2

次第に喉の奥が熱くなってきた。
好き勝手に咥内を弄られて意識が朦朧とする。
男が腰を擦り付ける度に僕の後頭部が壁に当たる。
口を窄めて搾り取るように力んだ。
ニチャニチャと卑猥な音が廊下に響く。
飲み込めない唾液が口許を汚して床に垂れた。
顎が疲れて泣きそうな顔で見上げると、一部始終を見ていた男と目が合う。
すると彼の性器が硬さを増した気がした。

「じゃあ次は綺麗に舐めろ」
「はぁ……はぁ……ん……」

僕は先端や裏筋、たまを始め付け根や陰毛まで丁寧に舐めた。
男は上機嫌でそれを見つめると僕の体を押し倒す。

「よし。さぁ欲しいと言うんだ」
「んく」

見上げた男は欲情にギラつかせていた。
舐められて興奮しているのか息を荒げている。
僕も理性は限界で従順になっていた。
尻の穴は寂しさと切なさで蕩けている。
内壁は待ちつくしてじれったそうに収縮していた。
これ以上歯痒い思いをしたら、粘膜は溶けて流れ出してしまうかもしれない。
心臓の音がやけに煩くて恥ずかしかった。
僕はおとなしく股を開く。

「ほ……しい……」
「もっとちゃんと言え」
「くぅ……ん。僕も欲しい。……ち、ちんこ欲しい……っ」

自分からねだるのは苦手だ。
両親にも誕生日でさえ何かをねだることをしなかった。
顔は恥じらいで赤く染まる。
浅ましい本心を吐露することは想像以上に羞恥心を煽った。
先ほどまで母親の膣を犯していた性器を欲しがっている。
異常な人間であることは間違いない。

「ほう」
「ふゃ、あっ……あぁっ……!」

だが男はもったいぶった。
言われたとおりにしたのに、僕の性器に重ねて押し付けてくる。
痛いぐらいに熱い性器が擦り合って思わず声が出た。
そのぶん尻の穴がヒクつく。

「ひど…いっ……ちゃんと言ったのに!あぁっ、あっ……ん、おしり…さみし……っ……」
「はぁっ……俺はこれだけでも気持ちいいけど?」
「やだやだぁっ、ぼく…っ僕は…ふぐっ、こんなんじゃやだ…っ…!」
「男のくせに何が欲しいんだよ」
「んくっ、あぁ……っ、あな……お尻の穴に、ちんこっ…欲しいっよぅ……おねが…ぼくにも、ちんこして……っ」

すると僕の哀願に男は性器を離して尻に当てた。
その硬い感触だけで身震いし歓喜に浸る。

「よーし。今度は素直に言えたじゃねぇか」
「あ、あぁっ…くる…くっ……くるっ!」
「ご褒美にいっぱいしてやるよ」
「ん、んんんっぅう……!」

男がグッと腰に力を入れると尻の穴に待ちわびた性器が挿入ってきた。
僕は首に手を回し抱きつくと腕に顔を埋め、喘ぎ声を噛み殺す。
皮膚は粟立って鳥肌が立った。
いきり勃った性器は乱暴なくらい強引に内部を犯していく。
その瞬間、内壁は悦びに引き締まった。
窄まった穴がぎゅぎゅと締め付け離すまいとしている。
体液まみれの体を重ねれば不思議な高揚感が湧く。
僕は男の腰に足を回していた。

「すき……っこれ、好きっ……んっんぅ……!」
「さすがあの母親にこの息子アリだな」
「いっ、あぁっ……言うなぁ……っん、んくっは……あぁっ……あ、あぁっ」

押さえきれない声が漏れてしまう。
僕は男の下でか細い息をしながら喘いだ。
母親に見つかってしまうのではないかと肝を冷やしながら感じていた。
壁一枚隔てた廊下でいいように犯されている。
見つかれば言い訳のしようがなかった。

