7

「こんな男でいいの?」

成瀬の倍生きているのに、彼より未熟で幼稚な俺はその気持ちに応えていいのだろうか。
応えられるのだろうか。
リハビリ代わりじゃない。
人として好き合っていいのだろうか。

「これからも子どもっぽい嫉妬をいっぱいするかもよ。成瀬君を傷つけて泣かせちゃうかもよ?」

俺は成瀬の頬を包み込んで、確認するように表情を覗き込んだ。
シャワーの音さえ気にならなくて、静かな室内にはぼんやりと人の声が聞こえる程度だ。
時折更衣室のドアが開く音がしたが、着替えてさっさと出て行くのか、シャワー室の方まではやってこなかった。
だから白々とした蛍光灯に照らされながら俺たちは真向かうことが出来た。

「すき……っ、好きです」

すると成瀬は求めるように俺にしがみついてきた。
胸元が熱いのは彼の火照った頬が触れたからだ。

「あはは。ちゃんと俺の話訊いてた?」

擦り寄ってきた背中に手を回してポンポンと軽く叩く。
成瀬は俺の問いに何度も頷いた。
狭い室内には激しい水音と僅かな塩素の匂いが鼻につく。

「……おれも同じです」

成瀬は引っ付いて離れず、心持ち濡れた瞳で訴えるようにそう告げた。

「お、おれだって……嫉妬していたんです」
「誰に?まさか雅ちゃんたち?」
「……っ……」
「ありえないって。だって彼女は――」

(他に好きな人がいる)
そう言おうとしたら抱きつく手が強くなった気がした。
珍しい意思表示に、俺は声を失って表情を改める。

「ぜ、全部です」
「は?」
「秋津さんとお話しする人みんなに嫉妬しますっ。ホントはおれ以外の人を見るのも嫌です!」
「見るって……」
「今日だって渚さんと並んでいる姿が絵になって悔しかった。秋津さんが格好良いなんておれが一番思っていることなのにっ、そう言えなくて苦しかった。やり取りを見ているだけで顔の筋肉が硬直して、心配かけないようにって必死に笑おうとしたのに……また秋津さんにご迷惑をおかけしちゃいました……」
「…………」
「そのくせ気にしてくれていることが嬉しくて、連れ出されて喜んでいたんです……こんなやつ嫌われて当然です……」

いつだって成瀬は気持ちが隠しようもなく顔に表れる人だ。
だからあの場を取り繕うと必死で表情を作ろうとしていた。
(全然出来てなかったけど)
今だってそうで、当惑して泣くような顔に、そこまで追い詰めていたのかと胸が軋む。
でもそれ以上に気持ちが綻んで、成瀬には悪いと分かっているのに表情筋が勝手に緩んだ。
俺は上を向いた成瀬の額にキスをすると、

「嫌いになるわけない!」

めいっぱいに力をこめて抱きしめる。
やっぱり成瀬は可愛い。
成瀬の体は九十パーセント以上可愛いで出来ていると言っても過言ではないほど愛らしさが詰まっている。
どうしてだろう。
やきもちなんて面倒だと思っていた。
男友達と遊んでいるだけなのに浮気を疑われたり、些細な噂を真に受けて俺の言っていることを信じてくれなかったり。
女は不可思議な生き物だ。
可憐で愛らしい存在である一方、醜く卑しい根性で図々しく踏み入ってくる。
嫉妬に対して鬱陶しいと思うことはあっても可愛いなんて思わなかった。

「……どうして、成瀬君だけなのかな……」
「え?」

もうわけが分からなかった。
少し成瀬が元気ないだけで気になる自分。
些細なことに嫉妬している醜い自分。
なのに嫉妬されて喜んでいる自分。
成瀬のどんな表情も言葉も一粒残さず掬いあげたくて、だからひと時も目が離せない――離したくない。
悔しい。
ミイラ取りがミイラになってしまったような気分だ。
息が詰まるほどきつく抱きしめて彼の鼓動を聞く。
成瀬は恥じらいと困惑を滲ませながら大人しく身を預けてきた。
(こんな少年に……)
俺は振り回されているんだ。
ずっと好き勝手に振舞っていたのは自分だと思っていたのに、気付けば俺の方が振り回されて成瀬の言動に一喜一憂している。
なのにこうして胸に抱いていると、そんな情けない自分も愛しく思えてくる。

