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直樹は物心付く前に両親が離婚していた為いつも一人ぼっちであった。
だからといって自分の為に必死に働いている母親に甘える事は出来ずに寂しい日々を送る。
元々人見知りが激しく体も弱かった為学校の友達は数える程度しかいなかった。
そんな時持ち上がった再婚話に彼は嬉しさでいっぱいになる。
よく再婚すると自分の肉親を取られたみたいで寂しいとか新しい家族を受け入れるのに時間が掛かるとか言われるが直樹は一切そんな事を考えなかった。
むしろ普段の仕事の他に土日もパートに出る母親が無理して働かなくてもいいという安心感と新しく出来る家族に喜びが膨れ上がっていた。
特に再婚相手に年上のお兄さんが居てそれが自分の兄になると聞いた時は嬉しくて夜も眠れなくなった程である。
唯一の不安は自分を疎ましく思わないか、また怖い人ではないかという事ぐらいだった。
しかしそんな不安は初めて会ったお食事会で全て吹っ飛ぶ事になる。
章介は明るく再婚相手である自分の母親にも親切な態度で接してくれた為好印象しか残らなかった。
一緒に暮らし始めてからは尚の事物知りで優しい兄に尊敬の念を抱いていた。
だから人見知りの自分でも早い段階で馴染めたし懐いた。
いつもは独りぼっちの食事も兄がいるだけで楽しいひと時に変わる。
すると兄に懐いた直樹を見て母親は嬉しそうに笑っていた。
彼女としてみれば人見知りで引っ込み思案の子供が新しい家族に馴染めるのか心配であったに違いない。
見事それを克服した様子を見れば嬉しいに決まっている。

とにかくそれ以来章介は直樹にとって一番身近な尊敬する人になった。
そんな兄の姿を自慰中に思い浮かべるのは当然のようなものである。
むしろそこから彼の妄想は一人歩きを始めてしまい余計な煩悩で一杯になった。
ちょっとでも章介に微笑まれたら恥ずかしさと嬉しさで口篭ってしまうし、その大きな体で抱き締められたらどんな気分になるのだろうと考えては夢心地に浸った。
漫画のようにされたい。
強引でもいいから同じようにして欲しい。
始めは射精も夢精も知らなかった少年が猥らな欲望で染まる。
(お兄さんの手……熱い)
無言で登る階段は卑猥な雰囲気でいっぱいだった。
直樹はそれを勝手な妄想だと卑下しながらもその雰囲気に浸っていた。
お薬をくれるといっただけなのにこのまま犯されるのではないかと体を熱くさせている。
まさか自分がそれを望んでいるなんて知られたくない。
そんな変態みたいな事を考えていると章介に知られたら今までの人望が全て崩れてしまう。
本当はお互いがそう思っていたのだがそれは章介だけが知る事実であった。
弟を犯したい兄と、兄に犯されたい弟。
いつの間にか読んでいた漫画の様な関係を築いていたとも知らないで泳がされていた直樹は官能的な匂いにすら気付けなかった。
兄弟の間で漂う甘美な香り。
危険であるからこそ魅せられ惑わされる。

二人は悶々としながら階段を登り章介の部屋へと足を踏み入れた。
今日はバイトの日であったからいつもの漫画は押入れに隠されている。
お互いその部屋には特別な思い出があった為、ギクシャクしていた。
直樹は勝手に本を読んで自慰をしていること、そして章介はそんな弟を覗き見ていること。
第三者から見ればどっちもどっちであるが当事者はそんな客観的に見られない。
特に直樹は何も知らない為に余計な苦労を背負う事になる。
ひとり妄想に走ってしまう自分に「そんなことありえない」と何度も言い聞かせていたのだ。
まさかそれ自体を見透かされているとも知らずに健気なことである。
一方の章介はそんな弟を見て胸を焦がすように熱い気持ちで満たされていた。
いっそのことこのまま押し倒して陵辱の限りを尽くそうかと思った。
どうせ直樹はそれを望み合意の上での行為になるだろう。
だがそれではつまらないと思う自分がいた。
ここまでずいぶん偏った方法を使い弟を調教してきたのだ。
それをこんなところでなし崩しに犯してしまえば何かを失うと思った。
その何かが兄への信頼なのか弟の貞操なのか判らない。
もしかしたらただ単にもっと直樹を焦らして反応を見たいなどというサディズム的な欲求であったのかもしれない。