「やべ……きもちい……っ」
「はぁ、あぁっ……ぼ、ぼくもっ……きもちいいよぅ…っ、んぁ、はあぁ…あぁっ」

生の熱い性器が、内部を犯している。
男は母親を抱いたあとだというのに衰えていなかった。
力の限り、貪るようなセックスをする。
僕は待ち望んでいた感覚に胸を震わせて喘いだ。
指では届かない奥までゴリゴリに擦られて腸壁が締まる。

「お前の体はどこもピンク色で綺麗だ」
「やぁ……んっんはぁ……!」

男は僕と繋がっているところを見せ付けるように足を開いた。
僕は嫌がりながらソコを見てしまう。
未熟な体は瑞々しくてどこも綺麗な色をしていた。
尻の穴さえ桃色に染まり、奥へ誘おうとしている。
ソコから赤黒い男の性器が出ていた。
入り口をカリで引っ掛かれて思わず甘い声が漏れる。
男はそのまま性器を抜いてしまった。

「おら、こうして手で肛門を広げてろ」
「んぅ」

貫いていたモノがなくなると、腸内は空洞になったような気がして違和感が走る。
僕は言われたとおり両手で尻を掴み引っ張ると肛門を広げた。
丸い穴が楕円に歪む。
物足りなさからヒクヒクしていることは見えなくても分かった。

「はは。尻の奥までドピンクだ」
「ばっ……どこ見てっ!」
「ママなんてとっくにどす黒いマンコしてるのにずいぶん綺麗なケツマンだな」
「――!」

ママという言葉に反応するように男を見た。
彼は挑発するように目を細めて笑っている。
目が合うと途端に居た堪れなくなって、逸らした。
しかし体は正直で性器がピクンと脈打つ。

「……それって、僕の方がいいって……こと?」

思わず口を出た言葉に、恥ずかしさは募る。
視界の端で男は笑みを深くしたように見えた。

「や、やっぱ今のなし!わ、忘れてっ……」

僕は慌てて取り繕うとした。
そうして男の方を見ようとしたら、随分至近距離に男の顔がある。

「えっ……――んっ!」

気付いた時には遅くて、男の唇が僕のを塞いでいた。

「んっ、んぅっ!……んっん!」

驚きで目を見開くが近すぎて視界がぼやける。
男の唇は想像以上に柔らかくて温かかった。
思わず抵抗しようとバタつかせた手足を抑え込まれる。
後ろは壁のせいで下がることは出来なかった。

「んんっ……はぁっ、ちょ……はな……せっ、んんー!んっ…んっ」

一旦唇が離れたかと思えば、文句を言おうとした口の中に舌が入ってくる。
ぬめった感触は衝撃的で拒絶さえ出来ないまま、咥内に受け入れた。
何度も性器をしゃぶったことはあるが、それとは全然違う感触で戸惑う。
息が苦しくなって胸板を叩くと、合間に「鼻で吸え」と言われた。
そんなこと言われてすぐ出来るわけがない。
しかし我慢が限界に達すると拙い呼吸をし始めた。
鼻息が彼の顔にかかるのが恥ずかしい。
だがその様子に男は面白がって、益々深く口付けられた。
逃れようと口の中で動き回る舌を絡め取られて気持ちよくなってしまう。
飲みきれない唾液が口許から垂れた。
男は気にも留めず、角度を変えては貪るようなキスをして咥内を舐めまくる。
(は、初めてがこんな獣みたいなキスなんて嫌だ!)
頭では抗いたいのに、体は求めている。
いつの間にか強張っていた体も力が抜けて、なすがままになっていた。
舌を強く吸われたかと思えば甘く噛まれて思考はとろんとしたまま動かない。

