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「んっふ…ふぁ、ぁ……あっ……!」

このまま中出しされるかと思ったが、途中で汐塚は手を離した。
彼は性器を抜くとベッドに腰掛けて、凛太郎に上になるよう手招きする。
結局汐塚は甘いのだ。
形だけでも凛太郎の望みに合わせようと、自らが下になる。

「ナギっ、ナギ……っ、大すき!」

凛太郎はその気遣いに胸をいっぱいにすると、恐れもせず汐塚の膝の上に跨り、天を仰ぐ彼の肉棒に合わせて腰を落とした。
二人は向き合ってキスをしながら挿入する。
体重によって簡単に根元まで入るが、凛太郎が動くのは難しくなっていた。
これまでしこたま犯され続けて下半身は言うことをきかなくなっていたのだ。
自分から腰を揺するも、すぐに気持ち良さに耐え切れず止まってしまう。

「ひぅ……めろめろにさせるつもりだったのに……っ」

海外の映画で男を手玉に取る女のように、妖艶な腰つきで男に跨ってもてあそびたいのに現実は違った。
必然的に最奥を突かれて、それだけでいっぱいいっぱいになっている。
それどころか腰が震えて使い物にもなっていなかった。

「バカが」
「だ、だまれっ」

目に涙を浮かべながら、必死に腰を揺する。
拙い動きで、自分だけが気持ち良くなってしまう。
想い合っていると分かっていても、心のどこかで無理を言って連れて来たことに負い目を感じていた。
その時に交わした契約はただひとつ。
汐塚の全ては永久に凛太郎のものであること、その代わりに凛太郎の全ては永久に汐塚のものであること。
子どもじみた約束事でも二人には大切な誓いだった。

「もうめろめろだっつーの」

すると汐塚は呆れたようにふっと微笑み、自らの首輪に手を伸ばした。
器用にもそれを外すと、彼は凛太郎の首に巻きつけて金具で止める。

「本当は契約がなくても、もう離れる気なんてねーよ」
「ナギ……」
「恩も責任も感じるな。お前は黙って俺の腕の中にいればいいんだ」

凛太郎には大きすぎる首輪だった。
一番奥で金具を止めてもハマらず、緩んでしまう。

「こりゃだめだ。やっぱ凛太郎専用の首輪を買わないと」
「首、輪……?」
「おうよ。お前も四六時中つけてろよ。そしたらいつでも可愛がってやるからさ」
「……っぅ……」

ずん、と腹の奥が熱くなった。
お揃いの指輪なんていう清らかな贈り物ではなく、汐塚からいかつい犬用の首輪を渡される。
それを思うだけで胸が苦しくなるのは凛太郎が被虐心に弱く、いやらしい少年だからだろうか。

「たっぷり愛してやるよ」
「んぅっ」

ぐいっと首輪を掴まれて耳元で囁かれた。
それだけで体が熱くなって火照りを抑えられなくなる。

「うれし……うれしいよぅ……っ」
「なんだ、嬉ションか?躾のなってない犬だな」
「ふぁ、ああっ……しつけ、してっ……んんぅ、ナギだけの犬にしてっ……!」

凛太郎はちんこから精液を垂らしながらぷるぷる震えた。
まだ挿入しただけなのに興奮に火がつく。
汐塚は満足そうに口角を上げると、思いっきり下から突き上げた。
凛太郎は仰け反る。
そこに汐塚が少しだけ上体を起こすと、先ほどあんなに苛めた乳首にしゃぶりついてきた。

「あ、あああっ、はぁっ、あぁっんっんぅ!」

乳輪をねっとり舌で舐め回したかと思えば、硬い乳首に吸い付いて離れなくなる。
まるで赤ん坊のように貪欲に吸われて夢見心地だった。
交互に口に含まれて、彼の乳首は涎で濡れ、僅かな光の中でテカっている。
わざと音に出してしゃぶるせいで、卑猥な音が耳を犯した。
凛太郎は、汐塚の後頭部に手を回して乱すように撫でる。
ムースのべたつきとツンとした匂いが鼻をついた。
それでも汐塚は胸から離れない。
ひたすら吸って吸って吸い付いて、苛め抜く。
時に歯を立てて噛み千切らんばかりに乳首を咥えるが、あくまでポーズで、慄く凛太郎の様子を見たいだけなのだ。
意地悪したあとは丹念にペロペロと舌が這う。
そのせいで彼の胸元は涎まみれになってしまった。
べっとりと唾液が糸を引きながら、体を汚していく。
まるで肌の上にローションをかけられたみたいだ。
すべりの良くなった体を合わせて、下からの律動に身を委ねる。
凛太郎の会陰はぷっくり膨らんで、汐塚の陰毛に擦れた。
時計を見ればもう二時間近く経っている。
明日も休みとはいえ、夜更かししすぎだ。
きっと朝寝坊して、大好きなパンケーキを食べ逃すに違いない。
焼き立てが美味しいのに、冷めて冷たくなったパンケーキを文句言いながら昼過ぎに食べるのだ。
その後はどこへも行かずに、一日中部屋で汐塚といちゃいちゃしている。
腕枕をしてもらって心地良い胸の中で静かに休日を満喫するのだ。
たとえ父親が汐塚を呼びに来ても離してやんない。
駄々をこねて泣き喚いて一緒にいてもらう。
親だろうと二人の時間を邪魔させないのだ。

