにメガネがずれていた。
それが余計に色っぽくて胸がきゅんとしてしまう。

「ふぁ、はぁ…はぁっ…」

やっと唇が離れた時には口元が赤く腫れていた。
うっとりと見惚れていると触れるだけの優しいキスを二回もしてくれる。

「俺も好きだよ」
「はぁ…はぁ……へ?」
「キスに夢中になって言えなかったから」

その言葉に我に返ったオレは、ボボボッと火を噴きそうなほど顔が熱くなった。
何度も好きと呟いた自分を思い出して恥ずかしくなる。
だが未だ至近距離に居た為、その視線から逃れることが出来なかった。
甘んじて彼と見つめ合う。
必死な自分の顔が可笑しかったのか、先生は軽く笑ってコツンと額を合わせた。

「そういう小金井も好き」
「うー」

敗北感を感じるのはなぜだろうか。
オレがお子チャマだからか。
ちょっぴり悔しくて口をへの字に曲げる。
すると先生はもう一度キスをしてくれた。

――気付けば外はもう日を落とし始めていた。
未だ資料室の隅で体を繋げていたオレ達は独特の匂いの中で獣みたいに交わっていた。
窓縁に手を置いて後ろから突き上げられていたオレは今何時かも分からずに夢中になっていた。

「あぁっ…んぅ、ふ…」

荒く息を吐くと窓が白く霞む。
手で触れると水滴がついた。
窓の外はそろそろ暗くなり始めて、電灯が付きはじめる頃だ。
遠くの方でうっすら見える明かりは幻想的で美しい。
滅多にこんな時間まで居残りなんてしないせいか眼下に広がる景色は新鮮だった。

「あっ…んぅ、もうっ…ちくび、ダメっ…」

オレが窓に張り付いているのをいい事に先生はお尻を犯しながら乳首を弄んでいた。
そのせいで赤く色づいたそれはちょっと変。
最初は気持ちよくも何ともなかったのに、嬲られ続けたせいで敏感になってしまった。
今じゃちょっと抓られただけで変な声が出てしまう。

「はぁ…っ、だって後ろから見てるとつい触れたくなる」
「…やぁ…せんせ、明日もっ…体育があるのにっ…」

それだけじゃなく先生は後ろから至る所にキスをして吸い付いた。
首筋や背中、脇の下まで彼の印が付けられている。
その度にビクビクと体は震えて腰が砕けそうになった。

「大丈夫。見えないところだから」
「ひぅっ…そういう、問題じゃっ…ない、だろっ…」

あの先生が自分の生徒にそんな事をするなんて信じられない。
明日の事を思うとそれだけで心臓が破裂しそうだ。
沢山の痕を付けられたままオレは体操着に着替えなければならない。
先生にその姿を見られると思うとそれだけでイケナイ気分になってしまいそうだ。
きっと火照った体を制御する事なんて出来ない。
熱くなった自分の体が嫌でも想像できて戸惑う。

「はぁっ…ん、く…ふぅっ…」

今からもう堪らなくなっていた。
オレのお尻はそれに反応してぎゅぎゅっと締め付ける。
先生はそれを分かっていて荒々しく穴を犯した。
突き上げるたびにオレのペニスがぷるんと揺れて汁を撒き散らす。

「それより」
「ふ…ぇ…?」
「そろそろ危ない時間だぞ。声を抑えないと廊下を歩いてる他の先生に聞こえるかもしれない」
「えっ…えっ!」
「もしかしたらここに入ってくるかも」
「!!」

そう言われて反射的に両手で口を押さえた。
喘ぎ声を抑えようとする。

「んーっ…んんっ…!」

だけど先生の動きは相変わらず容赦なくて。
まるでオレの腸内を破ってしまいそうなほど激しく突き上げた。
奥はもうトロトロで先生のいいなり状態なお尻はだらしなく拡がって欲している。
一突きされる度に気が狂いそうなほど気持ちよくて息が止まった。
内壁は擦れて焦らされて待ち望んでいる。
熟した果実のように柔らかく解れていた。

「んーんぅ、だ…めっ…声、出ちゃ…」

そんな状態で声を抑えるには限界がある。
只でさえオレの下半身は蕩けていて力が入らなかった。
膝はガクガクと震えて、窓にしがみ付く事でなんとか立っていられるのだ。
必死につま先立ちした足元が痛々しい。

