2

「なにすっ――」
「なにってプール入る前はシャワー浴びないと」
「やだっ。僕もう帰る!」

勇人は文句を言う。
しかし俺にとっては些細な拒絶にすぎなかった。
チラッとみれば耳が赤い。
夕日のせいじゃない、恥じらいに肌を染めているのだ。

「じゃあどうしてそれ着てくれたの?」

コックを捻りながら水を出す。
勢いよく水が跳ねて、シャワーの中に鮮やかな虹が出来た。
強すぎたと捻り直せば、ちょうど良い水量になる。
それでも虹は消えなかった。

「それは……」
「俺は放課後にプールへおいでって言ったけど、ロッカーに入っている白スクを着ろなんて言ってないよ」
「……っ……」
「ま、他の水着はないし、それを着るほかなかったんだろうけど、それなら着替えなくても良かったんじゃない?」
「うぅ……」

あくまで強制はしていないと言い切る。
実際にその通りで、当然脅したり無理やり着させたわけじゃなかった。
全ては彼が望んでのことである。

「ホント、健気でかわいいなぁ」
「け、健気ってっ」
「言うこと聞かなかったら捨てられるって思っているんでしょ。だから無茶でも俺のお願いを聞くんだよね」
「――!」

昼休みのセックスも、今の格好も抗えないのは不安だから。
勇人は顔を上げた。
その顔に笑いかけながら手を引くと、二人してシャワーの中に入る。
誰もいないプールには水音だけが響いた。

「俺が気付かないとでも思った?」

競泳帽子を脱ぐと髪をかきあげる。
勇人は黙ってこちらを見ていた。
その間に顔や体が濡れていく。

「確かにちょっとだけ水泳で良い記録作って、持て囃されているかもしれない。でもお前にそんな態度とった?」
「……とってない」
「でっしょー?まったく、せっかく同じ学校に通っているのに壁を作られている方の身になってよ。案外傷つくから」

おちゃらけたように笑うが、勇人は真顔のままだった。
その頭をぽんぽんと撫でる。

「言いなよ、全部」
「…………」
「全部聞いてやるからさ」
「せんぱ……」
「おっと、その代わり先輩はやめろよ。言ったらエッチなことしちゃうかんなー」

腰を抱き寄せるが、いつものように嫌がりはしなかった。
それに驚いて見下ろせば半泣きになっている。

「え?」
「う…………」
「まさか……」
「うわああああああああんっ!」

顔を見てまずい――と思ったときには大声をあげて泣き出した。
意地っ張りな勇人がマジ泣きした時は危険である。
酷い時で一ヶ月間口を利いてくれなかった。
彼は逃げるようにシャワーから出ると、泣きじゃくる。

「ひっぅ、ひっぅ…うぅっ…くっ……」
「な、なんで?泣くな。頼むから泣くなってば」
「うえっ、ふ…っ……うぅっ…ひっぅ、ひっくっ…」

抱き締めようとしたら突き飛ばされた。
勇人は嗚咽を漏らす。
なぜ泣き出したのか分からなかった。
良かれと思って言ったことだったのだ。

「なんでっ…ひっぅ、ひろちゃんはっ…いっつも、そうなのっ…っふ」
「なんでって言われも……」
「意地悪なのに優しくて、ぼくっ…いつも振り回されて…っ」

涙は止まらず目元を濡らす。
なのに俺はその姿に見惚れていた。
泣いている顔も可愛かったからだ。

「今までただの馬鹿でスケベで、それだけだったのに……なんで、今さら人気者なんかになるのっ…」
「あれ?俺って人気者だったの?」
「…っ、来るなって言ってるのに、ひろちゃんがうちのクラスに来るからだ!…だからクラスの女の子たちがひろちゃんのこと格好良いって……」
「へぇ」

それはそれで悪くない話だ。
女子に好かれて嫌な気分になるわけない。
それが素直に顔に出たのか、勇人に思いっきり足を踏まれた。

「いっってえええええ!!」
「馬鹿っ、きらい!ひろちゃんなんか、大っきらい!」

彼はまた泣き出す。
(ああもう、なんでこんなに可愛いの!)
口を膨らませる勇人にめろめろで勝手に顔がにやける。
もはや痛みすら愛しい!

