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「いや、これは学校の借り物だよ」
「ふーん。君はヴァイオリンを持っていないの?」
「あ、うん。今は……ちょっと」
「君の腕で良いヴァイオリンを使ったらもっと素敵な音色になるのに」
「あはは……。そうかな」

言葉を濁したミシェルは苦笑いしながら庭園を眺めた。
泳いだ視線が純朴さを表しているようで、ヤマトは眩しそうにその横顔を見つめる。
まさか、壊された自身のヴァイオリンを抱き寄せているところを見ていたなんて知りもしないだろう。
噴水に手を伸ばすと、波紋が広がってレースのように揺れた。
まだ水は氷のように冷たく痛い。
話の継穂がなくなると、水音だけが辺りを支配した。
いきなり連れてこられたミシェルは、居心地悪そうにそわそわしている。
こんなところを誰かに見られたら大変だと言いたげな態度だった。
その露骨さがおかしくて、ヤマトは吹きだしそうになるのを堪える。

「じゃあさ、そのヴァイオリンで賛美歌弾いてよ」
「え?」
「僕だって悲惨な歌ばかり唄っているわけじゃないよ。たまには神の許しを唄いたくなる時だってある」

ヤマトはこの国に流れ着いた当初、教会に入り浸っていた。
そこの司教はパンをくれたからだ。
勝手に覚えた讃美歌を呟くように口ずさむと、ミシェルの顔つきが変わる。
囁くような歌声があまりに瑞々しく美しかったからだ。
思わず聞き入ると、唖然としながら唄うヤマトを見つめ、声に息を呑む。
その風貌からは想像できない声に、胸を鷲掴みされたような衝撃が走ったからだ。
声変わりさえまだの少年が歌っているようである。
ヤマトは唄いながらヴァイオリンを指で差し、早く弾けと促した。
彼はその素振りに慌てて立ち上がると楽器を構える。
タイミングを見計らってゆっくりヴァイオリンの弓を引くと、高音からは想像出来ないほど柔らかな音色が響いた。
高い城の塔に囲まれているせいか、よく音が反響して返ってくる。
思い通り以上の音が出せる喜びと、直接耳に跳ね返ってくる音の心地良さに酔いしれた。
始めは窺うように慎重だったミシェルも、ヤマトの伸び伸びした唄いかたにつられて大胆になっていく。
まだ言葉を交わして間もないというのに、顔を見なくても息を合わせて互いを高めあうことが出来た。
それはミシェルにとっては初めての経験で、彼は久しぶりに音楽が好きだという気持ちを噛み締めていた。
風の囁きや、葉の擦れる音、軽やかな水音――全てが重なり合って周りを囲んだ。
すらすらと動く左手の指先で弦を押さえ、右手で持っていた弓を引くと、自然に体が動く。
音楽に乗るようゆるやかな動きで上体をくねらせれば、音楽と一体になったようで気持ちいい。
そうして演奏を楽しんでいるミシェルと、時折目を合わせながらヤマトは微笑んで唄った。
ヤマトは幼いころから音楽が好きだった。
故郷に賛美歌はないが、琵琶や笛を習って妹の琴とよく合わせたものだ。
乳母が聞かせてくれた子守唄は、当時の安らかな気持ちを思い出させてくれるし、母国を偲ぶことが出来る数少ない思い出だった。
頑なな心も音楽と接している時だけは解れているような気がする。
難しいことは考えずに済んでいるような気がする。
何もかも忘れて新たな自分に生まれ変われるような気がする。

「――実に見事だね」

その時、庭園のポプラの木の陰からひとりの男が現れた。
パチパチと手を叩きながら、優美な仕草で近寄ってくる。

「陛下……」
「へっ」

唄うのをやめたヤマトは振り返ると、再び表情を凍らせた。
楽しそうに弾いていたミシェルもその言葉に顔面蒼白となる。
慌てて構えていた楽器を後ろに隠すと、棒のようにピンと立って動かなくなった。