「ね、ここで抱いていい?成瀬君のことめちゃくちゃにしたい!」
「秋津さ……ん、んぅ!」

俺は成瀬の唇を奪うと押し倒した。
初めてのキスに頬を染める彼に再び口付けて、股を強引に開かせるとその間に自らの体を押し込む。
成瀬の尻は餅のように柔らかで弾力あり、俺の勃起したペニスを難なく受け入れた。

「んぅぅぅっ――――!」

キスをしているお蔭で成瀬の悲鳴はくぐもった声で終わった。
多少乱暴にも思えるくらい腰を押し付けて、彼の体にのしかかり根元までねじ込む。
ぎゅうぎゅうに詰まった内壁は押し出さんばかりに締め付けて俺の精を搾り取ろうとした。
それに抗うようにさらに奥まで突き上げて成瀬の体を征服する。

「ひぅ……ひぅ…っく……」

成瀬の体は蕩けきっていて、挿入されただけで射精していた。
動こうにも手足が痺れて肌は敏感になっている。
間近で触れた吐息にも感じて甘い声を漏らした。

「あー、とうとうキスしちゃった」
「あ、きつ……さ……」
「キスだけはって思ってたのに」

何度セックスしようとも体中を唇で愛撫しようとも、成瀬の唇にキスをすることだけは避けていた。
ファーストキスの相手が俺で後々悔やむのではないかと思ったからだ。
いや、俺自身もどこか線引きをしたくてキスをする勇気がなかった。
いつでもノーマルに戻れるよう言い訳代わりにしていたのだ。
でももういい。
戻れなくていい。

「これで俺と成瀬君は本当の恋人になっちゃった。あとでファーストキスの思い出を返せって言っても返さないからね」
「そ……なっ、おれは嬉し……ずっと憧れて――んぅ、っん!」

成瀬は俺を喜ばせるようなことばかり言うから、お返しと言わんばかりに激しく口付けてやった。
喋り途中なのを遮るように唇を奪い、するりと彼の咥内に舌を挿入する。
成瀬はその感触にびくりと震え自分の舌を引っ込めるが、俺は逃さずに責めたて追いかけた。

「ちゅっんぅ、っんぅ…んっふぁ……」

次第に強張っていた体が緩んで余計な力が抜ける。
逃げ惑っていた舌を絡め合わせて吸い付くと、びくびくと痙攣を起こしていた。
蕩けるような感覚に戸惑いながら酔いしれているのだろう。
内壁の温度が上がったような気がした。
じんわり熱く包み込まれて極上の穴は溶けそう。
ここまで成瀬のアヌスを仕立てたのは自分だと思うと妙に誇らしくて愛着が湧いた。

「ちゅっ、はぁ……ごめんね。もっとロマンチックなファーストキスをあげられたら良かったのに」

俺も久しぶりのキスに夢中だった。
口の中を舐め回すと下半身がずんと重くなる。
喋りながらキスをすると涎が糸を引いた。
そのさまがあまりにいやらしくて体が火照る。
もしするならムードを高めてからと決めていたのに、衝動のままに唇を奪ったなんて獣みたいだ。
でもそれくらいたまらなかった。
こんな気持ち我慢したら気が狂ってしまう。
どこにぶつけていいか分からないまま、その艶やかなぷるんとした唇に目がいってしまった。
途端に尻の穴だけでなく成瀬を全部自分のものにしてしまいたいと思った。
理性なんてとっくに吹っ飛んでなくなっていた。
あとに残ったのはどろどろに溶けた欲、欲、欲。
欲望の塊となった俺は、こんな狭いシャワー室の中で成瀬のファーストキスを蹂躙した。
彼くらいの歳ならばキスに淡い憧れを抱いていてもおかしくないのに、始めから性的なキスを求めた。
舌で犯し、唾液を交換して飲ませてやった。
もう唇を重ねるだけのキスでは欲求が満たされない。

「ふぁ、秋津さんのキス……おれの知ってるのと全然違って……はぁ、はぁ……」
「苦しかったよね?」

息継ぎの仕方さえ分からないのに酷なことをしてしまった。
詫びるように顔中に口づけると、彼は気持ち良さそうに目を細め、

「いいんです。おれのこともっとめちゃくちゃにしてください」
「成瀬君ってば何言ってるか分かってるの?」
「んく……だって、秋津さんにちゅうされると、頭がぼーっとして……ほわほわして、はぁっ……おれの体とけちゃいそうになるんです」