「ああん。もっと踏んで」
「気持ち悪いっ…馬鹿じゃないの、も…っ信じらんないっ」

近寄ると、あっちいけと怒られた。

「もう知らない!僕は僕で勝手に泳ぐから、あとは好きにして!」

完全にご立腹で勇人はシャワーに戻ると体を濡らす。
彼は気付いていなかった。
濡れて僅かに透けた水着が煽らせていることを。
ぴったりと張り付いて、乳首やペニスの形が露になる。
恥ずかしさを紛らわすようにシャワーを浴びるさまは可愛いというより綺麗だった。
その憂う横顔にキスをしたくなる。

「わっ、ひろちゃ……っ」

俺もシャワーに割り込むと彼を壁に押し付けた。
抗う隙もなく唇を奪うと、降りしきる中でキスをする。

「んぅ、んっ…ふっ、ちゅ、はぁん、んっ…」

噛み付くように何度も口付けた。
濡れた水着の独特な感触に興奮を募らせて、手を這わす。
とっくに自身は勃起していて、競泳水着からはみ出ていた。
構わず彼の水着に押し付ける。

「んちゅ、ひろちゃ…んっ、んぅ…いつまでっ、きす…んんぅ、ちゅっ…んぅ…っ」

角度を変えて繰り返す。
甘く唇を噛むと勇人は瞳をとろんとさせた。
互いの舌を舐めあうと唾液が顎を伝う。
シャワーの水に紛れると分からなくなった。
次第に体の強張りがなくなって、身を任せてくる。
少し唇を離すと、目を細めて見つめあった。

「だいきらい」
「ん、俺は好きだよ」

そっと呟くと再び口付ける。

「ホントにホントに……だい、きらい」
「うん。大好き」
「だからっ、ぼくは…きらいって……んっ!」

もう一度キスをしたら大人しくなった。
濡れて張り付いた髪をすくと、うっとりとした眼差しで見上げてくる。
誘っているとしか思えない顔だ。

「好きにしていいって言ったから好きにした」
「んぅ、ひろちゃん」
「本当は女の子なんてどうでもいいよ。勇人さえ傍にいてくれたら、俺は嬉しいから」
「ひろちゃ……」

ゆっくり包み込むように壊さないように抱き締める。
いつものように力任せじゃない。
いっぱい気持ちが伝わるように。
いっぱい想いが届くように。

「……ばか。こんな勃起させて説得力ない」
「あっバレた」
「バレたって…さっきから僕に擦り付けておいてなに言ってんの」

男の性でどうしようもなかった。
舌を出して茶目っ気たっぷりに笑うが通用しない。
だけど満更じゃなかった。
勇人も勃起した自らのちんこを俺に押し付けてきたからだ。

「勇人……」
「んっぅ、ふ……ちんこ、熱い…っ」
「はぁ、きもち……」
「くっん、すき…ひろちゃんっすき……っ」
「あぁ、はやと、勇人っ」
「本当は嫌いじゃないよっ…ずっと、ずっと…すきだよっ…」

二人で腰を押し付けあう。
勇人は胸元に擦り寄った。
焼けた肌にキスをして、甘い吐息を放つ。
俺は我慢できなくて、スク水の下腹にあいた穴から強引に性器を入れた。

「やっぱスク水って便利っ…」
「あぁ、あっ…んっ、ふっ」

淫らにちんこを擦りあう。
勇人の肌だけでなくスク水の感触が加わって極楽だった。
おかげで腰が止まらない。
シャワーの水が火照った体に染み込むようだ。

「雨のなかで…してるみたいっ…」
「そうだね、っはぁ…ってか、お前格好っ…エロすぎっ…ちんこも乳首も勃ってるのモロバレっ…!あとでハメ撮りしよ」
「や、だぁっ……んぅ、分かってるもん…っあぁっん、分かってて着たんだもん…っ」
「勇人っ、かわいい」
「ひろちゃんの言ってたとおり、自主的に着たんだっ…着ればっ…きっと、ひろちゃんは…えっちなことっ…してくれると…思って…」
「いいよ。ちんこいっぱいしよっ…空イキするまで、しよう…っ…」
「あんっ、んっ…僕で抜いて…っ、射精っして……っ」

言われた通り我慢できなかった。
二人は勇人のスク水の中で絶頂に達した。
カウパーでとっくにヌルヌルになっていた水着に擦られて精液をたっぷり出した。
いやらしい言葉が性器を熱くさせる。
勇人は恥も外聞もなく求めてきた。
スク水は脱がせず布地をめくる。
「マニアック」と白い目で見られた。
その割に本人もノリノリで昼間使用した穴を晒して、おねだりする。
チラリと隙間から見えたちんこに息を呑んだ。
パンチラより破壊力がある。