「ちょっとベッドの上に腰掛けてお尻をこっちに向けて?」
「え!?あ……」
「今、薬を塗ってあげるから」
「ぬ……塗る?」

章介は相変わらず心とちぐはぐな涼しい笑みを浮かべて直樹を促した。
平然とした彼の様子を見れば動揺する方が変だと思い直樹は素直に従う。
(下剤じゃないのかな?)
便秘の薬といえば錠剤だと思っていた。
しかし自分より物知りな兄にそんな疑問を投げかけることも出来ずに大人しくベッドの上に乗ると四つんばいになってお尻を向ける。
そしてその体位になって初めて気がついた。
一気に体が火照って止められなくなることを。
その向きといいその場所といい、まさにいつも自分が自慰をしている時の格好だったのだ。
ドアを背にした直樹はお尻を弄るためにこうしてケツを突き出す。
だが薬を探している兄はあくまでも普段と変わらず何も言って来ない。
だからあの秘密がバレた可能性は低いと思っている。
それでも同じ格好をしていたら興奮するのは仕方がないことだ。
それはまるでパブロフの犬。
特に先ほどの自慰が途中で終わっている点に兄が同じ部屋にいる点を追加すれば体が熱くなるのも当然である。
そうなるとお尻が疼いてたまらなくなった。
まさか章介に何をされるとも知らずにこの危機的状況に愕然とする。

「ごめん、おまたせ」

すると直樹がそんな心情に陥っているとは知らずに章介が軽やかな足取りでベッドサイドへとやってきた。
手に持っていたのは下剤でも何でもなくただの軟膏である。
もちろん弟に知られないようにラベルを隠すような格好で持ったまま近付いた。
案の定この現状に動揺している直樹は盲目的で何も気付かない。

「ちょっと寒いけど我慢してな」
「ひぅっ…お兄さ…!」

章介はあくまでも優しい手つきで直樹に触れるとズボンとパンツを下ろした。
ちょうどお尻が顔を出すぐらいで止めるところが何とも卑怯である。
こうすれば身じろぎも出来にくく動きづらくなる。
そこまで計算した上でたっぷりと弟の体を堪能しようとしたのだ。

「お…兄さんっ…」

現れた少年のお尻はどこもスベスベで触り心地の良さそうな肌をしている。
また元々肌が白いこともありお尻だけみたら同じ男とは思えないほど綺麗な体をしていた。
近くで見た彼の体は想像以上に美しく思わず息を呑む。
咄嗟に頬ずりして舐め回したい衝動に突き動かされたが皮一枚の理性で押し留めた。
(やばいぞ。これ)
あくまでも冷静でいなければいつ化けの皮が剥がれるか知れない。
間近で触れ合う危険性にまで頭が回っていなかった。
こんなにも脆い己の本能につい冷や汗が流れる。
チラッと直樹の方を見れば恥ずかしさのあまりベッドに顔を埋めているのか真っ赤な耳だけが見えた。
どうやら自分の様子には気付いていないらしい。
それを思うと少しだけ救われた気になった。
ここまできて自分の計画がふいになることほど虚しいものはない。

「冷たかったり痛かったりしたら言ってね」
「あ…なにっ…を!」

章介は空元気のような上擦った声で優しく問いかけた。
指先に軟膏を出すと少しだけ震える手で彼に近付く。
彼は弟の尻に触れられる機会に恵まれたことを感謝しながらそっと手を這わした。
片方の手で逃げないように腰を掴み、もう片方の軟膏を出した手で尻の穴に触れる。

「ひぁ……っ」

直樹のアナルは直前まで弄られたせいか僅かに赤くなっていた。
白い肌に浮かび上がる赤色はいやらしくも清純さを漂わせている。
窄みの形もまるで菊の門みたいで苦笑してしまった。
双丘の間に隠れていたソレはいつか見たAV女優の使い古され黒ずんだアナルよりずっと綺麗であった。
緊張の為に小刻みに震えるお尻は愛らしくも被虐心をそそる。
(あーくそう。マジで舐めてえ)
気付けばベッド下に膝を付き直樹の尻を吐息が触れるくらいの至近距離で見つめる自分がいた。
章介は指先で穴の表面に触れたままフリーズしていた。
ヒクつく穴の感触が指からダイレクトに伝わると体が熱くて燃えそうになる。
誘うようなお尻の動きに心を振り乱され本能のままにしゃぶりつきたくなった。
舌でふやける位穴を舐め尽して喘がせてやりたい。
直樹は気付いているか判らないが彼のペニスはもう勃起してガマン汁を垂らしていた。
いつも見ていた小さな愛らしい包茎ちんこは直樹の気持ちを代弁するかのように揺れている。
男のソレを咥えたいと思ったのは生まれて初めてのことで本当に頭が“イって”しまったのかと思った。
だがどうせもう元には戻れないという諦めの境地にまできている。
発端がほんの出来心でもそれを許さない結果がここにある。
ならいっそこの状況を楽しんだほうが得策であろう。
いや、それこそ楽しんだもの勝ちというべきだ。
だから章介は意を決して穴の入り口で止まったままの指に力を入れる。
そしてゆっくりと直樹の腸内へと挿入した。

