「い、一平君っ!…急にっ、どうしたの…?…っそんなに腰を振られたらおじさ、もう…!」
「うるさっ…いっ、ん……!」

ほしい。
ほしいほしいほしい。
小さな要求が次第に肥大化していく。
喉が渇いていた。
いや、お腹がすいているのだろうか。
急速に餓えていく精神を満たすように体が勝手に動いた。
おっさんの体の上で淫らに腰を振る。
くびれなんかあるわけないふとましいウエストを一心に揺らす。
分厚い腹の肉が生々しく波打つ。
(…精液が欲しい)
おっさんの精液が欲しい。
中に出された瞬間を思い出すだけで身震いする。
(…………なぜ…?)

「一平く…っ…話を……!」

気持ち良さにおっさんは掠れた声でおれを呼ぶ。
おれはおっさんに跨ったまま一心不乱に腰を動かしていて聞く耳を持たなかった。
だって溢れそうなんだ。
それはまるでグラスに並々注がれた水が今にも溢れんばかりの心境で、ぐらぐらと心が揺さぶられる。
同時に早く満たさないと、渇望感で胸元を掻きむしりたくなるほどの疼きが下腹部に溜まっていく。
溢れそうなのに、渇きが止まらない。
矛盾する感情が相克して頭の中が乱雑に撹拌されていくようだ。
だから必死に精液を搾り取るように動き続けた。
まるで婬魔だ。

「…一平君…っ…!」

そのときだ。
おっさんは起き上がると同時に強い力でおれを押し倒した。

その衝撃で尻の穴から性器が抜ける。
同時にぽっかりと穴が空いたような寂しさでいっぱいになる。
おれは瞬きも忘れておっさんを見上げた。
おっさんは心配そうにおれを見下ろし様子を伺う。

「急にどうしたの?様子が変だよ?」
「…わかんない」
「お客さんに何か言われたの?」
「ちがう」
「おじさんが嫌なことしちゃった?」
「ちがう」
「じゃあ何で泣いてるの?」
「え?」

おれはおっさんの指摘に初めて自分が泣いていることに気づいた。
それは彼にも分かったようで、戸惑うおれを慈しむように見下ろすおっさんは、優しげな眼差しで手を差し伸べると、目尻の涙をそっと拭った。

「わかんない」

いつの間に涙を流していたのだろう。
悲しいわけでも、嬉しいわけでもないのに、勝手に涙が頬を伝って布団へ落ちた。

「でもおっさんのせいだ」

おれの涙を拭った手を引き戻すと、手の甲や指先に繰り返しキスをする。
おれより大きな手に愛しさが込み上げてたまらなくなった。
涎でベトベトになるくらい愛撫をしながら潤んだ瞳でおっさんを見つめる。
彼もまたおれに負けないくらい熱っぽい目で一部始終を見ている。
ゴクリと唾を飲み込んだ音が聞こえた。

おれはおっさんの陰茎を掴むと己の穴に誘導する。
こんな大きなモノをよく相手に出来るなと我ながら感心しつつ、入り口に押し付けた。

「んぅ!」
「ぐ!」

もはやペニスの形を覚えた穴は、押し付けるだけで抵抗もなく挿入を許してしまう。
粘っこい白濁液でまみれたアナルは、引っかかることなくずるずるに入る。
だが余裕なのは途中までだ。
おっさんのデカい性器は中々根元まで挿らない。
電車ではカーブの遠心力と満員の乗客による圧力によって無理矢理開かれたのだ。
こうしてホテルで向かい合って簡単に入るわけがない。

「んぅっ…はっ…」

だが、思い出すだけで下っ腹が震える。
衝撃と圧迫感と微かな痛み。
それを凌駕する快楽は、強すぎて気持ちが良いと脳が受け取れきれず、刺すような刺激に七転八倒したくなる。
さまざまな相手とセックスをしてきたが、S字結腸まで挿入されたことがなかった。
いわばそこだけ処女なのだ。
散々使いふるされた穴のくせに、そこだけ刺激に慣れておらず、性器の味も知らない。
大事に閉じられていた穴。
もしまたそこへ侵入を許してしまったらどうなるのだろう?
あの時は限られたスペースでセックスしていたが、今は誰も見ていないし、自在に動くことが出来る。
そんな中でまた奥まで挿入を許してしまったら。
(……中に精液を流し込まれてしまったら)