「んはぁ、あぁっ…ひっぱっちゃ…んっ、のびるよぅっ…!」

無理やり水着を引っ張ってTバックにすると、ぷりんとした尻が顔を出した。
たまらず顔を寄せて頬擦りすると夢中で吸い付く。
ちゅうをするたび尻は揺れた。
ぐいぐいと引っ張り、ちんこまで刺激すると、腰が砕けて見悶える。

「い、れてっ、はやくっ…はぁん、んぅ…ちんこ欲しいよっ!こんなことされたらっ、あぁ、んぅ…おしりっ……さみしいよぅっ!」
「勇人…!」

俺は誘われるままに覆い被さった。
渇望している。
好きな人を独り占めしたくて、体に精がみなぎってくる。
痛いくらいに勃起した。
尻を持ち上げると躊躇いもなく挿入する。
プールサイドで四つんばいにさせると後ろから馬鹿みたいに突きまくった。

「ひあぁぁ、あっああっ…はぁっ、んぅ……」

昼では押し殺していた声を存分に聞かせてもらう。
勇人の喘ぎ声は耳を犯し、すぐにでもイってしまいそうだ。
好き勝手蹂躙されて蕩けるような声を放つ。

「あぁっ、もうっ勇人のお尻はまんこだよっ…」
「はんぅ…っ…んっ、すごっ…あぁっ、ああっ…っあぁんぅ」
「気持ちよすぎて何回でも出ちゃう。俺のちんこ溶けちゃいそうだっ」
「ひろちゃ…っ、いいよっとけて…ぼくのおしりで、ちんこっ溶かして…っ、あぁっ…ひろちゃん専用の…っ穴にっなるから…っ」
「あぁっ、きもちい……っ、でる…っ、勇人のまんこに…っ、精液でる…っっ!」
「あぁぁああっ……!」

後ろから種付けするように中出しした。
合わせて勇人の性器も射精を促し、水着の上から激しく扱いてやる。
スク水はとっくにヌルヌルで白濁液が垂れていた。
どうやらすぐにイったみたいだ。
それでも迸る興奮に、強引に振り向かせると挿入したままプールに入る。

「あぁ、つめたぁ……あっ…」

勇人は落ちないように首に手を回した。
根元まで入れられて体は身悶える。

「はぁあんっ、おみずっ…おしりのなかっ、はいっちゃうっ…ひろちゃんのちんこと一緒にはいっちゃうよぅっ……」
「んく、すげっ締まる…っあぁったまんね…っ」

また腸壁にぶっかけたい衝動に駆られる。
だが出したばかりで射精するのはあまりに情けなかった。
もっと奥でちゅっちゅしていたい。
トロトロに蕩けた内壁を弄り回して、形を刻み込む。
もうとっくに彼の敏感なところは知っているのだ。
執拗に責めて責めまくってアへ顔を晒したい。
誰にも見せられない卑猥な顔を見ながら、唇が腫れるまでキスをし続けるんだ。

「あぁ、ああっ…きちゃう、そんなっちんこ押し付けられたら…っ、きもちいいのきちゃうっ」
「イってっ…勇人のイキ顔見させて…あぁっ、間近で見たいっ…!」
「そな…っ、いつも見てるのにっ…あぁっあああっ…!」

ズコズコと激しく突くと、簡単に勇人はイった。
恍惚と目を細めて、涎を垂れ流して射精した。

「やぁ、あ……っ、プールの中に…っせ、えき…出しちゃったっ……」

同時に内壁が蠢く。
ぎゅうぎゅうに締め付けて中出しをねだっている。
それでも俺は耐えた。
寸前のところを奥歯を噛み締めて堪えた。
もっと長く繋がっていたかったからだ。

「はぁ、すき…ひろちゃん……」
「勇人。俺も好き。好きすぎてずっとこうしていたいくらい…好き……」

絶頂の余韻を噛み締め震えている。
瞳を潤ませ、幸せそうに笑う勇人が愛しくて額を重ねた。
こんなに好きで困る。
毎日セックスして毎日気持ちよくて、このままどうなってしまうのか分からない。
いつ限界が来るのだろう。
むしろ限界は訪れるのかな。
その前にリミッターは外れてしまわないかな。

「世界で一番好きだよ」
「はぁ、ん。ひろちゃん」

阻まれることなく肉欲に溺れる。
何度もお互いに好きだと言い合った。
言葉に酔いそうなほど囁きあった。
(そういえば最近は言わなくなっていたな)
肉体を貪るのに必死で、睦言など消えた。
快楽にのめり込むのは年齢的に仕方がない。
勇人に微笑まれるだけで、全てそっちに考えてしまうのも仕方がない。
一度知ってしまった蜜の味は濃厚で離れることが出来なかったのだ。
初めての時は呆れるくらい呟いたのに何たる不覚。
これじゃ勇人が不安になるのは当然だ。

