ある痴漢少年の独白

十日目、僕のお尻に指が入ってきました。
探るように第一関節第二関節まで入れてきて、最後には図々しくも根本まで押し込んできたんです。
気持ち悪い。
犯人は分かっているんです。
いつも僕の後ろに立つ中年男性で、僕の乗る駅の次の駅で乗ってくるんです。
都会の通勤電車は戦場です。
僕は背も低いし子どもだからぎゅうぎゅうに潰されてしまうんです。
それでも、さすがに何年も通学していると対処法が分かってきました。
時間によっての混み具合や車内のベストな立ち位置も把握できるようになりました。
僕は一番後ろの車両が好きなんです。
入り口ドアの反対側、端っこ運転席の扉の前がお気に入りでした。
なぜなら快速で当分こっちのドアは開かないし、角にちょっとしたスペースが出来るから呼吸が苦しくならないんです。

「……ふ、んぅ……」

そうして壁と向き合い人に背を向ける形で立っていたんですけど、十日前の月曜日、まさかの痴漢に遭遇したんです。
最初は全然気づきませんでした。
僕は男だし、クラスの女子も痴漢された話は訊いたことがなかったんです。
だからお尻に手が当たっているのも偶然で気にも留めなかったんです。
だけど翌日、今度ははっきりとお尻を揉まれたんです。
大きな手のひらでぐにっと掴まれました。
僕はびっくりして振り返ったんですけど、そこにはごく普通のサラリーマンがいました。
年齢は僕のお父さんより年上で、ビシッとしたスーツ姿なのにニヤニヤと薄笑いしていたのが気持ち悪かったです。
(そんなわけない)
確かにお尻は揉まれたんですけど、僕はまだ痴漢に遭った事実を受け止められなくて、ありえないとかぶりを振っていたんです。
だってそうでしょう?
僕なんかのお尻より隣のセーラー服が可愛い女の子のほうがずっと魅力的です。

「……ん……」

しかし僕が降りるまでずっと触られ続けました。
ようやく降りる駅までやってきて、僕は逃げるように電車を降りました。
でも、本当にあのおじさんが触っていたのか半信半疑で、確かめられなかったことを後悔しました。
翌日も同じ時刻の同じ車両、同じ場所に乗りました。
今日こそは確かめようと思ったんです。
そしたら次の駅でまたお尻を揉まれたんです。
さすがに怖くなって恐る恐る振り返ると、昨日のおじさんがぴったりと僕の後ろにくっついて、やっぱり口許に微笑を浮かべて僕を見ていました。
目が合った瞬間強く揉まれたので間違いありません。
僕は電車で四十分ほどの学校に通っています。
幸い乗り換えはないし、駅からも近いので通学が苦になったことはありません。
だけど三十分以上お尻を触られながら耐えるのはちょっと苦痛です。
その日は痴漢されてから三日目だったのですが、前日より揉み方がエッチになっていたんです。
それまでは力を強めてグニグニするだけだったんですけど、緩急をつけたり、股の部分を指でなぞったりするんです。
次の日は逆に力いっぱい揉みしだかれました。
まさぐるようにめちゃくちゃに揉むんです。
お尻に手のあとが付いちゃいそうなくらい強引に掴まれた時は声が出そうになりました。
気持ち悪いし怖いのに、僕はその翌日も同じ電車に乗ってしまいました。
同じおじさんにお尻を触られます。
日に日にいやらしい触り方になって困惑しました。
僕なんかのお尻を触って何が楽しいのか理解できなかったからです。
幸いその日は金曜で、明日から二日間は電車に乗らなくていいから好きに触らせました。
なげやりな気分でした。
その代わり翌週月曜日は憂鬱になりました。
痴漢されてからちょうど一週間です。
おじさんは尻を揉みながら体を押し付けてくるようになりました。
電車の揺れに乗じて僕に擦りついてくるんです。
股間の硬いものが僕の背中に押し付けられました。
肩にかけるカバンでお尻を隠そうとしたのに、その下にするりと手を忍び込ませて、僕の柔らかなお尻を揉みまくるんです。
すると、その次とそのまた次の日はお尻を揉みませんでした。
代わりにズボンの上から指の腹を使って僕のお尻の穴を探していたんです。
実はこのころから僕の体は変で、お尻を触られても何とも感じていなかったのに、急に感覚が敏感になっていったんです。
きっと意識しているからでしょう。
おじさんの手じゃなくて、全く知らない人のカバンが当たっても背中がゾワッとするようになったんです。
だからズボンの上からお尻の穴を探られた時は腰が震えました。
見つからないように必死で隠したんですけど、おじさんの指はしつこくて、あっさり探り当てられちゃいました。