「んぅぅっ…!」
「くっ…」

想像しただけでたまらなくなってアナルをぎゅうううっと締め付けてしまった。
突然のことでおっさんも気持ち良さに歯を食いしばり呻き声をあげる。

「おれのココ…欲しくて飢えてる…」

掴んでいたおっさんの手を己の下っ腹に誘導する。
丸い腹が呼吸に合わせて上下していた。

「さっき電話で聞いていたでしょ?おれね、どんなにお金もらってセックスしても中出しは許さなかったんだ。…だって他人の精液が体の中に入るってキモいじゃん」
「…だからナマも?」
「そーそー。あ、もちろんゴム越しじゃなきゃ気持ち悪いってのもあるけどね、一番は中出しされないための予防。だって、射精する時外に出すから~なんて絶対に守んないからね、あいつら」

おっさんはおれの話を目を逸らさず聞いてくれた。
真剣でちょっと泣きそうで可愛い感じのやつ。
もうやばいよねー。
普通ならおっさんの真面目顔なんてキモーって思うのに、今はどの表情も仕草も胸をちんこもケツ穴すらきゅーんってすんの。

「一平君…?」

おれの体は正直だからきゅんってしたら、体もビクビクってして、ちんこもガマン汁垂れちゃった。
おっさんがそっと腹を撫でるからなおさらやばい。

「ん、だから欲しくなるんだってば!」

おれは思わず声を荒らげた。

「ずっと、ずーーっと嫌悪してたはずの精液が、おっさんのせいで欲しくてたまんなくなっちゃってんの!」
「…えっ……」
「お腹の奥がきゅうきゅうしてんの!分かる?…ここをね、アンタの精液でいっぱいにして欲しくてっ、なんか…っ、喉が渇くみたいに…餓えて…っ、体が止まらなくなっちゃったんだよ…!」

おれはまた泣きそうになっていると、言葉を奪うみたいに強引に口付けられた。

「んっ、…んぅっ…ちゅっ…!」

同時におれの腹を撫でる手つきが変わる。
先程まで子どもあやすかのように柔らかい手つきだったのが、ねっとりと性的な触りかたになる。
時折ぐっと肉を掴まれるのだが、その乱暴さにもエロさがあり頭がクラクラした。

「ここの奥まで挿れていいの?」

おっさんは先っぽでわざとらしくツンツンする。
きつく閉じられた扉を開けるための魔法をかけているみたいだ。

「ぅん……っ、まだおじさんしか挿ってないところだから……んぅっ、おねが…優しくして…ね?はぁっ……ぅ、全然ちんこに慣れてないの…」

恥ずかしそうに呟くと、それだけでおっさんはすべてを理解したみたいだ。
胸を震わせておれの言葉を噛み締めるように聞いている。
同時に覚悟を決めたような精悍な顔つきでおっさんはおれを仰向けのまま寝かせると、挿入したままゆっくりと覆いかぶさってきた。
おれが暴れても動けないように大きな体で包み込む。
固く閉じられた奥へ。

「ひっぅ…」

ゆっくりとおっさんの肉棒が進む。
電車の時のようにいきなりではない。
まるでトンネル工事をするように、あらゆる場所に気を使いながら静かに奥を目指そうとする。

「やぁっ、んぅ…変な感じ…っ、する…!」

初めてS字結腸まで挿入されたときは、同意なく一気に根元まで挿れられた。
感触なんか味わう暇もなくおれの思考は白く染まり何がなんだか分からないまま中出しされてしまったのだ。
暴力的な快楽は実感を彼方へ飛ばし、気がふれるような快感だけを一方的、断続的に与え続ける。
まるで麻薬だ。