「んっんぅ、ちゅ……はぁっ、ん……ぅっん、ふ……ぁっ……」

互いを求め合うえっちなキスは、僕の理性を崩した。
恍惚となったまま自ら欲して口を開く。
舌を出せば男がそれを舐めて咥えてくれた。
押し付けられた唇は肉感的で、体の奥がきゅんとなる。
セックスのように激しい衝動は起こらないのに、ゾワゾワと悶えるような快感が駆け巡った。
拒絶していた胸板の手は、男に握られて指を絡められる。
父親と手を繋いだことがないせいか、筋張った手のひらが妙に逞しくて、あっさり身を委ねてしまう。
くちゅくちゅと涎の音を聞きながら、舌先で弄んでいた。
それに飽きると口の中を丁寧に舐め回されて、僕は知らぬ間に果てていた。

「初めてだったのに、随分積極的だったな」
「あ……」

ふと我に返って恥ずかしさに動揺する。
だけど男は反応を待たずして、顔を離した。
見れば射精して力なく萎えている自分の性器が見える。
白濁液まみれの下半身は臭くて卑猥な匂いがした。

「もうトロトロだ」
「んっ、はぁ……」

深い息が漏れる。
キスで言いなりになった体はすぐに動けなくて、そのまま男の指を尻の穴に挿入れてしまった。
折り曲げた指が前立腺を引っ掻く。
先ほどより感度が上がっているのか、僅かな刺激にも敏感だった。

「あぁっあ……んぅ……」

唇を噛む姿が悩ましげに映る。
足をM字に曲げたまま、あられもない格好で僕は喘いだ。
指でグリグリと掻き回されるたびに萎えていた性器が元気になる。
同時にそれを見ていた男も鼻息を荒くした。
内部は十分過ぎるほど柔らかく解れ、もっと太いモノを渇望している。

「はぁ…はぁ…ん」
「これじゃ俺の方が我慢できないな」

男は自嘲気味に笑うと、尻の穴に性器を宛がった。
ゆっくりと感触を確かめるように挿入すると、二人ともいやらしい吐息が漏れる。

「うは……トロトロなんてレベルじゃねぇな。もうグチャグチャだ」
「ひぁ、あぁっ……おくっ、んっんぅ……奥まではいる……はいっちゃ……」

いつもの激しさの代わりにねっとりと腰を使う男は内壁の感触を楽しむように進んだ。
焦らされ続けた尻はとっくに排出器官としての機能を捨て、男を悦ばせるための穴と化す。
温かさや締め付け具合は極上で、女のソレとはまた違った刺激に満ちていた。

「あぁ、あっ……こんなっ、おくまで……はいったことっないのに……!」
「逃げるな。根元までゆっくりと挿入れてやっから」
「くぅんっ、そな……はぁっ、あっ……ソコはっ、ん……はいっちゃだめ……やだぁっ……!」

僕の足は震えた。
これ以上ないくらい奥まで挿入されている。
執拗な口付けに緩んだ体は、直腸を越えてS字結腸まで入ろうとしていた。
初めての感覚に身悶え、毛穴を総立ちさせる。
男は焦らすように少しずつ犯していった。
越えそうで越えられないむず痒さが、苦しいほどの快楽を産む。

「おにゃ…かっ……までっ…おかしゃれちゃうの……?」

回りきらない呂律に、幼稚な言葉が出てしまう。
だけど訂正する気にもなれなくて、そのままにした。
普段の自分では考えられないくらい乱れて何も考えられない。
その間に男の性器は僕を犯し、内部を暴く。
あれだけの大きな性器が蕩けた穴の中に納まっていく。
根元まで挿入された時には、彼の陰毛が僕のたまに擦れてくすぐったかった。

「はひ……はひ……」

浅い呼吸を繰り返して見上げると男にキスを求められる。
僕はそのたびにお腹をきゅんとさせて尻の穴を締め付けた。
気付いた男は新しい玩具を見つけたみたいに目を輝かせ弄ぶ。