成瀬の緩んで少し開いた唇と、色気づいた眼差しが俺の本能に訴えかけてくる。
品なく身をくねらせる姿は無意識に男を誘惑していることに気付かない。
妖艶な姿態に俺はごくりと息を呑んでいた。

「……はぁ、ん……もっとして、ください……」

成瀬からこんな甘い言葉を聞けるなんて、痛いくらい興奮してくる。
滾らせた下腹部に疼きが走った。
キスの余韻に浸る成瀬は淫らで愛らしい。
男であることさえ忘れてしまいそうだ。
水を弾く肌に指を這わすと、辿るように腰を掴み深く息をする。
俺は成瀬の望むがままにぐっと強く一突きした。

「んぅぅっ……!」

彼は刺激に身震いして俺へ手を伸ばす。
その手をとり、力の限り抱きしめてやると抽送を始める。
尻の穴は吸い付いて離れず、引き抜こうとするたび射精しそうになるのを耐えた。
奥歯が歯軋りするほど噛み締める。

「おく…っ、ずんってきた…ぁっ…!」
「はぁっ、成瀬君のお尻は、もう俺専用の穴だな……ん、気持ちよすぎっ……!」

締まった入り口と熟れた腸奥は、思考さえ奪う魅惑の穴だ。
一度挿入してしまえば中毒化してしまう。

「らって…ひぅ、んっ……秋津さんが、いっぱいえっちなこと…するからっ…」
「……しちゃ、ダメなの……?」
「くぅんっ、だめですぅ…っ最近……ひぅ、っ、秋津さ…のこと、考えるだけでお尻が…っむずむずして…欲しくなっちゃう、んですっ…」

甘ったるく啼く成瀬は、普段より舌足らずで幼い。
よほどキスが嬉しかったのか素直な彼の姿が新鮮で愛しかった。
普段の成瀬は顔色を窺うように言葉少なめで、行為中は理性を飛ばすと口数が多くなる。
きっと思考が鈍るせいで、一旦頭の中で止めてから口に出すという機能が壊れて、思いが垂れ流しになるのだ。
それでも恥じらいは健在で、どんなにいやらしい言葉を強要しても躊躇う。
しかし今日はどうだ。

「い、一日中っ…あぁっん……、秋津さんにずぽずぽされること…っ想像して……おちんちんをかたくしちゃう……!」

思いつく言葉を掻き集めるように、成瀬の柔らかな唇は卑猥な言葉を羅列した。
羞恥を捨てて貪欲に欲する。
どうやら頭と口が直結しているようだ。
平常時は絶対に言わないだろう秘密を次々に漏らし、自らを煽る。
成瀬の言うとおり、彼の性器は痛いほど勃起して、ちょっと触れば果ててしまいそうだった。
情欲の言葉を耳にして、俺は彼の肌に吸い付きながら馬鹿みたいに腰を振ると、ここがシャワー室なのも忘れて無理をしてしまいそうだ。
激しく流れ落ちる水音を聞きながら二人はまぐわい荒淫に耽る。
貪るように口付けながら奥を責めると、悦んで成瀬は俺の腰に足を回した。
自分の倍ある体にのしかかられていいように突き上げられる。

「ふぁ、秋津さ…んのっ、おちんちん…すきぃ……っ、大すき…っ…!」

(ああもう、この子はっ……!)
成瀬のことだから正気に戻った時、今の自分の姿を思い出して猛烈に後悔するだろう。
恥ずかしすぎて泣いてしまうかもしれない。
それくらい気が細くて弱い子なのだ。
だけど今は少しでも成瀬の心の内を知りたい。
何を思っているのか、俺をどう思っているのか気になって片思いでもないのにドキドキする。
そのドキドキは嫌な感じじゃない。
とても幸せな胸の鼓動で、幸せだからどんどん欲張りになった。
もっと卑猥なことを言わせたい。
小さな愛らしい口から――成瀬の少し高くて幼い声から聞きたい。
あとで顔を真っ赤にして「忘れてください」と言うところまで容易に想像できて愛しさが膨らむ。

「んっ、俺のどんなちんこ?」
「あちゅくて…っくぅ、っん…かたい…っ、大きい…」
「素直でえらいね。じゃあ成瀬君のどこに入ってる?」
「あぁ、んぅ…っ、すご…っ、おれのお尻いっぱいで…ひぁ、あっ…いじめて…くっひ…っ、きもちよくしてくれる……っんですっ……」
「も、成瀬君エロすぎ……声だけでイっちゃいそう!」