「ん、怖がらないで?…大丈夫、絶対に気持ち良くする」
「くぅんっ……」

なにが絶対に気持ち良くするだ、ばか。
さっきまで童貞だったくせに、なんでそんなに余裕なんだよ、と心の中で悪態をついた。
だが、彼の声の上擦りや体の震えに気付くと、とたんにへの字にしていた口元が緩んでしまう。
おっさんは自己催眠のように自分自身に言い聞かせているのだ。
相手はさんざん春を売ってきた少年なのだ。
長らく童貞だった自分に見合うテクニックなんかないことは百も承知である。
それでも恋しくてたまらないから抱きたい、気持ち良くさせたい。
やっていることは少年相手にゲスの極みであるが、その奥にある恋情はまばゆいほどに美しい輝きを放っている。
言葉にしなくても肌を通じて伝わってくる想いにおれの頬は熱を帯びた。

「一平君の一番奥までおじさんを挿れて」

耳元で小さく呟かれると同時に、ぐっと腰を掴まれて突き上げられた。
その途端、おれの頭の中で火花を散らしたような感覚がして無意識にのけ反った。
ひときわ強く押し込まれて、古いベッドはいびつに軋む。

「あああっ――!…っぅ……ひぃっ!」

まるでいきなり後頭部を殴られたかのような衝撃に、悲鳴のような嬌声が響いた。
S字結腸まで再びちんこが挿ってしまったのだ。
本来ならどうあがいても挿入するような場所ではないところに挿れられてしまった。
それも一度目のように勢いで無理やり挿れられたのではない。
散々穴を穿り回され、執拗に舐められ、玩具によって柔らかく広げられた上での挿入だった。
すでにおれの頭の中にはちんこのことしかなくて、ようやく奥まで来た満足感に蕩けきっただらしない顔を見せてしまった。

「あ、ぁあ、っ…やぁっ、見ないでっ……!」

へにゃへにゃなおれのちんこからチョロチョロとオシッコが零れ落ちた。
快楽に支配された体は、もはや虚脱状態で、尿を止めることすら出来ず己の顔を隠す。
だがおっさんはドン引きするどころかじっくりと網膜に焼き付けるよう見つめていた。
挿入直後でなければ今すぐ性器を抜いて、おれの股間にかぶりついていただろう。
それくらいギラギラした眼差しでお漏らしをしたおれのちんこを見ていた。

「にゃ…んか…もう…へろへろ…っ…」

全身が敏感になっておっさんの汗がおれの肌に落ちるだけで快感が突き上げてくる。
いちいちそのたびに身をよじり、あんあん喘いでいる自分が気持ち悪かった。
演技でなら何度もしたことがある。
だが、演技ならもっと品のある仕草が出来たはずだ。
こんな下劣極まりないほどの姿を晒していることに消えたくなる。
――が、取り繕う余裕もなかった。

「あひ…っ…も…もうグズグズ…っ…ぜんぶきもちよくて…頭がばかになっちゃう…」
「い、い、一平君っ…一回引き抜くから、もう一度奥をトントンしていい?」
「や、優しく…らよ………?」
「うんっ…ほら…トーントンっ…」
「ひぁ…あっ…ぉおっ…」

おっさんはS字結腸からゆっくり抜くと、S字の入り口の一番せまいところを立派な亀頭で突いた。
そのたびにおれは快楽でのぼせ上がった顔で淫らに鳴く。

「一平君のアナがおじさんの形にどんとんなっていくね。ほら、ちゃんと締めていないと…また奥に入っちゃっ…、ん…男の子の子宮に入っちゃ…っ……ああぁっ…挿入っちゃったあ…」

おっさんはおれのS字結腸まで挿入すると恍惚な笑みを浮かべた。
まるで禁忌を犯した罪人のような甘美な視線を向ける。

「くひぃっ、っ…挿入れるつもり…だったくせにっ……」

責めるようにおれが呟くと、たまらないといった表情で顔中ぺちゃくちゃ舐められた。
その間も彼のちんこはねっとり動き続ける。
まるでおれの腸内を調べ回るようにコスコスと擦る。