「いっ、はぁ…っあぁっ……んっ、んぅ…や……ぁっ」

男は静かに腰を捏ねくり回す。
ナカではグリグリと掻き乱された腸壁が気持ちよさに痙攣していた。
時折、奥へと突き上げて彼の亀頭とS字結腸の入り口がキスをする。

「ふやぁあ、あぁっあ……あぁっん…んぅ、ふ……」
「ここがお前の弱点か」
「やらぁあ…あっはぁっぅぅ…んっく……ひっ……あぁっ」

すぐそばに母親がいるのに、大きな声を出してしまった。
その声はもはや彼女と同じ獣みたいだった。

「ほうら、上の口でも下の口でもキスをしているぞ」
「ひぅ、ちゅ……はぁっむ……んっ、すご……いっよぅっ……」
「もっと舌出せ。ケツの穴でもディープキスしてやるから」
「んっんぅ、はぁ…あぁっ、ほんと……にっ、ちゅっちゅ……してるぅっ……こんな…んぅ、はぁ……いちばんっ、えっちなキスだよぅ……!」

内臓に響くような刺激が直接脳に伝わってくる。
このままじゃ気が狂いそうだった。
男によってどんどん気持ちの良いことを教えられて戻れそうにない。
無知で純粋だった少し前の自分には戻れそうになかった。
髪を振り乱し喘ぐ姿が母子同じで、血の匂いを感じる。
あれほど淫乱な親を心のどこかで侮蔑していたのに、同じ穴の狢だったのだと気付いてしまった。
しかしそれどころではない。

「おくが……あぁっ、コンコンって……あぁっ、あぁあ……んぅ、やぁ……!」

S字結腸の入り口が熱い。
それほど奥まで犯された経験はなかった。

「こりゃまるで子宮口みたいだ。先端に当たるのがわかるか?」
「んぅ、んっ……わか、るっ……ナカで、いっぱいっ…キス……っしてるっ…何度もっ、ちゅって…キスされちゃってるっ……!」
「そうだな」

緩んだ体が奥の奥まで進入を許している。
本来なら届くはずのない場所も、小さな体の僕には可能だった。
面白がった男は亀頭を何度も擦りつけ、突っつく。
その度に体は電流が走り、あられもない声を出した。

「ここに擦り付けたまま射精したら気持ちいいかな」
「ひぁ……だめっ、おかしくなる……んっんぅ、熱いの…っ…入れちゃだめっ…!」
「それとも、強引にちんぽ挿入れちゃおうか?」
「んく……らめっ、もっと……だめぇっ、あぁっ……んっ、はぁ…そんな大きいの…っ…挿入いるわけない…っ!」

諦めない男は執拗に擦りつける。
響く体の負担は相当のものだったが、快楽が上回って何も考えられなかった。
ぐいぐいと力任せに突かれて、先端が少し挿入いる。

「ひゃ……あぁっあ……んっー!っんんっ」

カリが入り口の内壁に引っ掛かって、嬌声が出た。
思わず上げた声に慌てて口を塞ぐ。

「やば……ぎゅうってなったぞ」
「ひっぅっ、ひっぅ……くるし…っ、おなか…っ、ぐちゃぐちゃになっちゃう……っ」

力むと男の性器を締め付け悦ばせるだけである。

「だから締め付けるな……っぅ…!」
「あぁ、あっ…あ、あっ……んっうぅぅ――!」
「くぅっ」

すると男は力の限り抱き締めてきた。
締め付けに我慢できなかったのか、性器が脈打つ。

「ふぁあぁあああ――!」

同時に亀頭を奥に押し付けたまま射精した。
僕はその衝撃に体を震わせると、男に抱きつく。
足も手もしっかり男に絡ませてピッタリと重なった。
脳みそが溶けるような快楽に自制が利かなくて、射精したあとにおしっこを漏らしていた。

「んぁあ…あ…あ…あ…あ…」
「はぁ……はぁ……」
「あ…あ…っごめ…なさ……っぼく、ぼく……おしっこ……でちゃっ…ごめなさ……」

下半身の痙攣が治まらない。
体液くさい廊下にアンモニア臭が漂う。
僕は涎や涙も垂れ流して許しを請うた。
プルプルと震える姿は弱々しい小動物そのもので嗜虐心を煽る。
男は果てたにも関わらず、目をギラつかせた。