「…ん、ぅっ………」

お尻のすぼみをグリグリされると肌が粟立つんです。
初めての感覚で言葉にならないんですが、体が熱くて呼吸が浅くなるんです。
そうして二日間延々とお尻のすぼみを弄られました。
ほじられるとパンツが食い込んで、中に入っちゃうんです。
しかも暑さで汗ばんでいるから気持ち悪い。
(…やだぁっ……)
制服がピッチリした短ズボンだから、おじさんの指の感触が生々しいくらい伝わって僕を掻き乱しました。
何度も逃げようと腰を振ったんですが、執拗に責められてお尻の穴を見つけられちゃうんです。
僕は手すりに掴まりながら耐えました。
いっぱい触られて声を押し殺しながら下車するまで我慢したんです。
だって我慢しないと変な声が出ちゃうと思いました。
おちんちんも硬くなっちゃうし散々です。
だけどそれだけはおじさんに気付かれないよう隠し通しました。
だって痴漢されて勃起したことを知られたら、周りからどんな目で見られるか分かりません。
絶対に秘密です。
知られないよう前屈みになっていたら益々積極的にお尻の穴を突っつかれたけど、触られたかったわけじゃありません。
だから明日こそは違う電車に乗ろうと決めたんです。

そして、とうとう十日目になりました。
僕は隣の車両に乗ろうとしたんですけど、乗るのがギリギリの時間になっちゃって、いつもの車両に飛び乗っちゃったんです。
地元の駅の改札は最後尾の手前にあるから仕方がありません。
乗ったあとに次の電車に乗れば良かったと後悔しました。
いつもの電車に乗って痴漢に会うより、一本遅れて遅刻したほうがまだマシです。
僕は馬鹿なんです。
乗ったあとにそのことに気づいたのですから。
――けど、立ち位置は違いました。
いつもの端ではなく真ん中で身動きとれなくなっていました。
電車が揺れるたびに不安定な足元をもたつかせます。
そうして次の駅でおじさんは乗ってきました。
僕は人波に流されて開かないドアの真ん前に立っていました。
ドアを手で支えてどうにか立っていると、おじさんはやっぱり僕の真後ろに立ちました。
それだけでブルリと震えました。
まだ何もされていないのに、手の感触が頭からこびりついて離れないのです。
僕はなるべく距離を開けようとドアに引っ付きました。
だけど無駄でした。
ドアが閉まって電車が動き出すころにはおじさんの手が尻を撫でていたからです。

「…ひ……ぅ…」

今日もズボンの上からお尻の穴をいじられると思いましたが、今回は違いました。
おじさんの手は躊躇いなく僕のズボンの中へ入ってきたんです。
キツいズボンで好きに動かせない代わりに彼は真っ先にお尻の穴を狙いにきました。
すぼみのシワを撫でたかと思うとにゅるんと入ってきたんです。

「…はぁ……っひ…」

僕は驚きで飛び上がらんばかりでした。
隣に立っていた女性が怪訝な顔で僕を見つめると、不機嫌そうに外へ視線を移します。
朝の通勤電車はみんなイライラしていて怖いのです。
だから僕は迷惑にならないよう益々気を付けなければなりませんでした。
おじさんの指はなぜかヌルヌルしていて、ぐぐっと根本まで入ります。
腸内は違和感と衝撃でぎゅうぎゅうに締まっていました。
だけどおじさんは手を動かしませんでした。
根本まで入れたまま降りる駅まで行きます。
僕の下車駅を知っているせいか手前でするっと抜いてくれました。
指は動かなかったけど、電車が揺れるたびに中が擦れて、ふいに下腹部がきゅんとしました。
今日は立っている場所がいつもと違って掴める手すりがなかったからなおさらかもしれません。
おじさんに寄っ掛かることもありましたが、ちゃんと支えてくれて、こればかりは感謝です。
でも困ったことに下車してお尻から指が抜けたのに、一日中腸内に違和感が残りました。
もう何も入ってないのに、いつまでも何かが挟まっているような感触がしたのです。
その日の夜、風呂上がりに部屋で裸になり鏡を見ましたが特に変化はありませんでした。
気になって触ろうとしたけど怖くて止めました。

翌日、どうしても気になっていつもの電車に乗りました。
降りる時はいつもこれっきりにしよう、明日は違う電車に乗ろうと心に決めるのに、なぜか当日になると決意は水のように流されてしまいます。
おじさんはその日も僕のお尻の穴に指を入れてじっとしていました。
根本まで入れて腸内の感触を楽しんでいるようにも思いました。
急ブレーキが一番やっかいでした。
踏ん張ろうと下半身に力を入れればおじさんの指を深く咥えこんでしまいます。
そうすると指の感触が手に取るように伝わってきます。
ゴツゴツと太くて長い中指が付け根まで埋まってしまいます。
指が僕の体内に入っているかと思うと不思議な気分になりました。
お尻はうんちを出す場所としか認識していなかったからです。

それは二週間も続きました。
始めは違和感しかなかったのに、今では入っていないほうが変な感じがするので大変です。
(はぁっ……今日も入ってきたぁ)
ずっと入れられ続けて気づいたことがあります。
それはおちんちんの裏側に指が擦れると気持ちいいということです。
たまたま電車が揺れた時に、擦れた場所が凄くて、体に電気が走ったみたいにビリビリと来ました。
それ以来車内の揺れを利用して腰を擦り付けてみますが、中々あの時のような刺激は訪れません。
僕は我慢できなくて揺れてるフリをしながら腰を振ってみました。
もう一度あの刺激を味わいたかったんです。