「ん、ずっとココに挿入れたかったんだよ?朝も夜もずっと一平君の奥の奥に入ることを夢見てきたんだ。こんなキツくて熱くてムチムチしていてっ…エッチすぎるなんてっ…挿入れないほうがバカだよ…っ…」
「あぁっ…乱暴には…っ……」
「しないよ?絶対にしない。だってこれから毎日ここを使わせてもらうんだよ?…ゆっくりトロトロになるまでおじさんが育ててあげる。…心配しないで、気持ち良くなろう?」

優しい口調とは裏腹にぐいぐいとちんこがおれの穴を拡張していく。

「ま…毎日なんて…っ…あぁっ、んぅ…」
「毎日だよ?明日も明後日も明明後日もおじさんのちんこはここにいる。一平君とひとつに繋がってる。本当は24時間ここにいたいけど仕事があるから我慢する。良い子でしょ?」

狂気染みた話なのにおっさんがうっとり呟くからおれもつられてポーっとしちゃった。
毎日このちんこでおっさんに可愛がってもらえる。
いつも受け身だったおっさんにケモノみたいにガツガツ犯してもらえる。
もはやおれのアナルは便器みたいに都合よく好き勝手使われてしまう。
想像しただけでたまらなくて、おっさんの頭を良い子良い子してあけた。
おっさんは嬉しそうに身をよじらせ、おれの首筋に顔を埋めると擦り着いてきた。
次第にお腹の奥がジンジンして正常な思考が働かなくなる。
内臓に響くような圧迫感を、ただ苦しいと感じた電車での挿入よりずっと甘く切ない。
おっさんの匂いか鼻腔を擽る。

「ひっ…ぅ…だいしゅきホールドって…やばい…」

おれの体を押し潰すかのように覆い被され、身動きが取れない中、彼の体に手足を巻き付けようとする。
だが手足共に短いせいで回りきらず、ゆえに必死にしがみついている感が出ていた。

「したことないの…?」
「…ん、自分から触れる気にはあんまならない。おっさんの汗とかベタベタして気持ち悪いし」
「じゃあ俺は?」
「……っ――」

不意打ちの問いに思わず言葉を失った。
全身がかっと火照って止まらなくなる。
口に出さなくても体は正直で、尻の穴をぎゅうぎゅうに締め付けてしまった。
その刺激に腸内のちんこが悦びに脈打つ。

「ぉお…っ、一平君の…穴っ……っただでさえ気持ち良くて、気を引き締めてないと出ちゃうのにっ」
「……っふぁ……っ、びくびくってちんこっ……!」
「あぁっ、うっ――!」
「ひぅっ、出すのっ?……っまた、おれのお腹の中にいっぱいっ……精子出してくれるのっ!」
「ごめっ……も、出ちゃっぁあ――!」

おっさんは苦しいくらい俺を抱きしめると、射精をしながらぐっぐっと腰を押し付けるように抽挿した。
無意識ながらもおれの体の奥深くに種付けようとする仕草は、雄の本能というべきか。
だが、おれはそんなこと冷静に考えていられないくらい中出しの感覚に酔っていた。
ビクンビクンと脈打つ陰茎や、吐き出される精液の熱さに眩暈がする。
腸内の感覚なんて普通子細には分からないはずなのに、今は腸壁にぶっかけられた精子が広がっていく様子が手に取るように伝わってきた。
(お腹の中が満たされていく……)

「ふ、ぐぅ……っ」

視界の先にキラキラ星が舞う。
強烈な快感に暴れだしたくなったが、がっちりホールドされて身動きが取れない。
そうしている間もどんどん体の深いところで射精は続き、あの粘っこい白濁液で汚されていく。
天井の鏡を見上げれば、彼の大きな背中ですっぽり覆われ、おれの体はまったく見えない状態だった。
それは力によって蹂躙されたことを物語っている。
半強制的に中出しされることの意味を、奥歯を噛み締めながら味わっていた。
もしこれが好きでもない男であれば屈辱の極みであり、舌を噛み切って死んでやりたいような気になる。
自分ですら触れることのできない体の奥を穢され、征服されてしまうということは己の自尊心を打ち砕く行為そのものであった。
だが、しかし――。

 

 

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