「もうやめてしまうのかい? 余はもう少し聞いていたかったのに」
「……本日のご予定は鹿狩りに出かけられたのではないですか?」
「つまらなくて早々に切り上げてきたんだ。何か面白いことはないかと歩き回っていたら素敵な音色が聞こえてきた」
「…………」
「ヤマトは余の頼みでは唄わないくせに、そこの彼とはずいぶん楽しそうに唄うんだね」
「…………」
「彼は誰だい?見たことがないから宮廷に仕える者ではないようだ。気になるなぁ。だって、本来なら余の願いを聞き入れない者は磔になるのに、そなたはそれでも頷いてくれない」

ユニウスは玩具を見つけたように目の色を輝かせた。
それでもヤマトは微動だにせず冷めた態度で、

「なぜ私があなたの前で唄わねばならぬのです。私は私の望む時にしか唄わない。この国には陛下を満足させる歌手がごまんとおります。彼らが喜んで聞かせるでしょう」
「余はそなたが良いのだ」
「ならば私が唄っても良いと思わせる男になることです」
「はは。だからそなたは面白い。あまりそのようなことを公言しない方が良いだろう。そなたの失言を待ちわびている輩は大勢いるからな」

ユニウスも平然としていた。
近くで官職や貴族が聞いていたら罪になりそうな言葉を聞いても表情は緩めたままである。
彼もまた肚の見えぬ男。
ヤマトがどんなことを言おうとも、微笑んで覗き込むように見つめてくる。
その瞳は氷のように冷たく、目を合わせれば瞬時に凍えてしまいそうだった。
単なる嫌がらせか、それとも不可思議な好奇心からか、どんなに冷たくあしらっても無邪気を装い近寄ってくる。
それにはヤマトもうんざりしていた。
大抵の人の心が読める彼もユニウスだけは手を焼いていたからだ。

「ま、いいや。どうでもいいし」
「…………」
「それより二人とも、今夜王宮の裏口玄関に来なさい」
「はぁ?」
「あ、ヤマトはその前に余の部屋へおいで。来なかったからうっかり殺してしまうかもしれないから気をつけてね」

ユニウスはそれだけ言い残すと、満面の笑みを浮かべて廊下へ戻っていった。
残された二人は呆然として立ち尽くす。
(また無茶が始まった)
慣れっこだったヤマトは呆れてため息を吐くが、個人的に面識ないミシェルには一大事だった。
断ることも出来ず、どうやって寄宿舎を抜け出そうか、何を着ていくべきかと頭を悩ませている。
その姿に、ヤマトは顔を顰めて見守った。
どうやら算段を違えたようである。
思わぬミスに聞こえぬよう舌打ちした。
(やはり侮れぬ男)
ユニウスの残り香に嫌悪するのだった。

***

その日の夜、ユニウスとヤマトとミシェルの三人は馬車に揺られていた。
裏口の玄関には馬車が待っていて、これから仮面舞踏会へと出かけるというのだ。
夜遊び好きなユニウスは、よくこうして城を抜け出し仮面舞踏会やギャンブルへ行く。
ヤマトが同行したのは初めてだった。

「どうしてヤマトはドレスを着ているの?」

問題はミシェルと会う前に起きた。
ヤマトは言われたとおりユニウスの部屋へ行った。
そこは女物のドレスで溢れていた。
待女は有無を言わさずヤマトを押さえつけると、ユニウスが選んだドレスを着せていく。
抵抗したところで無駄と分かっていたから暴れなかったが、大人しく従うのも嫌で以降口を利かなくなった。
透明人間扱いで平然と無視をする。

「決まっているだろう。余が見たかっただけだ」
「ミシェル、話を聞かなくていい。ここには僕と君しかいない。陛下などいるわけがない」
「え……で、でも」
「透明人間が何か言ったところで聞き流せ。無視をしろ」