「……っ…!」

だけどそれは全部バレバレでした。
窓ガラス越しにおじさんはその様子を見ていたんです。
僕は恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にして身を縮めました。
自分が何をやっていたのか我に返ったんです。
怒られると思いました。
それか冷ややかな侮蔑でもされるかと思ったんです。
だけどおじさんは、身を小さくした僕の耳元で、

「可愛いよ」

と囁きました。
初めて声を聞きました。
誰にも聞こえないような小さな声ですが、妙に粘っこくて、お尻をきゅんとさせてしまいました。

それからはおじさんも少しずつ大胆になって、僕の尻に入れた指を動かしてくれるようになりました。

「ん、んぅ……っ……」

ぬめった指でほじるんです。
内蔵を掻き出されているような気分でした。
グイグイ奥まで来ると、僕は腰を引いてドアにちんちんを擦り付けたりしました。
(んぅ、それ以上入らないってば)
それでもぴったりくっついて、奥までいじるんです。
指を回して僕の感度を確認して弱いところを探っているんです。
ズボンの上からお尻の穴を探されていた時のほうがまだ良かったです。
だって直接肛門をいじられて穴を広げられているんですよ。

「…ふぅ……っん…」

(やぁ、っ……やだっ……)
自ら触ったことさえない粘膜をくちゅくちゅとほじくり回されて、頭は真っ白です。
僕には刺激が強すぎて、首を振ってだめだと拒否しますが、窓ガラスに映るおじさんは卑下た笑みを浮かべてさらに激しくいじります。
僕が泣きそうな顔をしているのも全部見ているんです。
甘い吐息を漏らすのも嫌だと懇願するのも全部、全部その目に焼き付けて舌舐めずりしていました。
挑発的な眼差しで、チロチロ動く舌が何とも卑猥でした。
弄ばれているようで腹立ち、負けじと僕も口を微かに開けて舌を出しました。
ペロリと唇を舐めます。
そうするとおじさんの指は深く突いてグルリとねじ込んできました。
さらにカーブへ差し掛かり、体がもたれてきたのをいいことに、彼は僕の耳の中を舐め回してきました。
窓ガラスに映るねっとりと舌が耳を愛撫しているところを見て、無性にちんちんが熱くなります。
目が合ったまま視線を逸らせませんでした。
どうやら僕は耳も弱いようです。
カーブがすぎてもとの体勢に戻った時には僕の左耳は涎まみれになっていました。
ヌメヌメとして生温かな舌に酔い口許から涎が垂れていました。
もっといろいろなところを舐められたら気持ち良いだろうと想像するだけで身震いしました。
だから僕はその翌日棒付きキャンディを持って電車に乗ったんです。
学校におやつを持っていくのは禁止されているし、お母さんにも内緒で持ち出しました。
おじさんは相変わらず僕のお尻に夢中です。
今日もいっぱいいじってくれます。
僕はキャンディを口に入れると見せつけるように舌で舐めました。
丸いアメを舌で転がしてベロベロと舐めたんです。
すると首筋や耳元に当たっていた荒い鼻息がいっそう酷くなりました。
興奮しているのか僕の匂いを嗅いでいるのか定かではありませんが、ふんふんうるさいんです。
してやったりという気分になりました。
僕は男の子です。
されるがままの女子とは違うのです。
だけどおじさんを煽りすぎたようです。

「おじさんにも舐めさせてよ」

地に響く声でした。
ほんのお遊びのつもりだったのに、おじさんの目は本気で怖いくらいでした。
僕は辺りを見回したあと口に含んでいたキャンディを取り出して、後方にいるおじさんの口へ入れました。
彼はべちゃくちゃと下品な音を立てて嬉しそうにキャンディを舐めました。
僕の唾液をすすっているようにも見えました。
中年のサラリーマンが棒付きキャンディを咥えているのはシュールな光景です。
だけど僕は淫らな気持ちでいっぱいでした。
あのキャンディが僕の舌だったら、指だったら、ちんちんだったら、お尻の穴だったらと想像するだけでたまりません。
今日も触られてないのにちんちんが硬くなりました。
このところ毎日です。

「……舐めろ……」

おじさんが耳元で呟きました。
初めての命令でした。

「はぁ、ん……」

(おじさんの唾液でべちょべちょだよぅ)
戻ってきたキャンディはさっきより溶けて形が崩れていました。
おじさんが舐め回していたキャンディを今度は僕が咥えます。
口を開けました。
心臓はドキドキうるさくて止まりそうです。
おじさんは見ています。
自分が散々舐め尽くしたキャンディを僕がしゃぶるのを待っているんです。
やっぱり僕はおじさんには勝てません。
羞恥心で身を焦がしながら舐めました。
味は分かりません。
舐めていたらまたおじさんがキャンディを欲して、僕に見せつけるように舐め回したんです。
くねくねと動く舌が卑猥でした。
僕はちんちんを勃起させながらそれを見つめ、渡されたらまたしゃぶり、しゃぶったのを再び渡して舐めさせました。
キャンディが溶けてなくなるまでこの行為は続きました。

 

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