「小金井…っ」
「あぅっ、せんせ…っ…!」

先生はそのままオレを後ろから抱っこした。
傍にあったイスに座るとそのまま腰を動かす。
膝を開かれ持ち上げられたせいで先生と繋がっている部分が丸見えになった。
体勢はずっと楽になったがこれじゃ恥ずかしい。

「んぅ、見えるっ…やだっやだ!」

先生の大きなペニスがオレの拡がった穴に出たり入ったりしている。
こんな大きなモノがスムーズに挿入ると自分でも感心してしまいそうだ。
だがそれは冷静な時だけである。
今のオレは全身性感帯と言っても過言ではない状態だ。
見るもの感じるもの全てがオレを煽る材料でしかない。

「意地悪すん…なっ…てば」
「こら、暴れるなって」
「だって…先生っ、意地悪だ…!」

只でさえ声を抑えなきゃいけないのに、わざわざこんな体位にするんだからずるい。
オレは足をジタバタと動かして必死に抵抗した。
そんな幼稚なオレの行動に苦笑しながら先生が腰を掴む。

「わわっ…」

そのまま上に持ち上げるとペニスを抜いてくれた。
振り返れば先生がポンポンと膝を叩いている。

「ほら、来なさい」
「えっ!?」

それは自ら先生の膝に乗って挿入しろということなのだろうか。
思わずたじろいでしまった。
しかし有無を許さない先生は「早くしろ」とオレを急かす。

「オレが自分で…挿れるの?」
「だってあの状態が嫌だったんだろう?」
「そりゃ…」

そうだが、未だ自分からペニスを入れる自信はなかった。
さすがにあんな大きいものを自ら入れるというのは勇気がいる。

「ったく、お前はー」
「うわっ…!」

見かねた先生がぐいっと腰を抱き寄せた。
体に力が入らないオレはそのまま強引に先生の膝に乗っかる。
対面したままオレの腰を浮かせると、自分の性器を穴に押し付けた。

「あっ…あっ…んんっ」
「くっ…」

「やらっ…はいるっ、はいっちゃ…おしりっ、はい…ちゃ…あぁあぁっ」

あとはもう体重に任せれば勝手に挿入された。
汁でぐちゃぐちゃだったお互いの性器のお蔭で楽に奥へと入っていく。

「くぅ…ぅんっ!」

オレは先生の腕の中でビクビクと震えた。
必死に彼のワイシャツを掴む。
根元まで入った時には奥をコツコツと擦り付けられて死んじゃいそうだった。
見下せばオレの幼いペニスが汁まみれになっている。

「……好きだよ」

オレが落ち着くのを待っていたように先生はぎゅうと抱き締めてくれた。
先生の膝の上に座っているせいか、身長差が緩和されていつもより間近に感じる。
背中に回された腕は強くて逞しかった。
オレは胸元にうずくまりながら、その言葉を噛み締める。
(なんかこれって恋人同士っぽくていい感じじゃない?)
さすがにそのまま口に出すのは躊躇われるけどそう思ってみる。
すると勝手に緩んでしまう口元を止められない。
オレは先生に見えないように、その胸に擦りついた。
そうして好きな人の匂いとか感触を確かめようとする。

「お前ってヤツは……」
「ん、なんだよ…」
「俺に変って言うけど、お前も十分いつもと違うぞ」
「えっ…」
「だから、絶対にその顔は俺以外に見せるなよ」
「なっ……なっ――!!」

よくもまぁ、そんなセリフを恥ずかし気もなく言えたもんだ。
オレの方が照れ臭くなって言葉を失う。
声が出てこなくて口をパクパクさせるだけだった。
まるで水面に出てきた金魚が息をするみたいで変。

「ばばば、ばーか」

やっと出てきた言葉は見るからに動揺と恥じらいを含んでいて、言った後に自分で後悔した。
先生はまた突き上げを開始する。
オレは夢心地に浸りながら先生のペニスに酔いしれた。
このまま蕩けてしまいそうなほどに甘く、甘く澄んでいる。

「んんっ、ふ…」

先生のワイシャツにしがみ付いて顔を埋めた。
そうして喘ぎ声を抑えようとする。
この匂いを嗅いでいるだけでイってしまいそうだった。
汗と洗剤の匂い。
自分が匂いフェチだという自覚はないが、嗅いでいるだけでたまらない気持ちになる。
もうそろそろ限界は近かった。