「勇人も好きって言って?俺が好きだって。俺だけだって」
「んぅ、ひろちゃ……」

すると勇人は首にしがみついた。
ぎゅうっと強く抱きついてから離れると首筋にキスをする。

「はぁ、はやと?」
「好きっ…ひろちゃん大好きっ……」
「痛っ……」

途端に僅かな痛みが走った。
それに顔を歪ませると、彼は悪戯っこのように笑う。

「ひろちゃんの体に痕つけていい?僕のひろちゃんだって…見せびらかせて…いい?」

今度は鎖骨に痕を残した。
その仕草に胸がきゅんとして、背中に手を回す。

「いっぱいつけていいよ。誰が見てもキスマークだって分かるくらい痕つけて」
「んぅ、ひろちゃんっ。も、そこは否定するところだよっ。はぁん、水泳部なのに…見られちゃうよ?」
「いいじゃん。見せびらかしても。…ふ、勇人にいっぱいキスマークつけられちゃったって、自慢するからっ」
「ばかっ」

だけど勇人はやめなかった。
俺に抱かれて喘ぎながら、至るところに痕をつけた。
明日みんなに言われるだろう。
「ずいぶん過激な彼女」だって。
それがおかしくてもっととねだった。

「あぁっあん、そんな突いたらっ…ちゅっ、ん…キスできないよぅっ…!」
「だって勇人にされてると思ったら興奮してっ、腰が勝手に動いちゃうんだ」
「んぅ、も…っ…ちゅ、っちゅ…ひろちゃんっ…すきっ」

よほど痕を残せるのが嬉しいのか、勇人は興奮してべったり甘えた。
いつまでも二人でいちゃいちゃし続ける。

「ひろちゃんの体っ…中学に入ってきゅうにたくましくなったね…」
「ははっ、まぁな。一応鍛えてるし」
「んっ…ぼくも、ひろちゃんみたいになれる?」
「さぁ。あ、でも水泳部には入るなよ」

胸に頬擦りする勇人の後頭部を撫でながら牽制した。
それに「なんで」と首を傾げる。
可愛くてちゅうすると微笑んだ。
どこのバカップルだというのか。

「これ以上勇人の体を他の男に見せたいわけないじゃん」
「あ、んぅ」
「何より俺が練習できなくなる。勇人の体が気になって勃起が治まらなくなる」
「そんな…っ」

勇人は顔を真っ赤にした。
もうひとつ体に痕をつけると照れくさそうにする。
いつの間にか、鍛えられた体はキスマークだらけになっていた。
俺の見えないところにもたくさんつけられたのだろう。
嬉しくて強く抱き締めると、鋭く奥を突いた。

「ひあぁ、あんっ…んんぅ…ふっ」
「ホントだよっ。今よりずっと勇人に抜いてもらわなきゃ競泳パンツからはみ出ちゃう。さすがにみんなの前で勃起ちんこ見られるのは恥ずかしいかな」
「んくっ僕もやだぁっ…ひろちゃんの勃起ちんこっ…他の人に見て欲しくないっ…ぼくのだも、んっ…」

喘ぎながら首を振った。
ヤキモチに胸が高鳴って、おかえしに俺も首筋にキスをした。
当然痕は残していない。
昼に止められたばかりだからだ。
しかし勇人は抱きついてきた。

「くぅんっ、ひろちゃ…ぼくにも、してっ…」

喉仏にキスをしながら擦り寄ってくる。
俺の体がうらやましくなったのだろう。
あれだけ駄目だといっておきながら卑猥な首筋を晒した。

「はぁ、いいのか?そんなことを言われたら俺だって我慢できないよ。勇人の体に痕をつけちゃう」
「ふ…っんぅ、いいよっ…もういいっ。誰になにを言われたって構わないよっ。んぅ、あぁっ、ひろちゃんとおそろいになりたいっ」
「勇人…っ」

どうしてこの子は欲しい言葉をくれるのだろう。
俺は興奮してはちきれそうな胸を抑え、首筋に吸い付いた。
それだけじゃ我慢できなくて、力を込めてスク水の胸元を破る。

「あぁ、卑猥だ。ん、こんないやらしい姿っ…破れて乳首が丸見えだ」
「くひっ…ぃっ、そな…っちゅうちゅうしちゃ、あぁあっあっ」
「勇人が言ったんだよ。んぅ、ちゅ……っもう撤回できないからね」
「あぁあああっ、ひろちゃ…んっ、きもちいっ、ぼくにもえっちなキスマーク残してっ…!」