「すきすきっ……っはぁ、あぁっナギっ、ちんこいっぱいして!」
「ん、はぁっ……凛太郎っ…」
「くぅっ……ぼくのだいすきなナギっ…!」

凛太郎は激しく抱かれながら、汐塚の体にキスをしまくった。
すでに愛撫しまくった体を飽きもせずに唇で吸う。
あれだけ胸をいじっていた汐塚も、凛太郎の体に印を残すのに躍起になっていた。
二人して蛇のように絡み合い、絶頂へと向かう。
今度こそ腸内を真っ白く染めて欲しかった。
汐塚の精液で汚されることを考えるだけで身が震える。
体は歓喜に沸いて感度を良くする。
早く欲しいからだ。

「あぁっはぁっ、…おしりっ、めくれちゃあ…っ…ナギの大きなちんこでっ……いっぱいエッチなことされちゃ……うっ!」

浅ましいほど突き上げられて淫らに踊った。
いやらしく擦り合わせた結合部が、恥ずかしい音を奏でて行為の激しさを物語る。
奥を突かれると内蔵まで押し上げられたみたいだ。
発達途中の体はずっぽりと大人の性器を咥えこみ、食いつくしている。
下っ腹を撫でて、広がった直腸を感じた。
たまらない。
本当に女になったみたいだ。
穴に突っ込まれて咽び啼いている。
どこを擦られてもいやらしい声しか出てこない。

「はぁっ……なんでこんなにきもちいいんだよっ……!」
「ん、俺と凛太郎の体の相性は最高だな」
「その言い方やだやだぁっ……っ、ひぅ、好きだから気持ちいいんだもんっ……」

今はもう汐塚以外の男に抱かれるなんて考えられない。
髪を振り乱して喘げるのは彼が相手だからだ。

「……僕を犯していいのはお前のちんこだけだっ……!」

潤ませながら汐塚に抱きつくと、彼も背中に手を回してくれた。

「はぁっく、そうだな」

色っぽく顔を歪ませながらニヒルに笑う。
同時に腸内の性器が硬さを増した。
凛太郎の言葉が嬉しかったのか、腰の動きが激しくなる。
次第に余裕がなくなって二人とも口数が少なくなる。
朦朧とする頭でひたすらに喘ぎ、淫猥な気分の中で快感を得る。
まるで壊れた玩具だ。
制御されないままに重なり合った体が上下左右に揺れている。
睦言を囁くよりも肉体で欲望を発散させるのが先で、言葉にならない嬌声が放たれた。
尻の穴は皺が伸びきってだらしない形になっている。
何度も突き上げられて直腸は排泄気管であることも忘れた。
捩じ込まれても、えぐり回されてもアヌスは快感しかない。
肉奴隷になった気分だ。
内壁に擦れるたびに、凛太郎のちんこは精液を溢れさせる。
何をされても気持ち良くて、これがトコロテンなのだと実感していた。
女のように長いオーガズムの中でありったけの快楽に身を委ねる。
放った理性は戻ってこない。
獣のような本能だけでまぐわい、刹那のような刺激に息を乱させる。

「も、だめ、なにも考えられな……あぁっ……!」

体のどこにも力が入らなくて、上に乗ったまま汐塚の体に身を預けていた。
アヌスは泡立ちぐちゅぐちゅと水音を立てている。
ただ中出しされることしか考えていなかった。
弛緩した彼の体に深く楔のような肉棒が突きたてられて、腰をくねらせる。
意図的にではなく、なし崩しのように乱れた。