車内の雰囲気は最悪で、間に挟まれたミシェルはおろおろするだけであった。
無視を決め込んでいたヤマトは、頬を膨らませて窓から見える夜景を眺め顔を合わせようとしない。
向かいからニヤニヤと腹立たしい視線を投げかけてくる男をいないものとして見なしていた。
(なんで僕がこんな格好をしなくちゃいけないんだ)
ユニウスの部屋でウエストをぎゅうぎゅうに絞られ、パニエを取り付けられ、あれよあれよという間に漆黒のドレスを着せられてしまった。
着替えだけでなく、好き勝手に化粧をされて気持ち悪いし、黒髪を隠すように高い位置でひとつに結び、ティアラとベールを乗せられて頭は重い。
靴だって女物のヒールを履かされて散々だ。
(どうせ小さいとか子供だとかの理由で、男の正装が似合わないと馬鹿にしているんだろう)
ヤマトと西の人間では骨格からして全然違う。
髪の色や瞳の色、肌の色も違うが、体格の差だけはどうしても悔しかった。
ヤマトだって自国では歳相応の少年だが、この国では幼い子のようになる。
見た目からして仕方がないと分かっていたが、自尊心がそれを許さなかった。
肘をつき、流れる景色を見ながら憂鬱そうに顔を顰める。
普段はよほどのことがないと表情に出さないヤマトも、さすがにご立腹で、そんな姿をユニウスは満足そうに見ていた。

そうこうしている間に会場へ着いた。
オペラ座の隣にある豪勢な劇場では、夜な夜な仮面舞踏会が開かれている。
各々仮面をつけて身分素性を隠し、朝まで騒ぎ続けるのである。
ここでは名家も成金も、上流貴族もそれ以外もごっちゃになって楽しむのだ。
男女共に華やかな格好で好き勝手に踊る。
王宮で踊るような品のあるダンスではなく、賑やかな演奏のもと自由に踊り明かすのだ。
仮面で隠すことによって本能が開放され、城で見る慎ましやかな淑女は派手な格好で男を誘う奔放な女になり、清潔爽やかなジェントルマンは欲望剥き出しの野獣と化す。
男女共に日ごろの鬱憤を晴らすよう気ままに遊ぶのだ。
一夜の夢に酔い浸っている。
堅苦しいしきたりやくだらない常識で支配された彼らにとって、仮面舞踏会で過ごす夜はまやかしのひと時であり、何もかも忘れてはしゃぐ一瞬の夢なのだ。
だがミシェルとヤマトは別世界に来たことで圧倒され、柱から離れることも出来ず立ち尽くした。
ユニウスは別の馬車でやってきた馴染みの女たちとどこかへ消え、さっさといなくなってしまった。
非情な男である。

「どうしよう。僕こういうところに来るの初めてなんだ」
「僕だってそうだ。しかもこんな格好で」

ヤマトは引きずりそうなほど長いドレスを煩わしそうに指でつまみ嫌そうな顔をする。
その動きづらさにうんざりとしていた。

「しかも僕は寮を抜け出してきちゃったんだ。もしバレたらどうなることだか」
「その時は陛下に言ってもらう。彼が勝手に連れ出したんだ」
「そんなこと言えないよ……」

ミシェルは派手な世界についていけず、ブルブル震えながら泣きつくよう身を寄せてきた。
彼は侯爵家の四男で、父親は隣国の国王に仕えている宰相だ。
代々続く名門貴族で、本来ならこういった場所には慣れているはずである。
しかし彼はそういった遊びに興味なく育ち、音楽だけで生きてきた。
兄たちと山遊びをしたり、野原でヴァイオリンを弾いているような子だった。
その様子を聞いた時、ヤマトは容易にその姿が想像出来て苦笑した。
垢抜けず、素朴で、彼と接すると懐かしい気になる。
しかし本来近づいたのは別な目的のためだった。