まるで陵辱の証のように、水着はビリビリと破れた。
現れた桃色の乳首を吸いまくる。
当然、美しい肌にも痕を残した。
俺と違い、運動をしない皮膚は白く、赤いキスマークがよく映える。
明日の体育で着替える時、さぞクラスメイトに冷やかされるだろう。
でも女のキスマークじゃない。
俺のだ。
たっぷり可愛がってやった乳首と共に晒されて好奇の的になる。
想像するだけで興奮が止まらなくてむしゃぶりついた。

「ああぁんぁ、あっはぁっ…まるで赤ちゃんみたいっ…ちゅうって…」
「ん、俺は勇人が孕んだ姿が見たいよ」
「もう…っへんたい、えっち…っ」

そうして荒淫に耽りながら、ひたすら互いの体に唇を這わす。
満足だった。
二人ともいやらしい体で絡み合う。
アヌスはぐちょぐちょで出し入れは自由だった。
勇人の腸内は水でタプタプになり、プールからあがろうとする。
だけど俺は逃がさなかった。
隅のはしごをのぼる彼を後ろから突きまくる。
勇人は精液まみれの尻を突き出して貪欲にちんこを受け入れた。
さきほど出した汁が突くたび漏れる。
穴を締めようと尻を叩けば、悦びの涙を流した。

「ひゃああ、ああっあっん…はげしっ…んぅ、とろけるぅっ……!」
「あぁっきもちい…っも、だめだっ…出さなきゃ気が狂う!」
「んああっ、ふっだして…っ、また奥でだしてっ……おなかいっぱいにしてっ」

もはや彼の声は枯れていた。
とうに陽は沈んでいる。
生ぬるい風が二人の間を吹き抜けた。
壊れた玩具のようにひたすら上下する体は奇妙にも思える。
だが格好など構わなかった。
二人は絶頂に達することしか考えていなかった。

「ぎゅってして、顔見てイって…っ!」
「はやと、はやとっ!」
「い、いいいっ――……っ!!」

きつく抱き合って果てる。
勇人の水着はボロボロで、もはや着ている意味はなかった。
襲い掛かる快楽に、激しく性器を擦り合わせて射精する。
俺も同時にアヌスの中で絶頂を迎えると、ありったけの精液を放った。
耳元で互いの荒れた吐息を感じあう。
こんなに気持ちの良いセックスは初めてだった。
全てを曝け出して二人は自由になる。
途方もなく幸せを感じた。

「はぁ…はぁ…はぁ……」

勇人は体力を使いきり、苦しそうに息をつく。
水面は穏やかだった。
綺麗な三日月が映り反転させている。
周囲を取り巻くポプラ並木は、時折風に揺られて心地よさそうだった。
校庭を挟んだ向こうに、僅かな明かりの灯った校舎が見える。

「ひろちゃん……」
「ん?」

彼は俺にもたれながら呟いた。
その声はか細くて守ってやりたくなる。

「あまり、遠くにいかないでね……」

目が合うと切なげに揺れていた。
どれほど寂しい思いをさせていたのか胸が詰まる。
(そうか、俺は肝心なことを言ってなかったんだ)
俺は首を振ると頭を撫でた。

「お前こそ、もう先輩呼びとか敬語やめろよ。二人っきりの時だけでいいからさ」
「ひろちゃ……でもっ……」
「分かってないなぁ」
「え?」

苦笑いすると腰を抱き寄せて密着する。
彼は戸惑うように見上げた。
思い出す。
目を瞑ると広がるのは青の世界だ。
どこまでも続く青の世界。
あの時の俺は勇人の喜んだ顔が見たかった。
もっとたくさん褒められたかった。
ただ水の中が好きなだけだったのに、彼の言葉で泳ぐ価値が変わった。
速く泳げば目を離すことなく見ていてくれる。
それだけで幼い独占欲は十分に満たされた。
(もっともっと速くならなくちゃ。勇人の視線を独り占めしたい)
それが原動力になった。
目標になった。
たゆまない努力を続けられたのは、勇人が傍にいてくれたからだ。

「俺が水泳で上を目指す理由はさ――」

知らない。
勇人の寂しさを知らなかったように、俺の喜びは知られていない。
他人の賞賛は要らない。
その代わり笑っていてほしかった。
覚えていないだろう言葉が、記憶の中で鮮やかに蘇る。

“「綺麗だね。まるで魚みたい」”

(いや、魚じゃなくて良かった)
その顔を見るたびに思った。
彼と同じ人間に生まれて良かったと思った。

「勇人に褒められたかったからだよ」

END