「んぅっ、くぁ、はぁっ……精液くださ…っ、種付け…してくだ…しゃいっ……」

弱々しい声で希求する。

「僕の…おすまんこにっ、ナギの濃い子種汁…っ、くださいっ!」

恥も外聞もなく懇願すると汐塚は強く抱きしめてくれた。
温かな胸から伝わる脈動に、益々好きな気持ちが膨らんで弾け飛ぶ。

「上出来だ」
「ひ、あぁあぁぁっ、ナギ、好きっ…っいいっ…!」

汐塚は願いを聞き入れるように、最奥を突き崩した。
行き止まりをコンコン突きながら、尻を鷲掴みにして爪を立てる。
荒い腰使いで、奥の奥まで擦りあげた。
激しい摩擦に凛太郎の枯れた喘ぎ声が木霊する。
もう射精されることを分かっていたからだ。
彼はよりどころを求めるように汐塚の着ていたワイシャツを掴む。
締め切った部屋は凄い匂いだ。
二人は汗をかきながら、限界まで蠕動をやめなかった。
狂おしげに頭を振り、腰をグラインドさせる。
このままふたつの体が溶けてひとつに交わってしまいそうだ。
肉襞が震えている。
括約筋が引き締まっている。
体の芯が痛いほど熱くなって、戦慄させながら甘い蜜を零した。

「い、イっ――――!」

汐塚は一度ぐっと固まると、勢いのままに凛太郎を押し倒して、小さな体に覆い被さった。
そのまま強引に根元までねじこむと、腸壁に精液を叩きつける。
今日三度目だというのに物凄い量が射精されて、凛太郎は痙攣されながら中出しの甘美な魅力を噛み締めていた。
びゅっびゅっと、ヒクついた腸壁に容赦なく熱い白濁液がかけられていく。
性器は止まらず精液を吐き出しながら奥を突いた。

「はぁ……ぁ……ぁっ……」

(出されている……っ)
目を閉じ深い吐息を漏らしながら、震える足を腰に巻きつけてもっととねだった。
粘っこい種汁が、腹の奥に溜まっていく。

「く、んぅ……そ、んなに出したら……孕むぞ……」

凛太郎は内緒話のように小声で囁いた。
今この間も注がれ続けている。
最後の一滴を搾り出すまで許さないのだ。

「……もちろん、そのつもりだ」

額から汗を流しながら甘ったるく微笑む汐塚は、胸糞悪いくらい格好良くて、それ以上野暮なことは口にしなかった。
今さら恥らう必要もないくせに視線を彷徨わせて余韻に浸る。
汐塚は凛太郎の前髪をすくと、忠誠を誓うように首輪にキスをしてくれた。

***

その後、さすがにそのまま寝るのは憚れて、二人は風呂へ入ってからベッドに入った。
汚れたシーツや布団は取り替えて、やっと落ち着いたころには暁闇間近である。
希望通り汐塚に腕枕してもらい、その胸にうずくまると嬉しそうに顔を緩ませる。
いつもこれだけ素直だったら誰も手を焼かずに済んだに違いない。

「お、お前はどっちの僕が好きなんだよ」

濃厚な情事のあとで疲れているのに、二人は会話をやめなかった。
こうして汐塚と一緒なのが久しぶりで話したいことがたくさんあったのだ。
風呂に入っている最中もああだこうだと喋り続けたのだから元気である。

「どーでもいい」
「なっ…………」

話題は生意気な凛太郎と素直な凛太郎のどちらが好きかというくだらない話だったが、彼は興味津々に見上げて目を逸らさなかった。
汐塚は眠そうにあくびをしてそう言う。
本当にどうでも良さそうだ。
あまりにあっさりとした返事で、凛太郎は怒ったように頬を膨らませる。
腕枕から顔をあげると、噛み付かんばかりに睨みつけた。
汐塚はそれをなだめるように彼の髪へ口付けて、

「生意気な凛太郎は調教しがいがあるし、素直な凛太郎は可愛がってやりたい。どっちも愛しているからどうでもいいんだよ」

と、色気を滲ませる声で囁いた。
それにはたまらず出かかった文句も喉の奥へ引っ込める。
本当に日々彼の手によって躾けられているようだ。
唯一勝てないのが絶対無二の恋人で、ほとほと降参する。

「ふん。まぁそういうことにしといてやる」

本当は嬉しいくせに、負けず嫌いで何とか平常心を保ち可愛げなく鼻を鳴らす。
凛太郎はもぞもぞと汐塚の胸に擦り寄ると「おやすみ」と呟いて目を閉じた。
その三秒後には健やかな寝息が聞こえてくるから笑える。
なんて愛らしい生き物なんだろう。
凛太郎は深い眠りについても汐塚を離すまいと彼のパジャマをしっかり掴んでいた。
小さな手の割に力が強くて、ちょっとやちょっとでは引き離せない。

「おやすみ。私の坊ちゃん」

汐塚は空いた手で抱き寄せると、無防備な寝顔にキスをして目を閉じるのだった。

 

 

END