「どうして?学院長ならば陛下の勝手なご判断に罰を下すことは出来ないはずだよ」
「そ、そうだけど……」
「それとも何か?他の誰かに知られたらまずいのか?」
「……い、いや……」
「何かあったら力になるよ。嫌なことがあるならなんでも言っていい」

心配するよう問いかける。
善意だけを押し出すと、どんなお節介も許されてしまうから不思議だ。
特に彼のような気の良い人間だと振り切れない。
そこに漬け込む己の汚さにはもう慣れていた。

「僕は何があってもミシェルの味方だよ」
「や、あの……」

彼は戸惑って口ごもらせる。
(ミシェルの場合、寮を抜け出して仮面舞踏会に出かけたことを知られるのが怖いんじゃない。もっと別の――)
分かっていて答えをわざわざ本人の口から導き出そうとする。
その意地悪さに益々ヤマトの瞳は生き生きとしてくる。
しかしミシェルはそれ以上何も言わなかった。
ヤマトの言葉を素直に励ましと捉えて「大丈夫だよ」と健気に微笑んでみせる。
今日会ったばかりの男には言えないのか、それとも相手が誰であろうと陰口はしないと決めているのか。
彼ならば後者だと思った。
そして後者の方が厄介だ。
誠がある人間は面倒である。
己の信念のためならどんなことでも押し通す覚悟を持っているからだ。
それは鋼の意志とも言うべきで、何人たりとも曲げることは出来ない。
だから厄介なのだ。

「あ……それよりっ」

するとミシェルは下手くそにも話題を変えようとした。
そんな態度ならばヤマトでなくても気付くわけで、しかし今は彼の心情を汲み取って大人しく彼の方向に目をやった。
そこには仮面舞踏会なのに仮面をつけていない男がいた。
秀でた鼻梁に凛々しい顔立ちは正面から見なくても整っていることが分かる。
だが周囲の女たちに言い寄られて困惑しているようだった。
押され気味で、手はずっと後頭部を掻いたまま置き所に迷っている。

「誰だ、あれ」

目を凝らしてみるが見覚えはなかった。
一方のミシェルは、先ほどまでの落ち込みが嘘のように目を輝かせている。

「あれはクラリオン大佐だよ。カメリアから戻ってきていたんだ」

柱の影からキラキラとした眼差しでクラリオンという男を見つめている。
ミシェルの話によると、彼はここ最近ずっとカメリアでの戦争に派遣されていたらしい。
有名な剣士で、元は田舎町の靴職人の出だが、戦場で数々の功績を作り、二十七歳の時、異例の早さで大佐にまで上り詰めた人物だった。
現在はそのカメリアで任務にあたってる。
そもそも大国アルドメリアは他国に支援することも多く、その中には内紛状態にある国のため軍を貸すことがあった。
カメリアは現在経済格差により独立戦争が起きていて、アルドメリアは独立軍側を支援している。
なぜなら政府軍の方は敵対する(ほど険悪ではないが)別の国が支援しているからだ。
この戦争に勝てば、豊富なカメリア資源を手に入れられる上、政府軍を支援していた国を負かすことが出来る。
国にとって一石二鳥な戦というわけだ。
クラリオン大佐は豊富な戦争経験以外にも人格者として有名だった。
あれだけ甘ったるい顔に、強くて誠実さがあれば国の人気者になってもおかしくない。
ミシェルのひとつ上の兄も、昔から彼を尊敬していて、二人はカメリアへの出立式にもわざわざ隣国から見に来たという。
その本人を前にして、興奮しないわけなかった。

「でもあれ、どうにかしないと可哀想じゃない」

勇ましいクラリオンの話を聞いたが、現状、ひとつ向こうの柱で言い寄られている大佐は、上手く女性の誘いを断ることが出来ず狼狽している冴えない男だった。
ミシェルは緊張しすぎてその場から動こうとしない。
ヤマトは仕方がなく彼の首根っこを掴むと、ずるずる引きずるように連れて行った。
顔を赤くしてうろたえ、女性を振り切ることも出来ずに困っているクラリオンのもとまで行く。