「ふやぁああっ!?」

それは僕にも伝わる。
中で男の性器がムクムクと元気を取り戻し、硬くなっていくことがよく分かったからだ。

「はぁ…っ、お前はどんだけエロくなるんだっ」
「くぅ、あぁっああ……ごめなさっ、あぁあ……っ今、ソコ突かれたらっ、ばかになっちゃ……あぁっ」

S字結腸を男の精液で汚されたにも関わらず、彼は律動を再開した。
今度はねっとりと腰をこね回したりはしない。
本能のなすがまま、いつものように激しく突き刺していく。
僕の体なんてどうでもよくて、彼は自分の衝動のまま犯した。

「あぁ……あぁっ、んっ……声が押さえられな…あ、ああっはぁ……!」

手で押さえるものの力が入らない。
静かな昼間の廊下に淫猥な声が響いた。
母親がいつ起きるとも知れないのに。
こんな姿見られるわけにはいかないのに。

「おねが…っ、くち……ふさいでっ、声がもれちゃ…からっあぁ……あぁっんんっ」
「はぁっ、そうだな。これじゃママに見つかっちまうもんな」
「ふぐっ!?」

男はその大きな手で僕の口を塞いだ。
彼の汗が流れ落ちる。
熱っぽくうなされているような瞳は、纏わりつくように僕を見た。

「……くっ、はは……これじゃまるでレイプしているみたいだ」
「んっ、んっ…ふぐぅ、んっ……んんっぅ……んぅっん」
「覚えているか?最初にお前を犯した時のことを」
「ふぅ……っうぅ……」

僕は何度も頷いた。
締め付けられるような快楽と息苦しさの狭間で涙が零れる。
それが余計に男を煽っているとも知らず、綺麗な涙が彼の手を濡らした。

「あの頃から何度犯してもお前は変わらないんだな」
「んっ…んぅう…ん……っ……」

忘れるはずがない。
僕はぼんやり玄関を見た。
あの日も今日と同じ穏やかな午後の日差しに包まれていて……。
母親と関係を持っていたことはとっくに知っていた。
それを見てみぬ振りをしていた僕は、平然と男を家に入れた。
男が来る日の母親は、いつも昼過ぎに買い物に出かける。
そうすれば父親が帰ってくるまでセックスに没頭出来るからだ。

「面白半分だったが、案外ショタもいけるもんだ」

リビングに招き入れてお茶を出せば僕の役目は終わる。
その時もそんな感じだった。
しかし男は卑しい笑みを浮かべて僕を襲った。
反応を楽しむように手を這わせて、体を貪り手篭めにする。
母親が帰ってくるまで散々犯された僕は何も言えなかった。

「たっぷり犯されて体中精液まみれになっていたよな」

尻の穴は赤く腫れて中からとめどなく白濁液が漏れる。
トロトロの精液がおしっこのように溢れて止まらなかった。
ひとり風呂場で掻き出すと、体が疼いて火照りが治まらなくなる。
陵辱のあとは尾を引き、心に消えない傷を作った。
(忘れるわけない。こんな気持ちいいこと)
男は何を気に入ったのか、その後もちょくちょく僕を抱くようになった。
暇つぶしであることは明白で、いいように抱かれるのが僕の役目になった。

「あぁ…っ、すげー興奮する。はぁ…はぁっ」
「んっ、んぅは……っ、んっぅ……」

男はこの状況を愉しんだ。
人妻――しかも義姉とセックスしているのに、それ以上のスリルを求めて僕を欲した。
彼にとって僕が男であることは、取るに足らない問題だったのかもしれない。