「はぁ…んんっ……」

彼はその衝撃に若干体を仰け反らせた。
だが変な声が出てしまわぬように必死に口元を押さえている。
それほどにアナルへの刺激に慣れていたのだ。

「い、今兄さんがお薬を塗ってやるからな?」
「んっ…おにいさ…ぁっ…」
「あと少しガマンしているんだぞ」
「ふぁ……」

トイレでアナルを弄っていたのは明白であった。
なにせ章介の指が難なく一本根元まで入ってしまったからだ。
だがさすがに直樹の指じゃそんな奥まで届かないのか忙しない吐息が漏れている。
直樹の腸内は熱くトロトロでありながら奥はキツク指を締め付けていた。
内壁の感触がなんとも気持ち良くこれが自身のペニスであったなら極楽であろうと妄想する。
その締め付けが女の膣とは違い独特な動きで章介を魅了した。
まるでポンプのようにぎゅ、ぎゅっと縮み外へと押し出そうとする。
それこそ正しい排泄運動という奴なのかもしれないが予想以上にイイ感触でずっと穴に突っ込んでいたかった。
だが表面上の名目は薬を塗ってやるということであり章介にはやるべき仕事がある。
また分泌液が出ないこともあり滑りを良くするには軟骨を塗ってやらねばならない。
だから内壁をグリグリと擦り上げては指を抜き薬を足すと再度穴に突っ込む。
その繰り返しをしばらく続けていた。

「ん、んぅ…ふっ…はぁっ」
「苦しいか?もうちょいだから頑張れ」
「ひぅ…がんばり…っ…ますぅっ…」

章介は直樹の喘ぎ声をあえて苦しいための呻き声として受け入れた。
その事実を知らない彼は健気にも堪えて唇を噛み締めている。
だが唯一の不満はそんな弟の恥辱に満ちた顔を見られないということであった。
ベッドに顔を埋め喘ぎ声を我慢しているなら顔を上げることは出来ない。
またこうして執拗に彼のアナルを弄くりまくっている顔を見られるのも困る。
それが不純な動機であることが一発で判ってしまうからだ。
だから結果としてお互いこの格好で事に及ぶことが一番リスクが低かった。
だが、そうと判っていても顔を見たいのはどうしようもない。
それこそが独占欲であり支配欲の要となっていたのだから。

「はぁ…ん、んっんぅ…」

直樹は徐々に声の甘さを抑えられなくなっていた。
必死に口篭るが余計に男心をそそるような声しか出ない。
それは章介の触り方が慣れていくのと比例するかのようだった。
確かに章介は女性経験しかないわけだし、アナルを弄くるという行為自体初めてである。
彼は弟の穴を実験台のように好き勝手に弄っていた。
直樹の反応を見ては彼の弱い部分を探ろうとしている。
最初は興奮し少しだけ乱暴だった指も的確に弱い部分を擦っていた。
今まで直樹の指では届かなかった部分を突かれては声にならない声をあげる。
ちょうどソコこそが前立腺と呼ばれる部分であり快楽のキーポイントであった。
人の体とは不思議なものでその一点を突かれるだけで体中に電撃が走ったような衝撃に貫かれてしまう。
それまでの自慰では考えられないような快感と実際に兄の手によってそれがもたらされている幸福に直樹は理性を失いかけていた。
そのせいで声が抑えられない。
(お兄さんの指……きもちい、気持ちいいよう)
もう便秘だとか兄が薬を塗っているだけとかどうでも良かった。
前立腺を突かれると自分のペニスを内側から刺激されたみたいに体に響く。
それだけで十分だった。
みっともない下半身を兄に曝し女のような声で喘ぎ貪欲に欲する。
そんな痴態にすら違和感なく受け入れてしまうのだからどうしようもない。
だが直樹はそれ以上にまで考えが及んでいた。
今の彼はやっと自分も漫画の主人公達と同じ事が出来ると喜んでいた。
(指でもこんなに気持ちいいのなら、きっとお兄さんのおちんちんを挿れたらもっと気持ちいいんだ)
触れられるだけでも幸せだったのに欲望に忠実だった直樹はもう指一本では物足りなくなっていた。
いや、十分に気持ち良かったのだがその先を知っている彼は早く次の段階へ移りたいと思っていた。
(おちんちん欲しいよう……)
そうなると指一本のもどかしさに胸は苦しく揺さぶられる。
もちろんそんなこと直接兄に言える訳がない。
ここまで来ても恥じらいだけは忘れなかった。
だが体は正直で次第に兄を誘うように腰をくねらせ始めていた。
売女のようにいやらしくねっとりと尻を振り目の前の男を誘うとする。
無意識であったが故にぎこちない素振りであったがそれが余計に妖しく見える。
またそんな弟の変化に人一倍敏感だった兄はすぐに気付いた。
そして直樹のペニスが少しでも触れたらイってしまいそうだった事も見抜いていた。