「大佐、やっと見つけましたわ。もう、わたくしとしたお約束を忘れてしまったの?」

ヤマトは開き直って艶然と微笑むと、力ずくで女たちを引き離し、クラリオンの腕に手を巻きつけた。
力だけなら一応男である。
愛らしい顔立ちとは別に、有無を言わさず掴んだ腕はテコでも動かない。

「あちらでシャンパンでも飲みましょう」
「ちょっ、ちょっとあなたどちらの――」

強引なやり方に文句を言い出す女たちを、彼は素知らぬ顔で払いのけた。
家畜を追い出すように手を振る。

「仮面舞踏会で無粋なことをお聞きなさるのね」
「なっ」
「さ、大佐。それより参りましょう。ほほほ」

掴んでいた手を無理やり引っ張ると、悔しがる女たちを尻目に歩き出した。
その大胆な様子に、唖然としたままクラリオンとミシェルはついていく。
ヤマトはしてやったりとほそく笑み、難なくその場から連れ出すと元いた柱まで戻ってきた。
後ろで奪われたと騒ぐ女たちに、いい気味だと心のうちで呟く。

「はぁ、良かった」

戻ってきてやっと緊張の糸が切れたのか、ミシェルは誰よりも早く安堵の息を漏らした。
何もしてないのに、さも一仕事してきたように汗を拭い柱に寄りかかる。
クラリオンを真ん中に三人並ぶと、ヤマトは彼を見上げた。

「色男なのは結構だが、仮面をつけてきた方が良いでしょう」

嫌味のように呟いたが、クラリオンは嫌味ととらず、

「いや、君の機転のお陰で助かった。感謝しよう」

と、頭を下げる。
軍人らしく無骨な態度だった。
彼は今日王都に戻ってきたらしく、無理やり同僚に連れ出されて、知らずに仮面舞踏会へやってきたそうだ。
肝心の同僚は気付くと傍におらず、慣れない場所で迷子になったという。
つまり我々と一緒なのだ。
彼もまたこの異様な世界が苦手な人種だった。
大盛りあがりの会場で、隅っこに男三人並んでいるから情けない。

「こほん」

すると、クラリオンは意味あり気に咳きついた。
僅かに頬を染め戸惑ったように、

「助けて下さったのはありがたいが、年頃の娘が無防備にも男の腕に手を巻きつけてはならぬぞ」
「は?」
「だから少しくっつき過ぎだと言っている」

その言葉にヤマトは一瞬目が点になったが、

「ぷっ……!」

と、吹きだしてしまった。
この国に来てから初めてこんな風に笑ったかもしれない。
だがあまりに咄嗟のことで自制する前に吹きだしてしまった。

「ははっ……大佐、嫌だな。僕は男ですよ」
「え……っ!しかし君はどう見ても……」
「その反応は嬉しいんだか悲しいんだか。なぁ、ミシェル」

黙って事の成り行きを見ていたミシェルに話を振ると、彼はずっとヤマトを見ていたようで、慌てたように、

「や、だってヤマトは凄く綺麗だし」
「それ褒めてないよ」
「ごめん」
「本当に、もう……。音楽バカと軍人バカは……」

ヤマトは呆れたようにため息を吐いた。
どちらもきっと色に縁がなかったのだろう。
クラリオンは、それこそ見た目もよく功績を称えられているのに、女に不慣れなのがおかしかった。
軍人として強くなることしか頭になかったのか。
他人事ながらもったいないと思ってしまうヤマトは、どの目線で言っているのだと自嘲気味に笑う。
だが案外波長は合うのか、三人で和やかに会話していると、

「ヤマト何をしている」

急に肩を掴まれた。
驚いて振り返ると、そこにはユニウスがいて、途端にミシェルは体を強張らせる。
ユニウスは睨みつけるようクラリオンへと視線を流した。
不穏な空気にそれぞれ気付くと訝しそうに互いを見合う。

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