「んっ、ちゅ……はぁっ、あぁあ」

男は僕の口を覆っていた手を離すと、我慢できないように口付けた。
上も下も深く交わりながら満たされていく。
最奥は徐々に開かれて、時折入りそうだった。
この調子ならきっと次回はS字結腸まで犯されてしまうだろう。
泣き喚いてもやめてくれない。
玩具だからだ。
(……なにより、僕もそれを望んでいる)
二人の体はぐちゃぐちゃに濡れていた。
僕は自らの性器を見る。
ソレは力を失いながら体液を垂れ流していた。
気付けばトコロテンになっていて、突き上げられるたびにトロリとした汁を溢れさせている。

「はぁ…あぁ、今、中に出してやるからな」
「ん、んっんぅはぁ……あぁっ、あぁっ」

猛然と腰を振る男は髪を振り乱していやらしかった。
両手を押さえつけられ動けないまま、僕はまた中出しされるのを待つ。
(また奥で出されちゃうんだ)
妊娠しない体は都合よく男の欲望を満たした。
こんなに激しく穴を犯されて、元に戻らなくなったらどうしよう。
ヒクつく尻の穴が、常時開きっぱなしになったら僕は頭が変になってしまう。
今は男に犯されることで満足しているが、それで物足りなくなったら僕は理性に歯止めが利かなくなってしまう。
見知らぬ男を誘い、尻を差し出すというのか。
それでは母親以上に淫乱な人間になってしまう。

「あっ、あぁ……あぁっ……あひっぅ…んっんぅ……!」

それもいいと思っている僕は、もう男を裏切っているのだろうか。
快感を欲しているのは僕の方かもしれない。
……そうだ。
男が襲ったんじゃない。
“僕が”襲うように仕向けたのではないのか?

「イ――っ――!!」
「あぁぁああぁぁ――!」

その間に男は限界を迎えた。
僕の中に思う存分射精する。
強く抱かれてこのまま潰れてしまうかと思った。
内壁は蕩けて男の精液と交わりあう。
肛辱の限りを尽した男は最後の一滴まで僕のナカを汚した。
引っ繰り返った蛙のような格好で悶絶し、僕は意識を失いそうになる。
何も考えられなかった。
全てがどうでもよかった。

「―――っ――」

自分を繋いでいる意識が白く染まる直前、耳の奥で小さな声が聞こえた。
それはあのボーカルのシャウトで――。
さざ波のように響く音は、やはりどこか物悲しさに包まれていた。

***

「ただいま」

その日の夜、何も知らない父親が帰宅した。
とっくに目覚めていた母親は彼のために好物の肉じゃがを作っている。

「ふふ。おかえりなさい」

ドアが開く音がすると彼女はエプロン姿のまま玄関に向かった。
笑顔で迎えると父親の鞄を受け取り「お疲れ様です」と労う。
その白々しさを横目で見ながら僕も「おかえり」と声をかけた。

「お。またアイツが来ているのか」
「え、ええ。あなたを待っていたのよ。ひとりで寂しいから一緒にご飯でも食べましょうって」
「そうか。いつまで経っても甘えたでしょうがないな」

するとリビングからひょっこり男が顔を出した。

「おかえり兄さん」

ニコッと笑う彼に悪びれた様子はない。
どこから見ても温かな家庭の形をしていた。
誰も――何も疑うことのない、甘美なひと時が始まる。
幸せな家族は今日も仲良く食卓を囲み、形だけの安らぎを得るのだ。
貼り付いた仮面の下で何を考えているかも知らず憐れに思う。
父親はそんな僕の思考を一蹴するように穏やかな顔で笑った。
優しく頭を撫でる。

「ただいま」

そうして横を通り過ぎた時、僕はふと違和感に気付いた。
思わず顔を上げて振り返るが、気付いた時には遅く、彼の後姿が遠くなる。
少しよれた背広が大きく見えた。
悟った僕は目を閉じて微かにほそく笑む。
同時に自分の尻から冷たい精液が零れて身震いした。
(まだ“残っていたんだ”)
それはゆっくりと白い肌に伝い、膝裏を垂れていく。

「……誰が本当の〇〇なのかな」

どこまでも冥い視界の中で、僕は甘い綿菓子のような余香に酔いしれた。

――END