「ふぅ、ふぅっ…せんせ…っぅ…!」

いやらしい水音をたてながら交わる下半身はドロドロで凄い事になっている。
二人は重なって不規則に腰を動かしていた。
グリグリと内壁が擦れて頭が真っ白になる。
オレは心の拠り所を求めて先生の手を握り締めた。
じゃないと正気を保てそうになかったからだ。
理解しているのか、絡める様に手を繋いでくれる。
その手の強さだけが朦朧とする意識を呼び戻してくれた。

「も、せんせっ…オレっ、オレ…!」
「はぁ、こ…がねいっ…顔、見せて…?」
「んぅ、ちゅ…ふっ…!」

顔を上げると貪るような先生の唇が落ちてきた。
オレは僅かに唇を開いてそれを受け入れる。
先生は今日何度目かも忘れた甘いキスをオレにくれた。

「くぅ…んんっ、ちゅ…ぅ…ぷ…っ」
「ん、可愛いよ…っ、俺の小金井っ…」
「ひぁっ…せんせっ、先生っ…!」

絡んだ手が振り解けるのを恐れるように何度も繋ぎ直した。
その度にキスをしてお互いの気持ちを確かめ合う。

体はもう止まれなくて、イスがガタガタと揺れるのもお構い無しに乱れた。
長く続いた淫行はそろそろ終焉を迎える。
先生のペニスはオレの腸内で震えていた。
生々しく蠢くソレはダイレクトに伝わってきて奥歯を噛み締める。
まるで先生から精液を搾り取るようにお尻を締め上げた。
それに合わせて先生の荒い吐息が耳を犯す。

「んっ、んぅ――!!!」
「くっ」

すると瞬間、腸内が溶けたみたいに熱くなった。
キスをしていた口元からはくぐもった声しか出てこない。
ドクンドクンと脈打つのペニスから直腸に勢い良く射精されたのだ。

「ぷはぁ…っっ…ふぅぅ―…!」

オレはその不思議な感覚に我慢できなくてぎゅうとしがみ付いた。
同時に自分がイっていた事に気付く。

「ひぁぁっ…ぁっ…!」

だが先生の射精は止まらなかった。
必死に抱きつくオレに構わず腸内を汚していく。
オレは体を震わせながら何とか耐えようと唇を噛み締めた。

「くぅ…っんっぅ……」

汚されている。
自分の体の中を先生に汚されている。
奥の奥まで彼のモノでいっぱいにされていく征服感に心は平伏した。
それは言葉にならない衝撃。

「まだ、出て……」

体は陸に上がった魚の様にピクンピクンと痙攣していた。
心臓の音に伴わない呼吸が肺を追い詰めていく。
自身から漏れる声はどれもいやらしくて自分が放ったとは思えなかった。
海老みたいに上体を仰け反らせてヒキつく体を解放させる。

「ちゅ…」
「はぁ…んっ!」

無防備だった首筋に先生は吸い付いた。
最後の一滴までお尻に流し込んだ彼はようやくその呪縛を放とうとする。

「も…そんな出したら…オレっ…ダメなの…に…っ」

やっと出てきた声は掠れていた。
熱くなったお腹をさすりながらオレは先生の胸にもたれる。
二人の間で弾けていたペニスも白濁汁でドロドロになっていた。
それでも繋ぎっぱなしだった手に力を込める。
先生は優しく握り返してくれた。

やっと体が落ち着いてきた頃にはもう辺りが暗くなっていた。
未だ先生の膝の上で抱っこされていたオレは口を尖らせる。

「もうっ、ここが一階だったから良かったものの…」

今考えると結構無謀な事をしてしまった。
見つからなかったからいいけど、もし誰か用があって入ってきたら大変な事になっていた。

「ったくせめて、鍵ぐらい…」
「ああ、鍵ならちゃんと閉めてあるぞ」
「はぁ?」

ずっとオレの頭を撫で続けていた先生は、思い出したように呟いた。
オレは眉間に皺を寄せる。

「だってあの時、入ってくるかもって!」
「あ、あれ嘘だ」
「はぁぁ!?」

先生の言葉に思わずガバッと体を離してしまった。
先生はワイシャツのボタンを止めながら悪びれもせずにニコッと笑う。

「ああ言った方が小金井が興奮すると思って」
「なっ」
「先生がそんな凡ミスをするわけないだろうが」

彼はそういうと今度はネクタイに手を掛けた。
オレは沸々と湧き上がる怒りに手を震わせる。
確かに興奮したけど同じくらいヒヤヒヤしたのだ。

もし見つかったら許されぬ恋どころの話ではなくなる。

「いっ…いつの間に鍵閉めたんだよっ」
「そんなの最初に決まってるだろ。お前を見つけた時だよ」
「はぁ?なんでっ」

オレは口をへの字に曲げたまま下から睨むように彼を覗きこんだ。
先生はオレの怒りなんて気にするわけでもなく苦笑する。
そしてそっと顎を掴んで唇を近づけた。

「…なんでって…」
「ん、もう…さっきからキスばっか…」
「最初からここで小金井を抱くって決めてたから」
「!!」
「今日こそは絶対に俺のモノにするって」
「っっ!」