「――よし、終わり」
「ふ……?」

だから彼は執拗に弄くっていた直樹の穴からあっさりと手を引いた。
腸内は出て行く指を寂しそうに締め付け留めようとしたが無理であった。
人差し指を抜いた穴は出て行ってしまった主人を待つかのようにヒクヒクと物欲しげに動いている。
その淫猥な仕草が愛らしくて思わず苦笑してしまった。
きっと直樹も同じように物足りなさを感じているに違いない。
だが章介はあくまでも冷静に物事を進めようとしていた。
今まであった妖しい雰囲気を一蹴するような終わりを告げる一言に全てが集約されている。

「今まで良く頑張ったな」
「お兄さ…」
「よしよし」

彼は弟の勃起したままのペニスを確認しながらも見て見ぬ振りをしながらズボンとパンツを元通りに上げた。
しかしその体勢のまま身動きがとれない直樹は為すがままになっている。
ガマン汁がパンツに付着して濡れた感触がこそばゆかった。
チラッと見上げた兄はやはりいつもと変わらない。
だからまるで自分だけが荒淫な夢を見ていたような錯覚を起こしそうになる。
おかげでおねだりも出来ずに只々章介の顔を見るだけであった。

「じゃ俺は風呂入ってくるから、上がったら飯作るよ。もう少し待っていてな」
「ん、は……はい」
「うっし」

章介はあからさまに残念といった顔の直樹を宥めるように撫でてやった。
そして颯爽と部屋を出て行く。
二人とも同じ事を考えていたのだが結局均衡は保たれたままであった。
それが一気に崩れるのは章介が部屋のドアを閉めたあとである。
直樹はもうイク寸前だったのに寸止めされて火照った体を持て余していた。
だから章介の姿が消えた途端に理性が砕け散ってしまった。
いつもならせめて兄が階段を降りていく音を聞くまで我慢出来たかもしれない。
しかし今のおあずけをくらったまま放置された様な状態では無理であった。
否、もしかしたら兄に聞かれてしまったとしても構わないとまで思っていたのかもしれない。
そうすれば猥らな自分にお仕置きをしてくれると妄想していた。

「あぁ…んっお兄しゃ…っふぅ、く」

即座に小さな指でアナルを掻き混ぜる。
到底兄のように奥まで突けないがその分一気に三本もの指を挿入した。
それだけでは満足できずに片方の手で自分の性器を扱く。
ギシギシと妖しげにベッドが軋み喘ぎ声が漏れる。
お尻は軟膏のお蔭でいつもよりすんなり入った。
むしろ三本じゃ足りなくて親指を抜かした四本もの指で中を弄る。
さすがに四本じゃ痛みが走ったが今はそれすら快楽の餌にしかならない。
痛みすら甘い毒のようで直樹は脳内の兄に呼びかけた。
(もっと乱暴にしてっズボズボしてっ)
今の彼の望みは息も出来ぬほどに犯される事であった。
辱められてもいい。
それほどに欲情されたと思うだけで体の火照りが酷くなる。
自分の体を奥まで暴かれてしまったら、直樹は平伏す他ないだろう。
過激な妄想だけが一人歩きを始めて直樹自身手に負えなかった。
唯一そんな自分を鎮められるのは兄の肉棒だけである。
だから虚しくもそれを想像しては自身の体を慰めていた。

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