どうしちゃったのと言いたいくらいの大盤振る舞いに俺の方がもたなそうだ。
あまりの快感に腹筋を引きつらせて、荒ぶった息を弾ませる。
二人の声が糸のように絡まって淫らだ。
湿った肌は、これがシャワーの水なのか汗なのか判別できない。
もっとこの快楽に浸りたくて射精感をどうにかこらえると、擦り寄ってくる成瀬の体を離し、シャワー室の壁に立たせて後ろから挿入した。

「やぁ、あぁっんぅ、んぅっ……」

成瀬は一気に奥まで貫かれて、防ぎきれなかった喘ぎ声を抑えながら踏ん張った。
それまでと全く違う場所を突かれて体が弓なりになる。
本当は腰砕けにされて立っているのもやっとなのに、後ろから激しく犯された。
俺は触り放題の無防備な背中にキスをしまくると、手を前に回して乳首やペニスを弄った。
敏感なところばかりを弄られて、成瀬の顔は淫らに歪む。
懸命に声を出すまいと堪える姿はいじめがいがあって興奮した。
蝋のように白く瑞々しい肉体を自分のものにしている喜びに満悦の表情を隠せない。
成瀬と向き合っていなくて良かった。
このだらしない顔を晒さなくて済む。
代わりにうなじに吸い付き内緒で痕をつけた。

「くっ、ふぅ…そんな、パンパンしたら…っバレちゃぁ…あぁっあっ……」
「大丈夫だよ。更衣室は広いし、んぅっ…ここ以外にもあるし」
「ひぁっあっ」
「成瀬君がいやらしい声を出さなきゃバレないよ」
「無理ぃっ……んっ、んぅ…むりですっ……ぅっ」

小ぶりな尻からは結合部分が丸見えで、俺の赤黒い肉棒が突き刺さるたびに成瀬は腰を振って応えた。
アヌスがより見えるよう指で広げれば逃げるように尻を引っ込める。
逃がさないと言わんばかりに立て続けに深く突き上げると、目元を潤ませながら身を預けてきた。
少女のようにか細い声で啼き、未熟な体を震わせる。
そのアンバランスが俺の興奮を沸き立たせてより激しく姦淫に耽るのだ。

「も、出ちゃ、あぁっ…はぁっ、あぁっ」
「んっ俺も……っ、成瀬く……!」
「ひぁ、あっ」

イきそうな成瀬の腰を掴むと、性器を抜いた瞬間にひっくり返した。
それまでバックで責めていたのに、向き直らせて互いの顔を見えるようにする。

「イキ顔はちゃんと拝まなくちゃね」
「ふぁ……」

成瀬の片足を持ち上げて股を開かせると、その間に腰を押し進めた。
尻の穴は物欲しげにヒクヒクしている。

「んぅあっ……はぁっ」

穴に当てるだけでズルリと先っぽが挿ってしまった。
成瀬は、締め付けの強い入り口を硬い亀頭で擦られて、鼻に抜けるような声を漏らしている。
濡れて冷えた体と思えないほど中は熱くて、俺の性器も溶けてしまいそうだ。
ガマン汁でぬめった腸内は挿入をスムーズにさせ、少し強引に押し込もうとすればいとも簡単に根元まで挿ってしまう。
成瀬はペニスの裏側をカリでえぐられて、活きの良い魚のように跳ねた。
悶える成瀬を押さえつけると腕の中に閉じ込める。
彼も俺の背中に手を回したが、短い腕では回りきらず縋りつくようにしがみ付いた。
絶頂間近の成瀬は唇を噛み締め、円らな瞳を細めてちょっと突っつけば泣いてしまいそう。
苦しそうに歪んだ顔をしているのに、ほのかに香る色っぽさは形容しがたく、色鮮やかな表情の虜となって目が離せなくなる。
(こんな顔見られるの俺だけなんだよな)
初めてのセックスの時、あまりにエロい成瀬にAV女優も顔負けだ――なんて思った。
でも終わって冷静になってみると成瀬はやはり年相応の子どもで、行為の最中は興奮していたからそんな風に見えてしまったのだと即座に否定した。
なのにその後抜く時に想像するのは淫らな声で啼く成瀬だった。
でかい胸もなければ丸みを帯びた体でもない。
顔だって彼より可愛い女優なんてザラにいるのに、なぜか成瀬ほど興奮しない。
ティッシュをスタンバイしてDVDをセットして「さぁやるぞ」と意気込んだのに、抜くどころか勃起さえしなかった。
せっかく友達から可愛い女優がデビューしたと新作を渡されたのに反応しない息子に深いため息が出た。
以後そういった類は見ていない。
成瀬のいやらしい顔を思い出して妄想の中で抜いた方が萌えると気付いてしまったからだ。