教師が教え子になんていう大胆宣言をするのだろうか。
こんな事を素で言ってしまえる先生は天然なのか。
彼の発言には驚かされてばかりだ。
それ以上に嬉しくて恥ずかしいから手に負えない。

「ずりー…」

オレはまだまだ言おうとしていた文句を言うのをやめた。
この二面性の激しい教師ともう少しじゃれあっていたかったからだ。
だからオレは結び途中の彼のネクタイをぐいっと引っ張る。

「――あ、先生。もう他の誰かにネクタイ触らせるなよ」

するとオレの言いたかった事に気付いたのか先生は嬉しそうに笑った。
ネクタイを掴んでいたオレの手の甲にそっとキスを落とす。

「もちろん。何なら毎朝小金井が直してくれるか?」
「ばーーか」

オレは照れ臭そうにあっかんべーをした。
触れた手が確かな証拠。
素に戻ると可愛げない事しか言えない。
だからオレは自分から先生の手を握り締めたんだ。

――翌日。
昨日の激しいえっちのせいで走る事もままならないオレはいつもより早く家を出た。
早く出て向こうで待っていればいいのだ。
僅かに痛む腰に恥らいつつ校門を越えると下駄箱に辿り着く。

案の定、いつもの時間より早く着いてしまった。

オレは見つからないように下駄箱の死角で先生を待とうとする。
着いた時には疎らだった生徒もいつしか足早に消えていった。
時計を見ると予鈴が近い。

ゴクリ。

ドキドキしながら先生が現れるのを待っていた。
昨日の今日でどんな顔をしようかと考え込む。

「――おはよう小金井」
「え?」

先生の声が聞こえて顔を上げた。
だがここは死角だ。
廊下からこちらは見えない。

「え?あ…!」

まさかと思って振り返ったら案の定先生がいた。
彼はニコッと笑ってオレの頭を優しく撫でる。

「あ…っ、なんっ…」

どうしてオレがここに居る事がバレてしまったのか。
言うより先にぐいっと抱き寄せられた。
悪戯っ子の様に笑った彼は生き生きしている。

「実は先生もお前が来る時間を見計らって職員室を出ていたんだ」
「え?えぇっ…!」
「偶然を装っていたけど、本当はずっとお前を待っていたんだぞ」
「なっ!?…っていうか、オレっ…バレてたの!?」
「当たり前だろう。あんなのバレバレに決まってる」

先生は呆れたように苦笑した。
オレはバレバレという言葉を聞いてガックリ肩を落とす。
今日の今日まで知られる筈がないと思っていた秘密は、秘密でも何でもなかったのだ。
考えてみればあれだけ毎日一緒に登校するのも可笑しい。

「――で、どうする?最近先生を避けまくっていた小金井君」
「なっ」
「仲良く一緒に教室まで行く?」
「っ」
「どうせなら手を繋いで行こうか?」

かぁっ――…!!

気を許していたオレは耳元で甘く囁かれてしまった。
彼の吐息に腰の痛みが疼きに変わってしまいそうになる。
抱き寄せる手つきがえっちで心臓の音がはねあがった。
彼の唇がキスをねだっている。
朝から隙のない男だ。

「ば、ばばっ…ば」
「ば?」
「ばーか!ばーか!!ばーーかっ!!」

だからオレは先生を押しのけて走り出した。
痛む腰に顔を歪ませるが関係ない。
だって一緒に登校なんてしたらニヤける顔が抑えられない!
ただでさえ顔が真っ赤であることはわかっているというのに。

「こらっ、小金井!廊下を走るな!」
「うるせー!!ガリ勉メガネっ!!」

内緒の恋なら誰にも知られてはならないのです。
それは二人だけの大切な秘密。
教師である彼が生徒に恋をしたという不幸。
生徒であるオレが先生に恋をしたという不幸。
恋をするのは不幸な事だ。
――でも。
それがオレに幸せの意味を問い続けてくれるのかもしれない。

END