「はぁっ、秋津さ……っ、秋津さんっ」

(あーあ、いいように抱かれちゃって)
好き勝手に尻を掘られて成瀬は蕩けきった視線を俺に向けていた。
もう口を閉じる気力もないのか、だらしなく開いた口許からは涎を垂らし俺の名を呼ぶ。
息が触れる距離で、ずいぶん刺激的な光景だ。
余裕なく喘ぐ成瀬が可愛くてもっと長く繋がっていたい。
だけど体は限界で、噛み締めていないとすぐにでも射精してしまいそうだ。
ぶつかった肌やその奥にある温もりが胸を痛いくらいに締め付けてくる。
加えて切なげな声が耳を惑わし出すことしか考えられなくなる。

「秋津さん、っはぁっ…い、イっく……イっちゃぁ――!」

成瀬も限界だったようで、腸壁は搾り取るように締め付けてきた。
同時に下腹部が熱くなる。
成瀬のペニスが俺の腹に擦れたまま射精してしまったからだ。
俺は素早く彼の唇を塞ぎ、深い口付けをしながら中出しする。
キスをしながら成瀬のアヌスで射精するのは最高に気持ち良くて腰が震えた。
背筋を電気が走ったみたいに鋭い快楽が駆け抜けて瞬間思考が真っ白く染まる。
(キスってこんなヤバかったっけ……)
舌を絡ませてすすりあげながら、下半身は精液を出し切るまで抽送を繰り返す。
遠慮なく腸壁に白濁液をぶっかけて咥内を犯すと、彼は身悶えるようにくぐもった声を放った。
まもなくして俺の腹がまた熱くなる。

「ひぁ……あ……っ」

ようやく唇を離すと成瀬の顔は涙と涎でぐちゃぐちゃになっていた。
子羊のように震えて呼吸を乱している。
成瀬はあまりに気持ち良くて潮を噴いたようだ。
それが俺の体を濡らしていたのだ。
男でも潮を噴くと訊いたことはあるが、信じていなかったので目を瞬く。

「やぁ、ごめんなさ……っぅ、おれ、おしっこ……かけちゃって……」

成瀬は知るわけもなくその場に座りこむと泣き出してしまった。
匂いや色からいって尿ではないだろうに、潮を噴くことを知らないから仕方がない。
目元を手で覆い「嫌わないで」と嗚咽を漏らす姿は健気で力いっぱい抱きしめてやりたくなる。
そう。
可愛いものは愛でるべきなのだ。

「大丈夫。これはおしっこじゃないよ?」
「ひっぅ…っひっく、でもっ……!」
「それにたとえおしっこだとしても成瀬君のだったら全然嫌じゃない」
「秋津さ……っ」
「我慢出来ないくらい気持ち良かったんだよね?」

俺の問いに成瀬は何度も頷いた。
互いの体は体液まみれで行為の激しさを物語っている。
そんなに感じてくれたら俺だって嬉しいに決まっている。

「俺もすっごい気持ち良かった」
「ほ、本当……ですか?」

成瀬は尻から俺の精液を垂らしながら不安そうに窺ってくる。
彼はきっと自分ばかり乱れていることに負い目を感じているのだ。
そんなことない。
俺だって凄く気持ち良いし興奮している。
むしろ成瀬よりも求めて貪欲になっている。
じゃなきゃいい年した大人が、こんな場所で迫ったりしない。
男を抱いたりなんて出来ない。

「本当だよ」

俺はシャワーのノズルを掴むと自分たちに向けて互いの汚れを洗い流した。
座りこんだままの成瀬に触れるだけのキスをする。

「今俺が何を考えてると思う?」
「え……?」
「これからどうやって成瀬君をホテルへ連れ出そうか――それしか頭にないんだよ」
「――――っ!」
「意味、分かってるよね?」

溺れている。
成瀬が俺に夢中なんじゃない。
いつの間にか俺の方が成瀬に首ったけだったんだ。

 

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